居たり消えたり

肥後妙子

第1話 正しい困惑だと信じたい

 隣の席から聞こえた会話。

「作家のカノウかのんがSNS始めたらしいよ」

「あー、じゃあ実在したってことかあ」


 私は在宅でパソコンを使う仕事をしている。今日は休憩がてらにカフェに来てコーヒーを楽しんでいた。そこに、隣の席の十五、六歳くらいの女の子たちの会話が聞こえてきた。その会話の内容をまとめてみる。なぜなら困惑したからだ。


1,カノウかのんという若者向けの作品を書く人がいる。


2,カノウかのんはSNSをいっさいやらない方針だった。


3,かのんの情報を欲しがるファンは多かったが、2のせいで個人的動向の情報が殆ど無い。


4,3の理由のせいで、実在するのか?と疑い出すヤツが出てくる。


5,雑誌などのインタビューの露出があるものの、本当に本人か?と疑い続けるヤツが続出する。(主にネットが娯楽の中心の若者達)


6,カノウかのん、時代に合わせてSNSを始める。


7,かのんのアカウントによる個人的な発信を確認することで、ちゃんと実在するんだと安心するヤツが続出する。私の隣の席の女の子たちもその人達の一人。


 まあ、こんな感じの話を聞いたんだけど、この話の流れ、さすがに多数派の話じゃないよね……。SNSのアカウントの有無で実在が疑われるなんて……。

 

                終


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

居たり消えたり 肥後妙子 @higotaeko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ