第5話 アイスより甘いウチらの秘密

(教室の扉を閉める音。カーテンが揺れる夕方の風)


「……ねぇ、ほんとに大丈夫なん? 足。

 さっきリレーで派手に転んどったやん。

 ちょっと歩いてみ? ……ん、大丈夫そうやね。

 でも無理はせんとよ。エグいことなったら笑えんけん。」


(廊下を歩く二人の足音。校門を出る音)


「ふぅ〜、体育祭終了〜! はぁ〜マジだるかった〜。

 でも、なんかまだ帰りたくないんよね。……ウチだけ?

 ──よし、決めた! コンビニ寄ろ。冷たいもん食べたいっちゃん!」



(コンビニのドアのチャイム。アイスコーナーを開ける音)


「ん〜どれにしよっかな〜……はい! ウチはチョコモナカ!

 あんたは? ……ソーダバー? シンプルに正解。

 ──えっ、会計一緒にしてくれると!? 神対応すぎ!

 ガチ惚れるレベルwww ……いや、ウソウソ。

 でも、ありがと♡」



(公園のベンチに座る音。ビニール袋を置く)


「んふふ〜、体育祭帰りに公園でアイスってエモくない?

 はむっ……ん〜、しあわせ〜。

 ……ねぇ、そのソーダバーも一口ちょうだい。」


(近づく衣擦れ。がぶっと食べる音)


「んっ! 冷たっ! やば、エグ! 当たりやんこれ!

 ──あ、今の間接キスやん!? うわ、あんたの顔真っ赤!

 爆笑www かわいすぎ!

 ……ま、わざとやけん♡」



(アイスの袋をガサガサ。差し出す音)


「じゃあ、ウチのも食べてみ? ほら、あーん♡

 ……なに照れとると? はいはい、口開けて!」


(主人公が食べる音。少し間。笑い声)


「どう? うまいやろ? 完全にウチが食べさせたやん。

 これもうカップルっぽくない? ……冗談冗談。

 ……半分は本気♡」



(アイスをかじる音。少し間)


「……やば。チョコ溶けて口んとこついた。

 え? どこ? 分からんって! 自分じゃ無理〜。

 ……ねぇ、拭いてくれん? はよ!」


(距離が近づく。衣擦れ。小声に)


「……近っ。やば、心臓音聞こえそう。

 ふふっ……あんたもドキドキしとる?

 ウチも一緒。──これも、内緒♡。」



(遠くで子どもたちの遊ぶ声。風が通る)


「……ねぇ。体育祭、マジだるいって思っとったけどさ。

 あんたがおったけん、最後まで頑張れたし……今も楽しい。

 リレーで転んだのも、膝枕も、アイスも──今日全部、特別やったんよ。」


(耳元に囁く声)


「……まだ帰りたくない。もっと一緒におりたい。

 ──これも内緒。あんたにだけ言うっちゃん。」


(夜の風。二人の笑い声が小さくなり、フェードアウト)

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