逃亡の果てに待つものは、救いか絶望か。
- ★★★ Excellent!!!
これは殺人を犯し、時効のわずか8時間前まで逃げ続けた女の物語です。語りは女の視点で、事件当日から現在に至るまでの25年間を振り返る形で進みます。
すぐに捕まり10年ほどで出所した方がよかったのか。それとも25年逃げ延びたことに意味があったのか。しかし結局、逃げ続けてもこれからも隠れて生きるしかない現実は変わらない――終わりのない自問自答に、女の心の有り様が生々しく描かれます。
女にも、殺した男に弄ばれたという事情はありました。しかし、女によって人生を狂わされた人間もいるのです。身勝手極まりない女の末路とは果たして。
冬の日本海の荒々しく陰鬱な情景と、女の閉ざされた心情が重なり合い、息苦しいほどの鬱屈へと引きずり込まれるかのようでした。