わからないということしかわからない
しゃもこ
ビッグってなんだろう
前任校から電話が来た。
卒業生Aから "俺は死ぬ" とだけ書かれたメールが来たそうだ。
先生にAから連絡が来てたりしませんか?
こっち大騒ぎなんですよ。
警察にも通報しましたが…
元同僚の声は冷静さを欠いていた。
来るわけない。当時担任の私とやんちゃなAは常に衝突していた。
ただ私には1つ思い当たる節があった。
私はBに昨日、偶然会っていた。
BはAの
私達は偶然の再会を喜び、昔話に花が咲いた。
話の中で、
Aが出所したので今晩有志で出所祝いをする、とBが言った。
出所⁈
Bが私を
先生…声が大きい、と。学校時代の逆だ。
驚いた。
しかし驚かなかった。
Aならあり得る。
それよりも彼等の情の厚さに感動した。
よかったら…とBは誘ってくれたが、仲間同士の集まりに水を差してはいけないと思い断った。
それを伝えると、元同僚も驚いていた。
何かあったらすぐに伝え合う事を互いに約束し、電話は切れた。
2日後、再び電話がかかってきた。
Aの件で、と言われ私は動揺した。
ところがである。
「山で修行してると今朝、本人から電話が…」
頭の中がぐるぐる回る。
山?
どこの山なのかはわからないが、命に別状はなさそうだ、
ご心配おかけいたしました、取り急ぎご報告です、と元同僚は言った。
私は退勤後すぐにBの勤務先に向かった。
出迎えてくれたBに事の経緯を話した上で
「Aはなぜ山に…?」と聞くと、Bは真顔で説明してくれた。
あの日Aが、俺は死ぬって皆に言ったんですよ。
みんなで止めたら、いや俺は生まれ変わるって。
なんだ。そういう意味か、ってみんな納得して。
まさか学校にまで連絡したとは思いませんでした。
あいつね、ビッグな存在になるそうです。
そのためには山での修行が必要らしいです。
どこの山?かは、聞かなかったです…そういえば。
ビッグ…
私は
それ以外の言葉が出ない。
もはやAが一体どこへ向かっているのか全く分からない。
しかし、もしかしたら彼は本当にビックになるのかもしれないと一瞬思ったが、すぐ否定した。
無いな。
しかし、ビッグってなんだろう。
わからないということしかわからない。
あいつ、本物のバカだったんですね。
Bがポツリと言った。
私はそれを否定しなかった。
Aはその後2日ほどで山を降り
今は、良き親方の下で働いているそうだ。
とりあえず安心した私はいろいろましましのラーメンを食べた。
彼より先に、私の体がビッグになりそうだ。
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