第2話 下卑たオトコの人待ち
今、カフェで花音を待っているオレは本当に下卑たオトコだ!
常識ある大人なら……たかだかワイシャツの汚れくらいでJKの誘いに乗る事無く、むしろ着拒にすべきだろう。
でも……カノジョどころか親しい友人すら居ないオレは……リア充の誘惑に勝てなかった。
「ごめん!待った?」
とやって来た花音は柔らかい色のワンピースで髪をハーフアップにしていた。
「待ってはいないけど……随分と粧し込んでるな」
「うわっ!雄司、言葉がオッサンだよ!」
「仕方ねえだろ!オッサンなんだから!」
「ダメダメ!今日は援助じゃなくデートなんだから!ちゃんとしてよ!」
「またそんな事を言う!!」
「ハイハイ!その先は『言わずもがな』なんでしょ?!分かりました! で、制服じゃない私はどう?」
「……普通に可愛いよ」
「そうかあ……ふつーかあ……ちょっとガッカリ」
「何でだよ!第一!!オレに褒められたって何にもなんねえだろ?!」
「そんなこと無いよ! 男の子から褒められるのがデートの醍醐味!!」
「さっき人の事、『オッサン』って言ってたじゃねえか?!」
「違うよ!『言葉がオッサン』って言ったんだよ! 今日、雄司は私をエスコートする立場なんだからマジメにやってよね! 大丈夫!私は本来は“お金のかからない子”なんだから……ディナーは牛丼でいいよ」
「夜まで一緒に居る気かよ?!」
「何、怖気づいてんの?! 仕方ないなあ~取り敢えず映画でも観る?」
ったく!人にエスコートを頼んだ舌の根も乾かないうちにさっさと席を立ちやがる!
オレは慌ててコーヒーを飲み干し、テーブルの上の伝票を掴んだ。
◇◇◇◇◇◇
牛丼屋と言う訳にも行かないので……何度か行った事のある洋食屋に花音を連れて行った。
映画館では何とか『間が持った』が差し向かいで席に着くとオレはアガッてしまって……気持ちを落ち着けようとビールだのワインだのを頼んでしまった。もちろん花音にはジュースを頼んだのだが……
映画の感想を一所懸命に話したので、花音もそれなりに聞いてくれた様だ。
ほっと一息ついたらトイレに行きたくなり……それもみっともなかったのだけど……席を外した。
用を足して手を洗い顔を上げると、鏡には明らかに酒に染められたオレの顔が映っていた。
マズい!!
元々酒が強く無いオレなのに……とにかくバシャバシャと顔を洗ってトイレを出て席に戻ると……花音の頬も赤く染まっていて……オレの前に置いてあったワイングラスが空になっていた。
「エヘヘヘヘ……飲んじゃった……」
それはまるで夢うつつの様な声で……オレの右手の上に重ねられた花音の左手は酒に熱せられていた。
慌てて引っ込めようとした右手の薬指を握られ、弄ばれただけではなく……他の指まで絡んで来たが……オレは花音の甘やかな温もりから逃げる事が出来なくなってしまっていた。
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