俺がそう思っていると、おばあさんが俺を促すように言う。


「ほら、学校に戻らないとマズイんじゃないのかい?


俺はおばあさんの言葉を聞くと、ハッとして「失礼しました!」と勢い良くその場を後にした。


それにしても…俺、あの店に入ったの初めてだけど、教師をやってるなんて言ったっけ?

見た目でわかった…とかか?



…………



しかし、その後。

急いで学校に戻ると、俺は職員室で教頭先生に雷を落とされた。


「何をやってたんですか安達あだち先生!もうとっくに16時過ぎですよ!?電話をかけても出ないしラインも既読が付かないし…一体どこで何をやっていたんですか!!」

「……すみません」


いや、そうは言っても俺は腕時計を修理に出していただけだし、体感としては15分ほどしか経っていない。

だいたい、あの雑貨屋のばあさんが三時間も時間を早めたりするから……。

なんて心の中で文句を並べていると、再び物凄い勢いで教頭先生が言った。


「聞いてるんですか安達先生!!」

「は、はい!」

「まったく、普段真面目にやってると思ってたらすぐこれですから。信用できませんね、近頃の若いモンは!」


そう言うと、「午後から授業をサボった理由を、明日生徒達にきちんと説明して下さいね!」と続けて厳しい顔をする。

一方、そんな教頭先生を前にして、俺はただただ謝ることしかできない。


くそっ…本当はこんな展開になるはずじゃなかったのに。

俺はそう思うと、このあと仕事が終わり次第再びあの雑貨屋に出向くことにした。



…………



「っ、オイばあさん!」


その後本当に再び雑貨屋に出向いた俺は、空が暗くなってから雑貨屋に向かった。

三時間も時間が急激に早まったせいで、ついさっきまで三時間も残業をしていたのである。

そのせいで怒りが心頭していた俺は、店のドアを開けるなり声を荒げた。

すると、店の奥にいたおばあさんが俺の態度を目の当たりにして、「どうしたんだい」と驚いたような顔をする。

どうしたんだい、じゃないだろ!


「アンタが昼間あの変な時計で三時間も時間を早めたせいでな、こっちは今日えらい目にあったんだよ。どうしてくれるんだ!」


俺が半ば興奮気味にそう言うと、それを聞いたおばあさんが目を丸めたまま言う。


「それはそれは…大変だったねぇ」


そんなおばあさんの呑気な態度に俺が更に怒りを覚えたその直後、俺が言おうとしていた言葉を遮るように、おばあさんが落ち着いた口調で言った。


「だったら時間を戻せばいいじゃないか」

「!」






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