額縁と縹色のシャツと家族の、……ものがたり

1990年代の歌謡曲のようになって、すいません🙇‍♀️
季節が流れるように景色が移り変わり、主人公のガクさんの安定した視点で読みやすかったです。
少しクラシカルな言葉選び、個性的な擬音の数々、そして何より伝統的な色名の響きがとても快かった。
虫襖(むしあお)、縹色、猩々緋、丹色(にいろ)、舞桜さんは登場人物ですけど淡いけれど精気の張った薄紅のイメージです。
ガクさんの心の引き出しに仕舞われた、さまざまな色あいのシャツは、彼の叶えたい夢(これから作る作品)のメタファーだったのか?

春霞で始まったこの物語、冬に命を終える蛍もいて、……巡りくる春に新しいシャツを引き出す。とても良い読後感をもたらします。