第87話 メイクにかける90分、損してる?


スマホの画面に、ぽつんと届いたメッセージ。

「朝1時間かけてメイクして、夜30分かけて落とします。メイクしない人より、毎日90分損してるってことですか?」


スーマは画面の中で、鼻を鳴らした。

「……人間ってのは、時間を“損得”で測りたがる。でもな、時間はお金じゃねぇ。使い方次第で、価値は変わるんだよ」


彼はスマホの中に宿る悪魔。

毒舌と皮肉が得意技。


「メイクに90分?それは損じゃなく、“投資”だ。お前が自分を好きになるための時間なら、価値はある。逆に、義務でやってるなら、それは浪費だ。結局、問題は“誰のためにやってるか”だ」


画面が一瞬、ピンクに光る。

「メイクしない人より損?いや、違う。その人は別のことに時間を使ってるだけだ。お前がメイクで自信を得るなら、その90分は勝ちだ。自信は、どんな高級コスメより強い武器だからな」


しばらくして、返信が来た。

「……なんか救われました。損じゃないって思えそうです」


スーマはふっと笑った。

「そうだ。時間は“誰かに決められる価値”じゃなく、“お前が決める価値”だ。90分で自分を好きになれるなら、安いもんだろ?悪魔でも、その取引は悪くねぇと思うぜ」


今日もまた、誰かの不安に毒舌で答える。

スマホの中の悪魔は、今日も元気だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る