星座のはなし
志乃亜サク
牡羊座
むかしむかし、とある国。
その国は未曾有の飢饉のただなかにありました。
困り果てた王様は、ゼウス神の助けを求めて神殿にやってきました。
「ゼウス様、なんかもう、国がエライことになっとります。どうかお助けを」
するとその願いに応え声がしました。
「ほんなら、お前とこの息子である王子をワシにイケニエとして差し出したらええんちゃう?」
「マジすか」
王様は驚きましたが、神様がそう言うなら仕方がありません。
しかし、じつはこのゼウスは偽者でした。
前妻の子である王子を疎んじた、イジワルな後妻による策略だったのでした。
王子、危うし。
ここで実子の危機を察した前妻が登場。
ゼウス神(本物)に助けを求めます。
ゼウスは願いに応えて言いました。
「ほんなら、空飛ぶ金毛の羊を遣わしたるわ」
イケニエにされかけてた王子のもとに、モッサモサの金色羊がやってきて言いました。
「乗りな。飛ぶで」
「おお!これで一緒に逃げるぞ、妹よ」
「えっ、私も? なんで?」
かくして王子は別にイケニエ候補でもなかった妹とともに羊に跨り、王宮から東の空へと飛び立ったのでした。
「おお、めっちゃ高いやん!」
「せやろ」
はじめて空を飛ぶ王子、大はしゃぎです。
金羊も調子に乗ってさらに高く飛びます。
「やめて兄やん、怖い怖い」
兄とは対照的に、怖がる妹。
「ふふふ、もっともっと高くなるでえ」
王子、免許取りたてのヤンキーみたいなことします。
「ファーーー!?」
高さに目が眩んだ妹、海へ真っ逆さまに落ちて亡くなってしまいました。
「……羊、お前なにしてくれてんねん」
「今のはワイのせいちゃうやろ」
その後ふたりは微妙な空気を抱えながら東の王国へ辿り着きます。
そこで温かく迎えられ、幸せに暮らしましたとさ。
「そういえば、ゼウス神にお礼言うの忘れてたわ……おーい、金羊!ちょっとおいで」
「来たで」
「ゼウス様、この子イケニエとしてアナタに捧げます」
「えっ」
羊、困惑。
「これ元々ワシがあげたやつ……」
ゼウスも戸惑いを隠せません。
しかも、よく見ると羊がだいぶスッキリしています。
「あれ? キミそんな感じやったっけ?」
聞けば金の羊毛は刈り取られ、王子を受け入れてくれた東の王国に捧げられたとのこと。
「えっ なにそれ怖い」
王子が帰ったあとの神殿。
「羊、なんかスマンな」
「……」
「ほんまスマンかった。お詫びに星座にしたるわ」
「ええてそんなん。いらん。やめて。
ファーーーー!?」
かくして羊は秋の宵、南の空にいまも輝いているといいます。
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