君はわたしの好きな人
西出あや
第1話 君はわたしの好きな人
今日は、ダンス&ボーカルグループオーディション番組の最終審査結果発表日。
ドキドキしながらテレビに釘付けになるわたしの横には、幼馴染兼最近付き合いはじめたばかりのハツカレ、愛斗がピッタリくっついている。
「ちょ……
「
「別に、浮気なんてするわけないし」
だって、物心ついたときには、すでに愛斗のことが好きだったんだから。
好きじゃなかったときのことなんて、覚えていないくらい。
「でも、このメンバーの中に推しはいるんでしょ?」
愛斗がちょっとだけ拗ねたような顔をする。
「い、いるけど……それはそれ、これはこれに決まってるじゃん。ほらっ、結果発表始まるから静かにして」
胸の前で両手を組み合わせ、一言も聞き漏らすまいと聞き耳を立てる。
結果発表が終わり、名前を呼ばれた人も、呼ばれなかった人も、みんなボロボロ泣いている。
「うぅっ……もう、みんな合格でいいのに。どうして不合格なんているんだろ。KAZUMAもYURIもみんなみんな超カッコいいのに……もう見られないなんて、信じらんない」
堪えきれず、わたしももらい泣き。
「俺がいるじゃん」
「知ってるよ、そんなこと」
「ねえ、なんか言うことないの?」
愛斗が、涙でぐちゃぐちゃなわたしの顔を覗き込んでくる。
「……愛斗が努力してる姿、ずっと見てた。だから、愛斗は絶対合格できるって信じてたよ。本当におめでとう、愛斗。これからも、ずっとずっと応援してるね」
テレビ画面には、泣きながら仲間と抱き合うMANATOの姿が大きく映し出され、テレビのこちら側には、私のことをぎゅっと抱きしめる愛斗がいる。
「ありがとう、里依。俺、里依の推しになれるようにがんばるから」
ごめんね、愛斗。
その願いは叶えてあげられそうもないよ。
だって愛斗は、わたしの大好きな人だから。
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