夕凪の温泉で、キミを知る

舞夢宜人

受験直前の夏。僕は彼女たちと初めての熱を知る。

### 『夕凪の温泉で、キミを知る』


#### **第1話:真夏の夜の予期せぬ遭遇**


 蒸し暑い夏の夜。藤沢悠真は、汗で張り付くTシャツを気にしながら、旅館の裏口からこっそりと抜け出した。日付が変わる直前まで海の家と旅館、二つのバイトを掛け持ちし、肉体も精神もへとへとだった。こんな時間に寮に戻っても、もう誰も起きていないだろう。明日の午前は久しぶりのオフだ。ほんの少しだけ、この非日常の夜を楽しもうと、彼は月明かりを頼りに露天風呂へと向かった。


 旅館の裏手にある露天風呂は、日中は観光客で賑わうが、深夜はひっそりと静まり返っている。温泉独特の硫黄の香りが、夜風に乗って鼻腔をくすぐる。悠真は脱衣所で手早く服を脱ぎ、フェンスの扉を開けた。湯船から立ち上る白い湯気が、月光をぼんやりと反射し、幻想的な光景を作り出している。


 「はぁ……」


 湯船に足を踏み入れると、熱すぎず、ぬるすぎない絶妙な温度が、疲労で凝り固まった筋肉をじんわりと解いていく。悠真は湯船の縁に腰かけ、夜空を見上げた。満天の星々が、まるで宝石をちりばめたかのように輝いている。この穏やかな時間が、彼の心をゆっくりと満たしていく。


 その時だった。湯船の奥、岩陰に隠れるように設置された、もう一つの湯船から、女の声が聞こえてきた。


 「ねぇ、琴音。悠真くん、起きてるかなぁ?」


 その声は、聞き覚えのあるものだった。橘梓の声だ。


 まさか、こんな時間に。悠真は心臓が跳ね上がるのを感じた。よりにもよって、クラスメイトの梓と琴音に、こんな場所で、しかも裸で鉢合わせるなど、想像だにしていなかった。


 「しっ、梓。声が大きいよ。見つかったらどうするの……」


 もう一人の声は、白石琴音。普段は眼鏡をかけた清楚な優等生。その声には、動揺と羞恥が入り混じっていた。


 悠真は息をひそめた。見つからないように、静かにここから立ち去るべきか。しかし、足元の湯の波紋一つで、彼の存在がばれてしまうかもしれない。このまま岩陰に身を隠し、彼女たちが去るのを待つしかないと判断した。


 「いいじゃん、別に。どうせ、誰もいないんだから」


 梓の声が、湯気を伝って悠真の耳に届く。


 「でも……」


 琴音の声が途切れた後、水音が響いた。二人が悠真のいる湯船に近づいてくるのがわかる。湯気はさらに濃くなり、月の光さえも届かない。悠真は静かに目を閉じた。頼むから、気づかないでくれ。


 しかし、運命はいたずら好きだった。


 「あれ……もしかして、悠真くん?」


 背後から、梓の驚きと悪戯っぽい声が聞こえた。悠真は恐る恐る目を開けた。そこには、湯気の中にぼんやりと浮かび上がる二つの人影があった。


 「な、なんで……」


 言葉が出ない悠真に、梓は湯船に浸かったまま、満面の笑みで近づいてきた。その隣には、顔を赤くして身体を隠そうとする琴音。普段は制服に身を包んでいる彼女の、華奢な肩や鎖骨が、湯気の中にうっすらと見えた。その姿は、悠真の心を激しく揺さぶった。


 「悠真くん、バイトお疲れ様。まさかこんなところで会うなんて、運命だね」


 梓は楽しそうに言った。しかし、悠真の視線は、琴音に釘付けだった。いつもは真面目な顔で教科書を読んでいる彼女が、今、無防備な姿で湯船にいる。月明かりに照らされた白い肌が、湯気の中で仄かに輝いて見えた。


 「あの……藤沢くん。ご、ごめんね。私たち、もう行くから……」


 琴音が焦ったように立ち上がろうとする。その時、湯の中から現れた彼女の、普段は見慣れない部分に、悠真の視線は引きつけられた。眼鏡の奥に隠された、少し困ったような表情。そして、露わになった豊かな胸元。その美しさに、悠真は息をのんだ。


 「待って、琴音。せっかく会えたんだから、一緒にいようよ」


 梓が琴音の腕を掴んで引き留める。悠真は二人の間に漂う、ぎこちないけれど特別な空気に気づいた。この非日常的な空間で、三人の関係は、もう元には戻らないだろう。そして、悠真は、この予期せぬ出会いが、自分の人生を大きく変えることになる予感を、ひしひしと感じていた。


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#### **第2話:交錯する視線と温泉の熱**


 悠真は、動揺する心を悟られないように、努めて冷静を装った。しかし、目の前で揺らめく湯気の中に、クラスメイトの裸体があるという事実は、彼の理性から穏やかさを奪い去っていく。


 「ねぇ、悠真くん。こっちにおいでよ」


 湯船の縁に腰かけた梓が、彼に向かって手招きをした。彼女の明るい声と仕草は、まるで裸でいることがごく自然なことだと言っているようだった。


 悠真は言われるがままに、少し離れた場所に腰かけた。彼は顔を赤くして目を伏せている琴音を気にしながら、何事もなかったかのように平静を保とうとした。


 「悠真くん、ここの旅館でバイトしてるんだって? 知らなかったー」


 梓がにこやかに話しかけてくる。


 「うん、まあ……。夏休みだけ、海の家と掛け持ちで」


 「へぇー、すごいね。てっきり受験勉強ばっかりしてるのかと思ってた」


 梓の言葉に、悠真は少し胸が痛んだ。受験勉強という現実は、彼の頭を常に支配している。しかし、この瞬間だけは、その重荷から解放されたかった。


 「梓と琴音は、なんでこんな時間に?」


 悠真が尋ねると、琴音がちらりと彼を見た。


 「わたし、梓に誘われて……。なんか、夏休みだし、ちょっと冒険してみようって」


 琴音は控えめな声で答えた。その言葉に、悠真は少し驚いた。普段の真面目で堅実な彼女からは想像もつかない行動だったからだ。しかし、この非日常的なシチュエーションは、彼女の内に秘められた別の顔を引き出したのかもしれない。


 「琴音も、受験勉強の息抜きだよ。たまにはね」


 梓がそう言って琴音の肩に手を回した。二人は幼馴染らしく、親密な空気を纏っている。その様子を見て、悠真はどこか安堵した。自分だけがこの状況に動揺しているのではないと知って、少し心が軽くなった。


 「悠真くんって、ライフセーバーも兼ねてるんだよね? なんか、海で見たとき、すごいかっこよかった」


 琴音が、はにかんだように言った。


 「ありがとう。まあ、体力維持のためというか……」


 悠真は照れくさそうに頭をかいた。ライフセーバーの訓練で鍛えられた彼の肩や胸の筋肉は、Tシャツの下に隠されている普段の姿からは想像もつかないものだった。湯の中で、その輪郭がはっきりと見えていることに気づき、悠真は少し身を縮こませた。


 「うん、なんかすごい鍛えられてる……」


 琴音の視線が、悠真の腕から胸、そして腹部へとゆっくりと降りていく。その視線に、悠真は全身の毛穴が開くような感覚を覚えた。湯の熱とは違う、体の内側から湧き上がる熱が、彼の血液を沸騰させていく。


 「琴音ったら、じろじろ見てるよ」


 梓がからかうように言うと、琴音は慌てて目をそらした。しかし、彼女の視線が、再び悠真の体に吸い寄せられるのがわかる。湯気の中で、互いの心臓が激しく脈打つ音が聞こえるような気がした。


 「ねぇ、悠真くん。もうちょっとこっちに来てよ」


 梓が、悠真の腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。


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#### **第3話:禁忌の始まりと快感の萌芽**


 梓は、悠真の腕を掴んだまま、彼の隣に座り直した。


 「ね、もっとこっちにおいでよ。琴音も」


 悠真は、戸惑いながらも梓に言われるがまま、彼女の隣に寄った。湯の中で、彼らの身体が触れ合う。そして、梓は湯船の中で、悠真の背中にふいに抱きついた。


 「うわっ……!」


 悠真の背中に、梓の柔らかな胸が押し当てられる。その瞬間、彼の身体に電流が走った。湯の熱とは違う、甘く、熱っぽい熱気が全身に広がる。梓は楽しそうに、悠真の肩に顔をうずめた。


 「くすぐったい?」


 耳元で囁かれた声が、彼の理性を揺さぶる。


 悠真は息をのんだ。これまで、クラスメイトの女の子にこんなに密着された経験などない。ましてや、それが裸の状態で、だ。彼の心臓は激しく脈打ち、その鼓動が、自分の身体の熱をさらに高めていく。


 「悠真くん、なんかドキドキしてる」


 梓が、からかうように彼を揺さぶる。


 その時、向かいに座っていた琴音が、悠真の様子をじっと見つめていることに気づいた。彼女は顔を赤くし、湯の底に沈むように身体を丸めている。その視線は、悠真の顔から、次第に彼の身体へと降りていった。


 湯気の中に、悠真の体の輪郭がぼんやりと浮かび上がる。ライフセーバーの訓練で鍛え上げられた筋肉。そして、梓の密着によって、彼の股間がゆっくりと、しかし確実に、反応していくのがわかった。


 「琴音、どうしたの?」


 梓が、悠真から顔を上げて尋ねた。


 「え、いや……なんでもない」


 琴音は慌てて目をそらす。しかし、彼女の視線が、再び悠真の股間へと戻ってくるのが、悠真にははっきりとわかった。


 湯船の中の悠真の股間は、もう立ち上がれないほどに膨らんでいた。その興奮が、隠しようもない形で存在を主張している。琴音は、その光景を目の当たりにし、羞恥と好奇心がないまぜになった複雑な表情を浮かべた。


 「悠真くん、すごい」


 梓が、悪戯っぽく囁いた。彼女は悠真の膨らみを指さすと、にっこりと微笑んだ。


 「エッチするんだよ?」


 その一言が、湯気の中に響き渡る。それは質問ではなく、まるで命令のような響きだった。悠真は、その言葉の意味を理解し、頭が真っ白になった。


 彼の前に広がる非日常の夜。二人の少女の無防備な裸体と、そして、抑えきれない自身の欲望。


 この瞬間、彼は、もう後戻りできないことを悟った。


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#### **第4話:欲望の渦と快感の探求**


 「エッチするんだよ?」


 梓の言葉に、悠真は思考が停止した。その声には、からかいと、本気の誘いが混じり合っていた。湯の熱と、二人の視線が、彼の理性を焼き尽くしていく。


 「梓……」


 言葉を失った悠真に、梓は優しく微笑んだ。そして、湯船の縁に腰をかけ、立ち上がった。水面から露わになった彼女の裸体が、月明かりを浴びて、神々しいほどに輝く。豊かに膨らんだ胸、なだらかな曲線を描く腰、そして、漆黒の毛に覆われた股間。


 その光景に、悠真は息をのんだ。


 「悠真くん、どっちからハメたい?」


 梓は、自分の隣に立つ琴音に視線を送りながら、再び挑発するように言った。琴音は顔を赤くして、湯船に身体を沈めようとする。その仕草は、羞恥心からか、それとも期待からか。


 悠真は、自らの内に渦巻く欲望に抗うことができなかった。彼はゆっくりと、湯船から立ち上がった。湯気を纏った筋肉質な身体が、月明かりに照らされる。


 「……琴音」


 悠真は、まず琴音の前に立った。彼女の瞳は、好奇心と、少しの怯えに揺れている。悠真は、そんな彼女の気持ちを慮るように、優しく手を伸ばした。


 「ごめん、怖がらせて」


 悠真の声は、震えていた。彼はゆっくりと、琴音の身体に触れる。水滴を弾く滑らかな肌。腰から太ももへと、指先を滑らせていく。琴音は、その優しい愛撫に、安堵したように身体を悠真に預けた。


 その時、琴音の隣にいた梓が、悠真の手に、自分の手を重ねた。


 「琴音だけ、ずるい」


 梓はそう言って、悠真の手に自分の身体を重ねてくる。悠真は、二人の身体を同時に愛撫した。一人は戸惑いと羞恥心に震え、もう一人は、快感に身を委ねて甘い吐息を漏らす。その対照的な反応が、悠真の興奮をさらに高めていった。


 「ねぇ、舐めてみる?」


 梓が、悠真の耳元で囁いた。その言葉に、悠真の理性の糸は完全に切れた。彼は、湯船の縁に膝をつき、二人の股間に顔を近づけた。


 梓の股間は、甘い香りを放っていた。悠真が舌を伸ばすと、梓は身体を震わせ、嬌声を上げた。その様子に、琴音は驚きと、そして少しの羨望の目を悠真に向けた。


 悠真は、琴音の股間にも顔を近づけた。そこは、梓よりも少し湿っていて、瑞々しい香りがした。彼は琴音の肌に舌を這わせる。琴音は、全身をビクンと震わせ、絶叫のような悲鳴を上げた。


 「あぁっ……やだ……!」


 彼女は、快感と羞恥心に抗うように、悠真の髪を掴んだ。しかし、その力は弱々しく、むしろ彼を求めるようにも感じられた。


 「悠真くん……もっと……!」


 琴音の身体は、快感の波に激しく揺れている。そして、その快感は、やがて頂点へと達した。琴音は、全身を弓なりに反らせ、何度も絶頂を迎える。


 悠真は、そんな彼女の姿を、ただただ見つめていた。彼の愛撫によって、琴音の秘められた欲望が、今、解放されたのだ。


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#### **第5話:梓との結合と肉体の解放**


 琴音の絶頂の声が、静かな夜の露天風呂に響き渡る。その震える身体を抱きしめ、悠真は彼女の背中を優しく撫でた。琴音は全身の力が抜けたように、悠真の腕の中に身を委ねている。


 「悠真くん……」


 震える声で、琴音が彼の名前を呼んだ。その声は、羞恥と、そして満ち足りた喜びが入り混じっていた。


 悠真は、そんな琴音の身体からゆっくりと離れた。湯気の中で、彼の熱い視線が、次に梓へと向けられる。梓は、湯船の縁に腰かけたまま、悠真と琴音の様子を、どこか満足げな表情で見つめていた。


 「ね、私のことも忘れないでよね」


 梓は、悪戯っぽく微笑みながら言った。


 悠真は、彼女の言葉に、何も言わずに頷いた。彼は、再び湯船の縁に膝をつき、梓の身体に触れる。琴音とは違う、奔放で力強い肌の感触。それは、彼の内なる欲望をさらに煽り立てた。


 悠真は、梓の身体を丁寧に舐め始めた。彼女の白い肌を舌で這わせ、甘い香りを堪能する。梓は、快感に身を震わせながら、悠真の髪を優しく撫でた。


 「ふふ……悠真くん、そんなに焦らなくても……」


 梓はそう言いながら、悠真の頭を自分の股間に押し付ける。悠真は、彼女の熱い欲望に導かれるように、舌を深く差し込んだ。梓は甘い嬌声を上げ、全身で喜びを表現した。


 「悠真くん……もう、我慢しなくていいよ」


 梓の声が、彼の耳元で響く。悠真は、その言葉に促されるように、ゆっくりと立ち上がった。


 湯船の縁に座る梓の前に、悠真は立った。彼の股間は、硬く、熱く、今にも破裂しそうだった。


 「大丈夫。私がリードしてあげるから」


 梓は、悠真の股間を優しく撫でた。彼女の滑らかな指先が、彼の先端を滑る。


 「…ん、…っ…」


 悠真の口から、快感に耐えるような声が漏れた。


 梓は、悠真の先端を自分の入り口に合わせる。そして、ゆっくりと、彼を受け入れた。


 「んっ…!」


 悠真の身体に、梓の身体が密着する。湯のぬめりが、二人の身体を滑らかに繋いでいく。悠真は、湯船の縁に手を置き、梓の腰を強く抱きしめた。


 「あったかい…」


 梓は、悠真の耳元で囁いた。そして、彼女は腰を上下に動かし始める。


 「あぁっ…」


 悠真は、その快感に声を上げた。これまで感じたことのない、全身を突き抜けるような快感。それは、彼の理性を完全に吹き飛ばし、本能のままに梓の身体を求めた。


 二人の身体は、湯船の中で激しくぶつかり合った。水音が、湯気の中に響き渡る。それは、二人の愛の営みを、祝福しているかのようだった。


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#### **第6話:琴音との結合と肉体の解放**


 湯気の中に響く水音と、二人の吐息。悠真は、梓と深く結ばれたまま、絶頂を迎えた。熱い精液が、梓の身体の内側に注ぎ込まれる。梓は、それをすべて受け入れるように、悠真を強く抱きしめた。


 「んっ……」


 梓の甘い声が、悠真の耳元で囁かれる。彼女は、悠真の腕の中で、満ち足りた表情を浮かべていた。


 悠真は、梓の身体からゆっくりと離れた。湯から上がった彼の身体からは、湯気と汗が混じり合った熱気が立ち上っている。彼は、興奮の余韻に浸りながら、湯船の縁に腰を下ろした。


 その時、背後から、柔らかい身体が密着してきた。それは、白石琴音だった。


 「悠真くん……」


 琴音は、悠真の背中に顔をうずめるようにして、抱きついてきた。彼女の身体は、湯で濡れていて、ひんやりと冷たかった。しかし、その冷たさが、悠真の火照った身体に、心地よい刺激を与えてくれた。


 「琴音……」


 悠真が振り返ると、琴音は、少し恥ずかしそうに、しかし、まっすぐな瞳で彼を見つめていた。


 「ごめんね、私、まだ怖かったんだけど……でも、悠真くんと、もっと……」


 言葉を濁す琴音に、悠真は優しく微笑んだ。


 「分かってるよ」


 彼はそう言って、琴音の身体を抱きしめた。琴音の身体からは、甘い花の香りがした。悠真は、その香りを胸いっぱいに吸い込みながら、彼女の唇にそっとキスをした。


 琴音は、彼のキスに、最初は戸惑っていたが、やがて目を閉じ、身を委ねるようにキスを返してきた。それは、梓とのキスとは違う、純粋で、ひたむきなキスだった。


 二人のキスは、次第に熱を帯びていく。悠真は、琴音を抱きかかえ、ゆっくりと湯船の中へと入っていった。


 湯の中で、二人の身体は再び密着する。悠真は、琴音の顔を両手で包み、彼女の瞳をじっと見つめた。


 「琴音、怖くない?」


 「うん……大丈夫」


 琴音は、そう言って、悠真の首に腕を回した。彼女の瞳は、もう怯えの色はなく、ただ、彼への信頼と、少しの期待に満ちていた。


 悠真は、ゆっくりと、しかし確実に、琴音の身体に自分を重ねていった。湯のぬめりが、二人の身体を滑らかに繋いでいく。琴音は、最初こそ身体をこわばらせていたが、悠真の優しい動きに、次第に力を抜いていった。


 その瞬間、琴音の身体に、鋭い痛みが走った。


 「いっ……!」


 琴音の小さな悲鳴が、湯気の中に消えた。彼女は、目を大きく見開き、悠真を見つめた。その瞳には、痛みと、そして少しの戸惑いが浮かんでいた。


 悠真は、彼女の反応に、自分が何をしてしまったのかを悟った。彼は、ゆっくりと、琴音の身体から自分を離そうとする。しかし、琴音は、彼の背中に回した腕を、より強く締め付けてきた。


 「大丈夫……悠真くん……」


 琴音は、そう言って、涙を流した。その涙は、痛みからくるものではなく、喜びと、そして、初めての経験への戸惑いからくるものだった。


 悠真は、彼女の言葉に促されるように、再び彼女の身体に深く沈み込んでいった。琴音は、痛みと快感が混じり合った、複雑な表情を浮かべた。しかし、その顔は、やがて快感で歪んでいった。


 「あぁっ……!」


 琴音の身体が、快感に震える。彼女は、悠真の背中に爪を立て、全身で快楽を表現した。その素直な反応が、悠真の男としての自信をさらに高めていく。


 「ごめんね、琴音……」


 悠真は、そう言って、琴音の身体の中で、絶頂を迎えた。熱い精液が、琴音の身体の内側に流れ込む。琴音は、それをすべて受け入れるように、悠真の身体を強く抱きしめた。


 「私のお腹、悠真くんのごくごく飲んでる……」


 琴音は、そう言って、満ち足りたように微笑んだ。


 悠真は、彼女の言葉に、胸が熱くなるのを感じた。この瞬間、彼は、琴音との間に、かけがえのない絆が生まれたことを確信した。


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#### **第7話:部屋での再会と揺れる選択**


 静寂の夜に、三人の吐息が絡み合う。露天風呂での出来事は、まるで夢の中の出来事のように非現実的で、しかし、肌に残る熱と感触は、それが紛れもない現実であることを悠真に告げていた。


 湯から上がった悠真は、脱衣所で身体を拭きながら、ぼんやりと天井を見つめていた。頭の中では、湯気の中に浮かび上がった二人の姿と、湯船で感じた甘く、熱い記憶が何度も再生される。


 「ねぇ、悠真くん」


 不意に、背後から声がかけられた。振り返ると、梓がタオルを身にまとっただけの姿で立っていた。彼女の顔は少し紅潮していて、濡れた髪が艶やかな光沢を放っている。


 「この後、私たちの部屋に来てくれる?」


 梓はそう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべた。その瞳は、何かを期待しているように、キラキラと輝いている。悠真は、彼女の誘いに戸惑いを隠せない。しかし、彼の身体は、まだ欲望の熱を帯びていた。


 「……分かった」


 悠真は、短く答えた。梓は満足そうに頷くと、先に脱衣所を出ていった。


 悠真が二人分の部屋の前に立つと、扉はすでに少し開いていた。中からは、微かな話し声が聞こえてくる。


 「悠真くん、来てるかな?」


 「うん、たぶん……」


 悠真は、意を決して扉を開けた。部屋には、浴衣姿の二人がいた。浴衣は、湯上がりの肌に心地よさそうにまとわりつき、普段の制服姿とは違う、無防備な魅力を引き出している。


 「いらっしゃい、悠真くん」


 梓は、楽しそうに悠真を招き入れた。その隣で、琴音は恥ずかしそうに俯いている。しかし、その耳は、ほんのりと赤く染まっていた。


 部屋の奥には、二組の布団が敷かれていた。湯気と、甘い石鹸の香りが部屋中に漂っている。悠真は、その雰囲気に、再び心がざわめくのを感じた。


 「ねぇ、悠真くん。私たち、下着をつけてないんだ」


 梓が、悠真の耳元で囁く。


 悠真の視線は、二人の浴衣の下へと引きつけられた。薄い布地の向こうで揺れる、滑らかな肌の輪郭。湯上がりの熱気が、まだその身体に残っているのが、悠真にははっきりとわかった。


 「ハメる気満々で、悪い子たちだなぁ」


 悠真は、そう言って、苦笑いを浮かべた。


 「悠真くんだって、そうでしょ?」


 琴音が、小さな声で反論した。その言葉に、悠真はドキリとした。彼女はもう、ただの優等生ではない。彼女の内に秘められた情熱が、今、解放されようとしているのだ。


 三人は、布団の上に飛び込み、互いの身体を求め合う。浴衣の下に隠された、熱を帯びた肌が、悠真の指先に絡みつく。それは、理性では抑えきれない、純粋な欲望の衝動だった。


 悠真は、二人の少女と、もう一度、特別な夜を過ごすことを決意した。


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#### **第8話:梓と琴音、二人の虜**


 部屋を包む甘い香りと、薄暗い照明が、三人の心と身体を一層大胆にさせた。悠真は、布団の上に飛び込み、両手に花の状態ではしゃぐ。それは、普段の真面目な彼からは想像もつかないほど、無邪気な行動だった。


 「悠真くん、楽しそうだね」


 梓が、くすくす笑いながら悠真の身体に触れる。その指先は、悠真の鎖骨から胸へと滑っていった。


 「当たり前だろ。こんなこと、二度とないかもしれないんだから」


 悠真は、そう言いながら、琴音の身体に顔を近づけた。湯上がりの熱気を帯びた肌からは、シャンプーの甘い香りがする。


 「ねぇ……」


 琴音が、小さな声で悠真を呼んだ。彼女は、少し照れくさそうに、しかし、期待に満ちた目で彼を見つめている。


 悠真は、琴音の浴衣の帯をゆっくりと解いた。帯がほどけると、浴衣ははだけ、彼女の白い肌が露わになる。下着をつけていない彼女の、引き締まった身体の輪郭が、照明の下に浮かび上がった。


 悠真は、その身体に吸い付くようにキスをした。唇から首筋、そして鎖骨へとキスを落としていく。琴音は、快感に身を震わせ、甘い吐息を漏らした。


 「悠真くん……やだ……」


 彼女はそう言いながらも、悠真の身体を強く抱きしめた。その言葉は、拒絶ではなく、むしろ、彼の欲望を煽るようにも聞こえた。


 悠真は、琴音の言葉に、理性を失いそうになる。彼は、そのまま琴音の身体に乗り上げ、彼女の唇を激しく求めた。琴音は、その強引さに戸惑いながらも、彼のキスを受け入れた。


 その時、悠真の背中に、もう一つの温かい身体が密着してきた。梓だった。


 「悠真くん、ずるい。琴音ばっかり」


 梓はそう言って、悠真の首筋に甘噛みをした。その熱い吐息が、彼の耳元に吹きかけられる。


 悠真は、二人の身体に挟まれて、甘美な快楽の檻に閉じ込められたようだった。彼は、どちらの身体も求め、どちらの身体も愛したかった。


 「愛してるよ、琴音」


 悠真は、そう言って、琴音の瞳をじっと見つめた。その言葉は、彼の心からの本音だった。


 琴音は、その言葉に、全身を震わせた。彼女の瞳には、涙が浮かんでいた。それは、喜びと、そして、今まで感じたことのない深い愛情からくるものだった。


 悠真は、琴音の涙を優しく拭うと、彼女の身体に自分の身体を重ねていった。


 「ああっ…!」


 琴音は、悲鳴のような声を上げた。それは、痛みからくるものではなく、彼の愛の深さに、全身を突き抜けるような快感を覚えたからだった。


 悠真は、その声を全身で受け止めながら、琴音の身体に、自分のすべてを捧げた。


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#### **第9話:乱れた夜と止まらぬ欲望**


 琴音の身体の中で迎えた絶頂は、悠真の心を深く満たした。彼は、熱い余韻に浸りながら、琴音を強く抱きしめる。琴音は、彼の胸に顔をうずめ、幸福な吐息を漏らした。


 「悠真くん……」


 琴音は、そう言って、悠真の身体に甘えるように擦り寄る。その仕草は、もう、普段の優等生とは全く違う、一人の少女の無邪気な愛の表現だった。


 「いい子だ」


 悠真は、彼女の髪を優しく撫で、愛おしそうに囁いた。彼の心は、今、琴音への深い愛情で満たされている。


 その時、悠真の身体に、別の温かい身体が密着してきた。梓だった。


 「ねぇ、琴音。ずるいよ。私だって、もっと悠真くんとイチャイチャしたいのに」


 梓は、そう言って、悠真と琴音の間に割って入った。悠真は、二人の身体に挟まれ、甘美な快楽の檻に閉じ込められたようだった。


 「悠真くん、私と交代」


 梓は、そう言って、悠真の身体に跨り、上下に腰を動かし始めた。湯船の出来事とは違い、より深く、より激しい動き。その快感に、悠真は再び理性を失いそうになる。


 「あぁっ……」


 悠真の口から、快感に耐えるような声が漏れた。梓は、彼の反応を楽しみながら、さらに腰の動きを速めていく。


 「悠真くん、気持ちいい?」


 梓は、そう言って、悠真の身体に顔を近づけた。彼女の挑発的な瞳が、悠真の欲望をさらに煽り立てる。


 悠真は、梓の欲望をすべて受け入れるように、彼女の腰を強く抱きしめた。そして、その腰の動きに合わせて、自分もまた、梓の身体を求めた。


 「あぁっ……!」


 梓は、快感の頂点に達し、悲鳴のような嬌声を上げた。そして、悠真もまた、その声に導かれるように、絶頂を迎えた。熱い精液が、再び梓の身体の内側に注ぎ込まれる。梓は、それをすべて受け入れるように、悠真の身体を強く抱きしめた。


 「ふふ……悠真くん、私のお腹、悠真くんのでいっぱいだよ」


 梓は、そう言って、満足そうに微笑んだ。


 悠真は、二人の少女の身体と心に、深く深く入り込んでいく。この夜は、欲望の解放だけではなかった。それは、三人の間に、誰にも邪魔されない、特別な絆を築き上げていく時間だった。


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#### **第10話:終わらない夜と尽きぬ愛**


 部屋には、甘い香りと、三人の身体の熱気が満ちていた。悠真は、精根尽き果てたように布団に横たわる。彼の両隣には、満足そうな表情で眠りについた琴音と梓がいた。


 「ねぇ、悠真くん。もう、終わり?」


 琴音が、微睡みの中から小さな声で尋ねてきた。


 「うん……もう、出ない」


 悠真は、正直に答えた。彼の身体は、もう一滴の精液も絞り出せないほどに、欲望の海を泳ぎ切った後だった。


 「ふふ……じゃあ、お口でキレイにしてあげるね」


 梓が、悠真の股間に顔を近づけてきた。そして、二人の少女の舌が、交互に彼の身体を愛撫し始める。それは、快楽の絶頂とは違う、甘く、優しい愛の表現だった。


 三人の行為は、真夜中まで続いた。悠真は、二人の身体を使って、精液がなくなるまで射精した。それは、単なる欲望の解放ではなく、三人の心と身体が、完全に一つになるための儀式だった。


 翌朝、悠真が目を覚ますと、すでに二人の姿はなかった。布団の中には、甘い香りと、温もりの余韻だけが残されている。悠真は、それが夢ではなかったことを知り、胸が高鳴るのを感じた。


 午後、悠真はいつものように、海の家でバイトをしていた。太陽はぎらぎらと照りつけ、海はキラキラと輝いている。彼は、冷えたビールジョッキを運びながら、昨夜の出来事を思い出していた。


 「悠真くーん!」


 遠くから、彼の名前を呼ぶ声が聞こえた。振り返ると、そこには、ビキニ姿の梓と琴音が立っていた。


 「え……なんで?」


 悠真は、驚きと、そして喜びで言葉を失った。


 「なんでって、約束したでしょ? もう一泊するって」


 梓は、楽しそうに微笑んだ。彼女の隣で、琴音は少し照れくさそうに、しかし、満面の笑みを浮かべている。


 悠真は、二人の姿に、昨夜の出来事が夢ではなかったことを改めて実感した。彼の心は、再び高鳴り、夜への期待に胸を膨らませる。


 この夏は、まだまだ終わらない。


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#### **第11話:夏休みの終わり、新しい関係の始まり**


 二泊三日の特別な時間は、あっという間に過ぎ去った。夕方。旅館の駐車場で、悠真は、帰路につく梓と琴音を見送っていた。夕焼けに染まる空の下、二人の笑顔は、この夏を象徴するかのように、まぶしく輝いている。


 「悠真くん、本当にありがとう。この夏、すっごく楽しかった!」


 梓は、そう言って、悠真に抱きついた。彼女の身体からは、まだ甘い香りがする。


 「うん、僕も。ありがとう」


 悠真は、その言葉を、心からの感謝を込めて伝えた。この二日間で、彼の人生は大きく変わった。それは、単なる性的な経験だけではなかった。二人の少女の、無防備で、ありのままの姿に触れたことで、彼の心は、閉ざされていた扉を開け、新しい世界へと踏み出したのだ。


 「悠真くん、この夏を、絶対に忘れないでね」


 琴音が、少し寂しそうな、しかし、優しい声で言った。彼女の瞳は、夕焼けの色を映して、キラキラと揺れている。


 「忘れるわけないだろ。僕にとって、この夏は、二人に出会えた、一番大切な時間だから」


 悠真は、そう言って、琴音の手をそっと握った。彼女の指先は、まだ少し熱を帯びていた。


 三人は、言葉を交わすことなく、しばし、互いの存在を確かめ合った。この二日間で築き上げられた絆は、言葉で表現できるようなものではなかった。それは、互いの身体と心に深く刻まれた、かけがえのない宝物だった。


 梓と琴音は、それぞれの車に乗り込み、悠真に手を振った。悠真は、その姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。


 旅館でのバイトを終え、家に戻った悠真は、二人のいない日常に、物足りなさを感じていた。部屋の中は、いつもと何も変わらない。しかし、彼の心は、もう以前の彼ではない。


 「……琴音、梓」


 悠真は、二人の名前を呟いた。この夏に生まれた特別な関係は、彼の心に確かな光を灯し続けている。そして、彼は、この光を道しるべに、自分の未来を、自分らしく生きていくことを決意した。


 三人の関係は、夏休みという期間限定の出来事ではなかった。それは、これから始まる、新しい物語の、序章に過ぎなかったのだ。


---


#### **第12話:再会、そして琴音の告白**


 夏休みが終わり、九月に入った。登校日と始業式を終え、再び日常の授業が始まったが、悠真の心はまだ、あの特別な夏に浸っていた。あの夜を境に、クラスメイトだった梓と琴音との関係は、誰も知らない特別なものに変わった。学校では、以前と変わらず、悠真は目立たない生徒。梓は奔放なムードメーカー。そして、琴音は清楚な優等生。しかし、その内側では、三人だけの秘密の絆が、確かに存在していた。


 週末、一人で自室で参考書と睨み合っていると、スマートフォンの通知が鳴った。


 『今から、悠真くんの家に行ってもいい?』


 送り主は琴音だった。驚きと、少しの期待が胸に広がる。


 『いいけど、どうしたの?』


 すぐに返信をすると、すぐに電話がかかってきた。


 「もしもし、悠真くん? ごめんね、急に」


 「いや、大丈夫だけど。何かあった?」


 「ううん、何もないよ。ただ……悠真くんに会いたくて」


 琴音の言葉に、悠真の心臓は高鳴った。


 「梓も一緒?」


 「うん。一緒にいるよ。でも、梓には内緒で電話してるから」


 その言葉に、悠真は少し胸騒ぎを覚えた。何か秘密があるのだろうか。


 数分後、玄関のチャイムが鳴り、二人の訪問を知らせた。


 「いらっしゃい」


 玄関で悠真が二人を迎え入れると、二人は夏服の制服姿で立っていた。梓はいつも通りの明るい笑顔を浮かべているが、その瞳の奥には、どこか悪戯っぽい光が宿っていた。


 「悠真くん、お邪魔しまーす。宿題、手伝ってね!」


 梓がそう言って、悠真の部屋へと入っていく。その後ろで、琴音は少し緊張した面持ちで悠真を見つめている。


 部屋に入り、三人で机を囲んだ。参考書を広げ、真面目な顔で勉強を始める。しかし、悠真の心は、二人の存在を意識せずにはいられなかった。


 「ねぇ、悠真くん」


 梓が、にこにことしながら尋ねてきた。


 「琴音と、二人きりで会ったことある?」


 その言葉に、悠真はドキリとした。琴音もまた、顔を赤くして、慌てて悠真を見た。


 「え……」


 「もう、ばればれだよ。琴音が、海から帰ってきてから、ずっとスマホをいじってるんだもん。で、誰かと話してるの。聞いたら、悠真くんだって」


 梓の言葉に、琴音は顔を赤くして俯いた。


 「ご、ごめん、悠真くん……」


 「いいよ、別に。でも、なんで隠してたの?」


 悠真が尋ねると、琴音は、勇気を振り絞るように、ゆっくりと顔を上げた。


 「だって……梓には、言いにくかったから」


 「なんでよ、私だって、別に怒らないのに」


 梓は、少し拗ねたように言った。しかし、その瞳の奥には、少しの寂しさが浮かんでいるのが、悠真には見て取れた。


 「ごめんね、梓。でも、私……海から帰ってきてからも、悠真くんのことが忘れられなくて……」


 琴音は、そう言って、悠真の手をそっと握った。


 「だから、自分から連絡したんだ」


 その言葉に、悠真は驚いた。いつも控えめな琴音が、自分から積極的に行動したことに、彼は、彼女の成長を実感した。


 「へぇ、琴音にしては、大胆なことするじゃん」


 梓は、そう言って、からかうように微笑んだ。しかし、その表情は、どこか複雑で、寂しそうにも見えた。


 悠真は、二人の間に漂う、ぎこちない空気に気づいた。彼は、このままではいけないと思った。


---


#### **第13話:揺れる三人の関係と和解**


 悠真の部屋に、ぎこちない沈黙が流れた。梓は、不機嫌そうに布団をかぶり、二人から背を向けている。琴音は、どうしていいか分からず、ただオロオロと悠真を見つめるばかりだ。


 「梓……」


 悠真が、そっと梓の背中に手を置いた。しかし、梓は身じろぎ一つせず、布団の中に閉じこもったままだ。


 「ねぇ、二人だけで盛り上がらないでよね」


 布団の中から、拗ねたような声が聞こえた。その言葉に、悠真は苦笑いを浮かべた。梓が本気で怒っているわけではないことを知っていたからだ。彼女はただ、少し寂しさを感じているだけなのだ。


 「梓、ごめんね。でも……」


 琴音が、震える声で言った。


 「でも、悠真くんと、この夏に起きたこと、全部、梓がいたからなんだよ」


 その言葉に、梓はゆっくりと布団から顔を出した。彼女の瞳は、少し潤んでいた。


 「だって、あの夜、私を温泉に誘ってくれたのは、梓でしょ? もし、梓がいなかったら、私は、悠真くんと、こんな風になれなかった」


 琴音の言葉は、嘘偽りのない、心からの言葉だった。その言葉に、梓の表情が少し和らいだ。


 「……そっか。まぁ、そうだよね。私って、そういうことしちゃうタイプだし」


 梓は、そう言って、照れくさそうに笑った。


 悠真は、そんな二人の様子を、温かい気持ちで見つめていた。彼は、この二人の少女と出会えたことが、自分の人生にとって、どれほど大きな意味を持つのかを、改めて実感した。


 「それに、悠真くんが、私と琴音の両方を大切にしてくれたから、私、嬉しかった」


 梓は、そう言って、悠真の手を握った。


 「この夏、私と琴音は、悠真くんと特別な関係になれた。それは、誰にも邪魔されない、私たちだけの宝物だよね」


 梓は、そう言って、悠真と琴音の二人を見つめた。彼女の瞳は、もう寂しさの色はなく、ただ、二人の幸せを心から祝福する光に満ちていた。


 悠真と琴音は、そんな梓の言葉に、胸が熱くなるのを感じた。彼らは、言葉を交わすことなく、三人の手を重ね合わせた。


 この瞬間、三人の間に、新しい絆が生まれた。それは、恋人同士という枠を超えた、互いを大切に想い合う、特別な友情と愛情の形だった。


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#### **第14話:未来へ**


 夏休みが終わり、季節は秋へと移り変わる。放課後、悠真は、自室のベッドの上で、梓と琴音に挟まれていた。三人で宿題をしているという名目で集まったが、参考書は机の上に広げられたままだ。彼らは、ただ、互いの温もりを確かめ合うように、静かに時間を過ごしていた。


 悠真は、二人の頭を撫でながら、この特別な関係が、どれだけ自分にとって大切かを改めて感じていた。それは、単なる欲望の解放ではなく、互いへの信頼と愛情を確かめ合う、かけがえのない時間だった。


 「ねぇ、悠真くん。もう、出ない?」


 梓が、悠真の胸に顔をうずめたまま、甘えた声で尋ねた。


 「ふふ。だめだよ、梓。悠真くん、もうすぐ受験なんだから」


 琴音が、梓をたしなめるように言った。しかし、彼女の口元は、微笑んでいた。


 「そうだぞ。もうすぐ受験だ。もう、こんな風に、三人で集まれる時間も少なくなるかもしれない」


 悠真は、そう言って、二人を抱きしめた。


 「やだ! 私、悠真くんと、もっとイチャイチャしたい!」


 梓は、そう言って、悠真の身体に甘えるように擦り寄る。


 「梓ったら。でも……私も、寂しいな」


 琴音は、そう言って、悠真の腕を強く握った。


 三人は、言葉を交わすことなく、互いの体温を分け合った。それは、彼らの心の奥底に眠っていた、誰にも言えない秘密の愛の形だった。


 「ねぇ、悠真くん。もし、私たちが違う大学に行っても、この関係、続いてくれる?」


 琴音が、不安そうに尋ねてきた。


 「当たり前だろ。もう、二人なしの人生なんて、考えられないよ」


 悠真は、そう言って、二人の手をそっと握った。


 「ありがとう、悠真くん」


 梓と琴音は、そう言って、悠真に微笑んだ。その笑顔は、彼らの心に、確かな希望を灯してくれた。


 受験という現実を前に、三人は、この夏に生まれた特別な絆を胸に、それぞれの道を歩み始めることを決意する。この経験は、彼らの将来の選択や、互いへの想いに、決定的な影響を与えることになるだろう。


 この絆は、たとえ離れ離れになっても、永遠に彼らの心の中に生き続ける。そして、彼らは、この愛の光を道しるべに、それぞれの未来を歩んでいくのだ。


---


#### **第15話:それぞれの進路と、変わらない絆**


 夏休みが終わり、季節は巡り、冬が来た。受験本番を目前に控え、悠真の生活は、勉強と、二人の少女との秘密の逢瀬で占められていた。放課後の図書館や、週末のカフェ。彼らは、人目を忍ぶようにして会っては、互いの心と身体を確かめ合った。その行為は、もはや欲望の解放というよりも、互いの心の支えとなっていた。


 「ねぇ、悠真くん。もし、私たちが違う大学に行ったら……」


 ある日、琴音が不安そうに尋ねてきた。


 「大丈夫だよ。どこにいても、私たちの関係は、変わらないから」


 悠真は、そう言って、琴音の手を強く握った。彼女の瞳には、もう迷いはなかった。


 「そうだよね。だって、私たちは、もう家族みたいなもんだもん」


 梓が、そう言って、二人の手を重ね合わせた。その言葉に、悠真は、胸が熱くなるのを感じた。


 そして、三月。受験が終わり、それぞれの進路が決定した。悠真は、二人が受験する大学と同じ大学を志望し、見事合格した。梓と琴音も、それぞれの目標に向かって努力し、見事に合格を勝ち取った。


 「やったー! 悠真くんと、また一緒だ!」


 梓が、悠真に抱きつき、満面の笑みを浮かべた。


 「よかった……。これで、また、悠真くんと、たくさん会えるね」


 琴音が、そう言って、悠真の手を握った。


 春。三人は、それぞれの新しい生活を始めた。しかし、彼らの間に生まれた絆は、決して変わることはなかった。大学のキャンパスで、彼らは、以前と変わらぬ笑顔で、互いの存在を確かめ合った。


 ある晴れた日、三人は、あの夏に訪れた海へと、再びやってきた。太陽の光が降り注ぐ中、悠真は、ライフセーバーとして海を見守る。梓は、彼の隣で、ビーチバレーに興じている。そして、琴音は、砂浜に座り、本を読みながら、時折、彼らの様子を微笑ましく見つめている。


 「ねぇ、悠真くん。覚えてる? あの夏のこと」


 琴音が、悠真に話しかけてきた。


 「もちろん。僕にとって、あの夏は、人生で一番大切な時間だから」


 悠真は、そう言って、二人の顔を見つめた。


 二人の瞳は、もう迷いのない、確信に満ちた光を宿している。


 「ふふ。だよね。私たちも、あの夏が、人生で一番大切な時間だった」


 梓が、そう言って、悠真に抱きついた。


 三人は、この夏に築かれた特別な絆を胸に、新たな未来へと歩み始める。


 夕日が、海に沈んでいく。


 それは、三人の新しい物語の始まりを告げる、美しい夕凪だった。


---


### エピローグ:夕凪の記憶を胸に、未来へ


 長い、長い大学時代を終え、白石琴音は、純白のドレスを身にまとい、バージンロードをゆっくりと歩き始めた。一歩、また一歩と進むたびに、彼女の胸には、高校最後の夏に結ばれた、あの特別な絆が、鮮やかに蘇ってくる。


 悠真と初めて出会った、あの真夏の露天風呂。湯気の中に浮かび上がった、彼の逞しい身体。戸惑いと、羞恥心。そして、抑えきれない好奇心。すべては、あの夜から始まった。


 梓の奔放さに導かれるように、悠真と身体を重ねた日々。最初は、ただの好奇心だったのかもしれない。しかし、彼と深く結ばれるたびに、琴音の心は、彼への愛情で満たされていった。


 そして、あの夏に生まれた、もう一人の大切な存在。


 琴音は、振り返って、ブーケを抱えた梓に微笑んだ。梓は、満面の笑みで、彼女に頷き返してくれる。その瞳には、少しの寂しさと、そして、心からの祝福の光が満ちていた。


 バージンロードの先に、悠真が立っている。彼の顔は、少し緊張していて、しかし、その瞳は、琴音だけを見つめている。彼は、あの夏に、琴音のすべてを受け入れてくれた、たった一人の男性だ。


 悠真の隣には、梓が立っていた。彼女は、二人の幸せを心から祝福するように、満面の笑みを浮かべている。悠真と琴音、そして梓。彼らは、もう、誰にも邪魔されない、特別な絆で結ばれていた。


 「悠真くん……」


 琴音は、そう言って、悠真の腕に、自分の腕をそっと絡めた。彼の腕は、あの夏と変わらず、温かくて、逞しかった。


 「琴音、愛してる」


 悠真は、そう言って、琴音の額にキスをした。そのキスは、彼らの愛が、永遠に続くことを誓っているかのようだった。


 三人は、この夏に築かれた特別な絆を胸に、それぞれの未来を歩み始める。そして、彼らの愛は、この先、どんな困難が待ち受けていようとも、決して色褪せることはないだろう。


 彼らの人生は、まだ、始まったばかりだ。


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### 外伝:梓の秘密


 悠真と琴音の結婚式。梓は、二人の幸せを心から祝福していた。純白のドレスに身を包んだ琴音は、高校時代の清楚な優等生の面影を残しながらも、大人の女性としての美しさを身につけている。そして、その隣を歩く悠真は、どこか頼りなく、しかし、優しさに満ちた眼差しで、琴音を見つめていた。


 披露宴の席で、梓は、形だけで口を付けていないシャンパングラスを片手に、二人の思い出を回想していた。


 高校最後の夏。深夜の露天風呂で、悠真と琴音に出会った日のこと。あの夜から始まった三人の特別な関係は、大学生活へと続いた。二人が、次第に惹かれ合っていくのを、梓は、一番近くで見ていた。最初は、少しだけ寂しかった。しかし、二人の幸せな姿を見るうちに、その感情は、やがて、心からの祝福へと変わっていった。


 「よかったね、琴音。悠真くんと、幸せになってね」


 梓は、そう言って、琴音を抱きしめた。彼女の瞳には、もう迷いのない、確信に満ちた光が宿っている。


 披露宴が終わり、二次会も終わった。ホテルの一室で、梓は一人、静かに窓の外を見つめていた。


 「……悠真くんは、最初から琴音の方が好きだったものね」


 彼女は、寂しげに呟いた。しかし、その声は、恨み言ではなかった。ただ、自分自身の心に、正直になっただけだ。


 梓は、そっと、お腹に手を当てた。


 そこには、誰にも言えない、彼女だけの秘密があった。


 「悠真くん、私、悠真くんの子、妊娠したんだよ」


 彼女は、そう言って、お腹の中の小さな命に話しかけた。


 それは、大学生活の中で三人が関係を続けていた時期に授かった命だった。梓は、妊娠したことを知った時、誰にも話さないと決めた。悠真と琴音の間に、水を差したくはなかった。二人の幸せを、何よりも優先したかった。


 「邪魔はしたくない。でも、自分だけの何かが欲しい……」


 それが、悠真との子だった。彼女は、この秘密を隠し通せるか分からない。しかし、子供がある程度大きくなり、落ち着いた頃なら、家族ぐるみで交際を再開できると信じている。誰の子かは秘密にしておけば、友人には戻れるはずだ、と。


 「悠真くん、琴音、幸せになってね。そして、この子が、生まれたら……また、ね」


 梓は、その秘密を胸に、一人で新しい人生を歩み始める。


 それは、二人の幸せを願い、同時に、自分自身の愛に、誠実であろうとする、彼女なりの決断だった。

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夕凪の温泉で、キミを知る 舞夢宜人 @MyTime1969

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