25年逃げ続けた女が見た海

――その女は、25年ものあいだ、
ずっと『過去』から逃げ続けてきた。

北陸の寂れた海辺の町。
潮風にさらされながら、
彼女はただ、海を見つめていた。

かつて、心の底から愛した男がいた。
すべてを差し出して、すべてを失った。
そして、ある日、境界を越えてしまった。

それからの人生は、名前を偽り、顔を変え、
逃げて、働いて、また逃げて。
誰にも心を明かさず、眠れぬ夜を重ねた。

けれど、時効までの残り8時間。
静かな宿に忍び寄る、ふたつの影。
波の音が、すべての終わりを告げようとしていた。

過去を背負って生きるということ。
愛と罰と、自由の意味を問う、切なくも美しい物語。

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