第2話 鈴音先生の不思議授業番外編!その②

 「この地球は物理界も魂界も牢獄として設定されているなら、

普通は魂界に居た方が過ごしやすそうですね」


「大多数の魂にとってはその通りだと思います。物理界は色々な制約に縛られます

から、ここで人生をやりきるのは簡単ではありません。非常に大変なので、大多数の魂は物理界に生まれたいとは思っていないですね。肉体の維持管理、人間関係、

義務や厳しい労働、本能の制御等々。ただ、魂のレベルを上げるには、この物理界で生きる事が一番の早道なのです。エクリプスは物理界で魂が簡単に壊れない様、

魂が転生する肉体の高次元界の知覚センサーをロックし、

肉体に入ると同時に過去の記憶も全て封印される様、設定しています。

そうしないと物理界の大変さから、魂が早々に生に見切りを付け、

自死を選んで魂界に帰還するケースが増えるからです。

何も知らない状態なら、大変かどうか比較する対象がありませんから、

こんなもんなのだ…と思うでしょう?。

それに高次元の世界を知らなければ、死は恐怖そのものになります」


「物理界で生きると何故魂は進歩するのですか?」


「豊かな生活しかしていない者に食べ物の有難みはわかりません。友人や家族の愛を知らない者が自己犠牲を知る事は出来ません。失って初めてその重要性がわかる事は多いのです。物理界では色々なものが簡単には手に入らないし、肉体を維持する為の衣食住を確保するのも大変です。本能を適切に抑え、誘惑にあがらう術も学ぶ必要があります。半面、努力の末にこれらを得られた時の喜びは、この物理界の方が

魂界よりも大きいのです。なので、物理界は大変ではあるけれども、ここでないと得られない経験も沢山あります。その為、あえて修行の為に物理界に積極的に転生を計ろうとする魂もいます。それに物理界での努力は魂にも刻まれ、後に転生した際には有効活用出来ます。芸術やスポーツ、頭脳に秀でた人々は、過去生でそれらを伸ばす努力を惜しまなかったのです。一方、物理的肉体を通して得られる感覚…食事、睡眠、性交、運動、性の違い、人間としての五感といった感覚にも独特な良さがあります。高度に完成した魂の中には、一種のバカンスを楽しむ為に物理界へ転生する者が一定数いるのも事実です。まあ、物理界は地獄ではあるけれど、最上層は

それなりに快適に出来ていますからね。最下層ともなると人間が空想で描いた

地獄以上の地獄だったりしますが…」


「魂は物理界にやってくる時、その環境を自分で選択する事は可能なのでしょうか?」


「高度に進化した魂は、かなりの自由度で生まれる環境を選択出来ます。

生まれる時代、国、両親、生活環境、自分の肉体、容姿等も含めてです。

魂の進化のレベルによって、その選択の範囲が変わります。

低レベルの魂にはそれ程多くの選択肢はありませんが、その範囲で自分に必要な

内容を選択し、物理界に生まれるのです。これを業(カルマ)と呼ぶ

人もいますが、いわゆる宗教論者が言う様な厳密な管理がなされている訳では

ありません。転生は進歩の為であって、罰を与える場ではないからです。

かつて物理界で一緒だった魂が、再び一緒に経験を積もうとして、

同時代、同じ場所に生まれる事も良くあります。

かつて親子だった者が、今度は兄弟姉妹や配偶者として同じ物理界に生まれるのは、

珍しい事ではないですね。逆もまたしかりです。あなたと天音の間には

とても大きな絆があり、前世でも姉妹でした」


「私たちを作ったエクリプスは、相変わらず魂の牢獄として、

鉱物資源採掘の奴隷として人類を管理しているのでしょうか?」


「鉱物資源採掘は既に終了しており、現在はその方面での奴隷として使っている訳ではありません。魂の牢獄としての機能は維持し、一定のレベルに達した魂は、

より広い宇宙の高次元界へいざなう事もしています。前より随分人道的ですね。

また物理世界が壊れない様に適時管理も行っています。現在の人類は知りませんが、

地球に降ってくる巨大隕石や小惑星はエクリプスが破壊していますし、この世界を実際に動かしている権力者達はほぼ全て管理下においています。彼らはエクリプスから委託され、現人類をコントロールしていますが、機械文明の発達が顕著になった

ここ2世紀程の状況に関し、エクリプスは彼らをあまり評価していません。

方向性があまりにおかしくなる様だと、エクリプスは再度人類をリセットして、

第8世代の人類を作る可能性すらあります。


その中でもエクリプスは、現人類における宗教政策に失敗したと考えています。

大半の宗教は、物事を善悪2元論に単純化する幼稚な世界観から脱却しておらず、

同族を宗教的悪と認定すれば皆殺しも厭わない。現在の第7世代の人類は、

精神全体のバランスがまだ不完全で、同族同士で殺し合って絶滅しかねない

レベルに留まっています。日本人の様に独自の静的合理性を持つ宗教を

構築した様な例外はありますが、それは少数派に過ぎません」


「この地球には八百比丘尼と第7世代の人類以外の人類は存在していますか?」


「存在しています。レプティリアン…爬虫類系から進化した地球の先住類と、金星と火星から逃れてきた人型人類がそれです。今から10億年くらい前は太陽の熱量が

かなり低く、金星は地球より生命の存在に適した環境でした。その時金星で繁栄していた金星人の系統と、10万年前に火星で核戦争を起こし、火星が居住不能になった為に地球に逃れてきた、火星人の系統ですね。彼らはいずれも高次元を知覚する

能力を持ち、テレパスも使える為、文明は現人類よりも遥かに進んでいます。

彼らの一部は地球の地下空洞に、また一部は人間の知覚を制御して、

見た目は現行人類と同じ様な姿を装い、人類社会に溶け込んでいます」


「彼らは能力はあるのに、何故表に出て来ないのでしょう?」


「それは150万年前に地球に来た異星人、…エクリプスの文明と科学技術の方が

遥かに進んでいるからです。まともに戦って勝てる相手ではないので、

今はエクリプスの指示に従っています。エクリプスは現在、地球上では

第7世代の人類を繁栄させようとしており、それを妨害する行為は許しません。

彼らは星間航行技術を持ち、異なる宇宙へ渡る術すら持ってます」


「異なる宇宙とはいかなるものなのでしょう?」


「それに関しては私も深くは知りません。行った事もないですしね。いずれにせよ、この宇宙はひとつではなく、いくつも存在しており、それぞれが異なる理で

動いているという事なのでしょう。」


「母上は今後の人類社会はどの様に進んでいくとお考えですか?」


「良い方向に行くか悪い方向に行くかは五分五分。いずれにせよ、これから先

10年くらいの間に激動期が訪れるでしょう。これは現在の世界を構築した、

キリスト教系資本主義文明が終焉を迎えるからです。人類はあまりに物質的な

欲をかき過ぎた。既に手の打ち様もない程、巨大になり過ぎた信用創造の

崩壊が訪れます。それはかなり大きな戦争に繋がるかもしれません。

それが今の人類文明の破局に繋がるか、再建へと繋がるのかはまだわかりません。

ここで破局に向かう様なら、エクリプスは現人類を発展性のない種族とみなし、

再度絶滅させて、第8世代の人類を創生する可能性が高いでしょうね」


母上の話は非常に示唆に富んだ、興味深いものでした。エクリプスによる人類の

創生と魂界と物理界の存在。そしてそれが一種の牢獄の様に存在し、魂の修験場と

して機能している事、現人類種はまだ非常に不安定な存在で、長期に渡って

種族の存続が計れるかどうか際どい存在である事、そうしてこの現人類が作った文明社会が今まさに崩壊を迎える瀬戸際にある事…。


「エクリプスは八百比丘尼を絶滅させようとは考えないのでしょうか?」


それを聞いた母上はにっこり笑って言いました。

「エクリプスも全てが同じ考えを持っている訳ではありません。八百比丘尼が一番の作品であったと考えるエクリプスもいるのです。既に数百人レベルに減った、

しかも女子ばかりの八百比丘尼を滅ぼそうなどとは、今は全く考えていませんね。

むしろ特別天然記念物の様に大事にしている感じです。

私にはエクリプスの知り合いもいますから、間違いないと思います。

見た目だけなら私たちと大きな違いはありません」


「私たちはこれからどう生きれば良いのでしょうか?」


「八百比丘尼は少なくとも日本という国の中では相応の影響力を持っています。

及ばずながらも日本という国の力を信じて、この世界を少しでも良くする様、

尽力する他ないでしょう。この世界を真の調和に導くのは、

私は日本だと思っています。万世一系の天皇陛下を世界中の人々が信奉する様な

時代が来た時、それは達成された事になるでしょう。その時の元号はきっと、

【天照(アマテラス)】になる様な気がします。その元号が発布される日、

皇居広場に全世界の首脳と民が集まり、陛下がこんな風にお言葉を述べられる…

(天照元年の元号発布にともない、世界に真の調和と平穏が訪れ、世界の皆が

一致協力し、助け合い、共に幸せになる事を願います)…陛下のお言葉が終わると

同時に、会場の全員が、『天皇陛下万歳!!』を唱和し、各国国旗と共に

皇室旗を打ち振る…。こんな情景を生きている内に見てみたいですね」


母上の話はとても難しい願望というか、実現の難しい空想の類にも思えます。

ですが不完全な人類は、本当に畏れ多いと思う存在を上に頂かない限り、

制御不能な暴走を起こして滅びかねない。一方でその頂きに立つ存在は、

力や権力、特定の宗教や思想に偏った存在であってはならず、

また万人が納得する歴史的な重みと権威を持っていなくてはならない。

その様な存在は今この時代、天皇陛下以外にいないのではないか?

私も改めてそう思うのでした…。


【天照元年】…いつかそんな時代が訪れると良いですね!





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鈴音先生の不思議授業番外編。鈴音先生へのインタビュー! 白狐姫と白狐隊 @hayasui

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