リレー小説OBNR(いなずま。)

いなずま。

4話

こよはるさんの書いた3話です↓

https://kakuyomu.jp/works/16818792440315843388/episodes/16818792440315868389


OBNR リレー小説↓

https://kakuyomu.jp/works/16818792439757544319



私は今日、幼馴染の虹斗の家でゲームをするために急いで帰宅している。

今日は全校生徒がお昼までで部活なしでもう最高な奇跡の日。

私も虹斗も春渡も補習はないし、今日こそゲーム絶対勝つ!と心の中で意気込みながら早歩きをする。

あと十数メートルで家なので歩幅を大きくすると、肩にポン、と手がのった。


「よーいかっ!」

「春渡⁉︎早くない……⁉︎」


教室を出たのはほぼ同時だったはず。

そして春渡の家は隣り合っている私と虹斗の家に反して、少し方向が違う。

これでも私は急いで帰ってきたつもりなので、ワープしないと無理なんじゃないだろうか。


「でしょー。二人と遊ぶのが楽しみで早くきちゃった。ところで虹斗は?」

「えっとね、一応部屋片付けるから、って言って走って帰って行ったから、もう家にいると思う」


すると春渡は少し考える素振りをしてから答えた。


「……そっか、ありがと!先に虹斗の家で待ってるね」

「うん、また後で」


軽く手を振り応えると、私は家の扉を開けた。

部屋に戻ると鞄をかけてスマホを取り、机に置いてある中のピンを一つポケットに入れて外に出た。



宵華と別れて虹斗の家に上がらせてもらうと、リビングにはすでに虹斗がいた。

ちょうど虹斗のお姉ちゃんはお菓子を取りに行ったので、僕は虹斗に話しかけた。


「おじゃましてますよー」

「ん」

「……ね、宵華置いて走って帰ってきたんでしょ?」

「……はぁ?」


あ、分かりやすくキレた。

推しの顔だったらなんでもカッコいいんだけどね。

僕は性格が悪いから、もっといじりたくなっちゃうな。


「そんなで大丈夫?宵華が前髪を上げ出したら、すぐ誰かに取られちゃうと思うよ?」

「関係ないだろ」


少し頬を膨らます虹斗を微笑ましくみながら、僕は勝手にコントローラーの設定を始めた。


「そう見えるんだ?」

「……」


目をまんまるにした虹斗だが、虹映さんが来たので会話をやめた。

それからしばらくしてインターホンが鳴った。



虹斗の家のインターホンを一回押す。


『はーい』

「宵華です」

『宵華ちゃん!ちょっと待ってて!』


この声は、きっと虹斗のお姉ちゃんの虹映こはちゃん。

扉を開けて出てきたのは、やっぱり高校の制服を着た虹映ちゃんだった。

最近彼氏ができたとかで、垢抜けて可愛くなった気がする。


「どうぞ〜」


と言って中へ誘導してくれたので、私もペコペコと感謝を伝えながら中へ入り靴を脱いで整えた。


「あ、宵華来た!セットは終わってるから、はい、これ使って」


リビングに入ると、ちょうど虹斗と春渡がゲームの準備を終えたところで春渡が私にピンク色のコントローラーを渡してくれた。


「お前……一応俺ん家のゲーム機なんだけど」

「別にいいじゃん」


少しだけど、虹斗が不機嫌な気がする。

なんかあったのかな。

というのは深く気に留めず、近くのソファの端に座らせてもらった。

隣に座った虹映ちゃんが二人に向けてにんまりと笑っているのを不思議に思いながら、ローディングが始まったテレビ画面に目をやる。


これは人気なゲームキャラがたくさん揃った格闘ゲームだ。

もちろん四人でもできる。が、私が一位になったことはない。

だって二人が強すぎるから!


「「なっ‼︎」」


私の可愛いアバターは虹映ちゃんの大技にすぐに吹っ飛ばされて終了。

春渡のアバターも虹斗の打撃を何回も受けて飛ばされて終了。

虹斗と虹映ちゃんの、姉弟対決の始まりだ。

攻撃を受けてもバリアを張ったり、一度吹っ飛ばされてもワープとか色々して戻ってきて、全然試合が終わらない。


「いつものパターンすぎるよね宵華ぁ!」


それに退屈を感じたのか、近くのクッションに座っていた春渡が、私に軽く抱きついてきた。

(近い……!)

それを見て動揺した虹斗は、虹映ちゃんの強烈な一撃で吹っ飛ばされてしまった。


「私の勝ちぃ〜‼︎」


手を振り上げ喜ぶ虹映ちゃん。


「……卑怯」


さらに不機嫌になった虹斗に追い討ちをかけるように、いつの間にか離れていた春渡が言う。


「卑怯も何も……僕が宵華にくっついたから、気になっちゃったんだよね!」


ピク、と虹斗の眉毛が動く。

まずい、これは割と本気で怒ってる時のやつだ。

私は次の試合こそは、と邪魔な前髪を上げるためポケットからピンを取り出そうとしていた。


このなんとも言えない雰囲気断ち切ったのは、扉が開く音だった。

ドタドタと足音を立てて向かってきては、すぐにリビングの扉も開いた。


「お姉ちゃん来てるって⁉︎」


赤いランドセルを背負ったまま、虹斗と虹映ちゃんの妹・奈菜ちゃんが私を見ていた。

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