異世界に居ようが僕は生きる
塗りたくる飲む焼きそばフラペチーノ
第1話 「日常」の変異
「昨日のアレ見たー?」
「アレ?マジやばかったなw」
「今日放課後ゴ〇チャ行かな〜い?」
「ゴ〇チャ?もう古いってそれw」
昼休み終了2分前だと言うのに、教室はまだ
授業開始から4分後、突如として床に光る謎の紋章が出現し、体が光に包まれた。
「なんだこれ!」
「きゃー!」
「コレってもしかして……」
現れた紋章に驚愕する者、恐れ
教室にいた一同は自身を包む眩い光に目を塞ぎ、光が弱まり目を開いた頃にはすでに見慣れない空間に教室内に有った物ごとたどり着いていた。いや、出現と言ったほうが良いだろうか。なにせ彼らは移動した覚えなどないのだから。とにかく、どこか見慣れないロマネスク様式とゴシック様式を混ぜたような、そんな荘厳な広間のど真ん中にいた。周りには自分たちを囲むように修道士と修道女がおり、片膝をついて祈祷している。彼らの中には肩で息をするほどの者もちらほら居て、何か尋常でないことが行われていたように見える。辺りを見回して少しすると、ふと我を取り戻したのか、ついさっきまで授業を行っていた式先生が
「皆さん、大丈夫ですか?」
と教卓を押し倒さんばかりの勢いでクラスメート全員に呼びかけた。生徒は各々自身の身の安全なのを確認しつつ、たった今起こった怪奇現象について、そしてこれから何が起こるのかについて話し始めた。すると、修道士の中でもひときわ目立つガタイの男がこちらの方へ歩み寄ってきた。
「あ、あー、ゴホンゴホン。皆さん、私の話を聞いて下さい。私はグラウェ・エミネンス・ツァンラートといいます。突然このような場所に飛ばされて驚いていると思いますが、安心してください。わたしたちは貴方がたに危害を加えません。」
グラウェと名乗るその男は
「わ、わかりました。とりあえず今は信用しておきます。ですが、我々はなぜ、どのようにしてここに連れてこられたのですか?」
「それを話すのには少し昔話を話す必要がありますね。皆さん、少しばかり私の話に耳を傾けてください。」
少し時間が巻き戻り…
いきなり肩を揺すぶられ、僕は心地の良い眠りから引き起こされた。まだまだ寝ていたかったので、僕は不機嫌なまま犯人に問いかけた。
「ねえ、いきなりなに?」
僕の友人兼幼馴染の
「だから何?どうしたの?いよいよおかしくなった?」
「マジでヤバイ!!マジでヤバイって!!ほんとにほんとにヤバいって!」
「ねえ大丈夫?日本語で話そうよ?何がヤバいのか説明してくれないとわかんないよ。」
「いや、だから、なんか教室が光って、光が体にぽわ〜っとして、それでなんか気づいたらここに居た。」
「本当におかしくなったの?」
「ほんとなんだってば!」
優絆の途方もない
「ねえ、ほんとだったでしょ!いくらなんでも寝ぼけ過ぎだって!普段はそこまで疑わないでしょ。」
「いや〜、正直普段からおかしなことばっか言うからなぁ。」
此見よがしに自身の主張の正当性を誇示してくる優絆に冷水を浴びせ、現状の把握と今後の進展について考える。ひとまずいつも読んでる小説ごと転移したみたいだし、退屈しのぎは出来そうだな。その時、なにやら仰々しい格好をした男が現れた。どうやらグラウェというらしい。ていうか、そもそもなんであの人の言葉がわかるのだろうか。いかにもヨーロッパにいそうな顔をしてるのに。ていうかここって何処なんだろうか。美味しいものがあるといいんだけどな。おっと、どうやら何故僕らが此処にいるのか説明してくれるらしい。できれば短いとありがたいかな。
グラウェは話し始めた。
「まず、この世界には十六の国家があり、それらはそれぞれ人間、獣人、エルフ、ドワーフなど、様々な人種のものがあります。因みに、今皆様がいるこの国はドーラント連邦帝国といいます。それはさておき、遙か昔、この十六の国家はひとつの超大国として、この大陸の大部分を占めていました。しかしある日、大陸の放棄された部分にあるヒンノム渓谷から魔族という種族が現れました。出現した魔族は人種を問わず超大国に侵攻してきました。この大混乱の最中、古の超大国の国王は国土を守るため、12人の将軍と4人の戦士に王国の宝具をそれぞれ与え、国の各地に配置し、国を守りました。しかし、魔族は何らかの手段で王城まで侵入し、城に居た者ごと虐殺し、古の超大国は滅びました。残された選ばれし16人はそれぞれ配置された場所を一時的に支配し、魔族と戦闘を繰り広げ、遂にはヒンノム渓谷に追いやることに成功しました。その後、彼らは最後まで王に忠誠を誓いその功績を残したことを称えられ、任命された時に与えられた宝具から「
ここで式先生が話を遮り、
「それが私たちだと……?」
「はい、そうです。」
一同には動揺が走った。
「マジかよ...コレって現実...?」
「これから私たちどうなるの?」
「コレだ...、こういうのを求めてたんだよ...」
クラス全体が更に騒めいた。
ほーん、
「皆さん、静かに。」
喧騒を割いて式先生が一同を窘めた。そしてグラウェに向き直った。
「それで、私たちに戦えというのですか?正直私達はあなた方より戦う力がないと思うのですが。そもそも私達は戦ったことなど無いのです。どうして戦えと言うのですか?」
「戦う力に関しては大丈夫です。」
グラウェは答えた。
「異世界から召喚された者は、例外なく強力な
またまた騒めくクラス。
「俺は勇者かな?」
「ないない、お前はどうせクソザコ能力だろw」
「あ?手に入れた一見するとクソザコ能力が実は最強で、俺TUEEEE展開になったら覚えてろよ!」
「はっw、ないないw」
へー、能力があるのか。そう言われると更にゲームや漫画みたいだな。だとすると一同は呑気なもんだなぁ。能力がなんか強いやつだと戦うことになりそうだけど弱すぎても、ザ・エンドってねお疲れ様でした案件になるな。うーん、適度に弱いやつ来い!出来れば汎用性が高いやつ!
すると、グラウェは続けて言った。
「表層観念と深層観念、そのどちらにも共通することは、能力を決定する因子となるものが、能力を持つ人の人生観、欲望、意識、観念、考え方、倫理観など、人となりが反映される点です。言うなれば、人は能力を表し、能力は人を現す、ということです。では、まずは表層観念から説明します。これはあなたの普段の行動や考え方、つまり比較的大概的な自分が反映された能力です。この能力は大きな出来事が発生すると変質したり新しく別のものが出たりなど、相対的に見ると変化が激しいものです。もう一方、深層観念は、内なる自分の本能、自身の中核を担う観念が反
映されます。これは変わることがなく、増えることもありません。多くの場合、はじめのうちはどんな能力か自分にもわかりません。それは、この能力が自身の本当の姿だからであり、多くの人はそれを見つけることが出来ないからです。いろいろな経験を重ね、或る日突然悟るとわかります。この能力は強大ですが、その分危険性があるそうです。」
「あるそうです?」
クラスの誰かが呟いた。
「これまで記録が残っていないのでわかりません。どうやら大半はその力を使わずして役目を終えたそうなので。ですので、皆さんもこれは当てにしないようにお願いします。」
ふーん。役目を終えた、ね。クラスの誰もが気づいていないだろうけど、「役目を終えた」は別に魔族の討伐を終えたわけではないんだよな。そもそも危ないなら根絶やしにしそうなのにそれが出来ていないということは、過去の勇者は魔族を退けることは出来たのだろうが殲滅は出来ずにお亡くなりってこった。そう考えるとやはり程よい後衛の能力が欲しいものだ。
またまたクラスメイトが尋ねた。
「そういえば、僕達は元の世界に帰れるのでしょうか?」
グラウェは少し戸惑ったかのような、そしてなにか含みがあるような顔をして答えた。
「それも私達にはわかりません。」
クラス全体に少し重い雰囲気が漂った。
しかしまあ、そうだよね。もし帰れるって言ってたらすぐに帰りたいと思うし、もし帰り方を知っていたとしても情報は秘匿したいはずだ。ていうかこのお通夜ムードやめてほしい。わかりきってたことなのに、どうしてこうなるのかね。と、そう思うや否や、沈黙を破って皆をまとめようとする者が一人現れた。
「皆さん、そう気を落とさないでください。」
学級委員長でクラスでも信頼度が高く、説得力があることで名高い
「確かに、帰りたいと思うのは分かります。でも、呼ばれてしまったからには、そしてこの国の現状を聞いてしまったからには、私は動かない訳にはいられません。皆さんもそう思ったはずです。だから、気持ちを切り替えて協力しませんか?」
そんなに上手くいくのかな?多分だけど現代社会の十数倍くらいこの世界は危険だけどね。みんな恐れて反発しそうだけど。
しかし、クラスの意見は予想と反するものだった。
「委員長が言うならやってみるか。」
「ありがとう、理慈ちゃん」
と、一同は難なく受け入れた。
⋯⋯なにかおかしい気がする。何故彼らは命が危険に晒されるということを理解しているのに、こんなに簡単に受け入れるのかな。そんなに委員長って万能だったっけ?その様な思索に耽っていたところ、優絆が途端に話しかけてきた。
「ねぇねぇ、いいんちょってこんなに信頼されてたっけ?なんか少しおかしい気がするんだけど。」
やはり、そうなのか。僕はあんまり委員長を気にも留めていなかったからなんとも言えないが、優絆が言うならおかしいのか。普段から抜けているところはあるが、優絆は交友が広く、人の変化に一番聡い。こういうときは信用できる。
そうこうしているうちに、グラウェは僕達に、
「ではそろそろ皆さんの能力を確認しましょうか。まずはこちらに来てください。」
と促し、近くにあった台の方へと移動した。台には何やら赤い手形のようなものが刻印されており、時折点滅していた。
ほうほう、あれに手をかざして判別するのかな。でも正直能力は知られたくないな。この装置で何処まで判定できるのだろうか。なるべくわからないといいな。
一通り準備が済んだのか、グラウェが装置について話し始めた。
「ここにある物で皆さんの所持している能力を調べます。まず、この手形に皆さんの左手を
なるほどなるほど、それは非常に嬉しい。なるべく秘匿したかったからありがたいし、
とそこで、クラスメイトの一人が質問をした。
「あのー、ステータスとか、能力値はわからないのですか?」
「能力値はこの後配る指輪から確認できます。しかし、これはあくまで最初の数値で、のちの修練によって様々な方向に伸びていきます。これに関して、伸びは個人差があるものの、限界値は全員一定の値であり、伸びが止まることも無いです。」
ほー、それってつまりは能力が全てってことなのか。じゃあやっぱり秘匿すべきだね。
「それでは皆さん、こちらの方へお越しください。」
そう言うとクラス一同は整列し、順々に装置へと向かった。
さて、僕も行くかね、運命のジャッジメントとやらに……
謎に厨二病な言葉を心の中で呟き、僕は装置へ向かった。
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