恋は始まり・・・

於とも

第1話 これは、初恋?

 猛勉強して、希望の高校に入った。

 この辺では、割と有名な公立の進学校。

 でも。入ってみたら。思っていた日常ではなかった。


 担任の先生と、どうもソリが合わない。向こうもそう思っているようで。

「僕も、人間だから。人の好き嫌いはしょうがないと思ってもらうと有難い。教育者にはなったけど、僕を良く思ってくれない生徒の為には、動きたくないよね。やっぱ、人間だから。」

その言葉に、外れ担任を引いたと、心底落胆した。


「君さ、先の見通しが甘いよ。この学校では、もっとガツガツ行かないと、取り残されるよ。現実は厳しいんだから。」

 新学期が始まって、最初の2者面談で、初っ端からそう言われた。

『はあ?見通しが甘い??まだ、ゴールデンウイーク前で、直接会話したのは、クラスでの自己紹介の時だけだよね??』

 私は、言い返す言葉を、飲み込んだ。

 進路について問われたから、答え始めたら、私の話の途中なのに、言葉を被せて来る。私の言葉は、聞く気が無いようだった。

「君の未来に、僕は希望が持てない。」

『こっちだって、こんな担任、願い下げだわ。』

何を言う気力も無くなった。


 二者面談の後、誰も来そうにない、実技棟校舎の非常階段の踊り場でに座って

「はあ?なに、あいつ。まじ担任ハズレ野郎だったわ。生徒の話を聞かないって、どうなの?!」

ちょっと大きめの声でつぶやいた。

「『僕を良く思ってくれない生徒の為には動きたくないよね』って、言うか普通?!ありえないわ!!」

そう愚痴っていたら、

「あ、担任山口だったの?」

と、上の階から声が降って来た。思わず、立ち上がった。

 

 驚いて、階段の上を見た。すると、ひょっこり手すりの陰から、男子が顔を覗かせてきた。さらりと前髪が揺れた。光の加減で顔がよく見えない。

「僕の兄貴の去年の担任。兄貴もボロクソ言ってたよ。」

はははと笑いながら、顔が引っ込んだ。そして、足音がこちらに降りて来た。

「3年生の担任降ろされて、1年に来たんだ~。君、災難だったね。」

 近付いて来た彼は、爽やかに笑いながら、毒舌だった。

 すぐ隣に立って、私を見下ろした後、階段に腰かけた。


「色んな人がいるよね。僕は、あれはあれでいいと思うよ。

きっと、すごく優秀な成績で人生来た人なんだよ。だから、自分の考えにそぐわない人は、受け入れない。……のかな?

そんな大人になららければいいだけじゃない?……と思う。」

彼は、私を見上げながら、そう言った。

 優しい口調。優しい声。さらりと流した前髪。清潔感のある服。

『あ、わたし、この人、好きかも……!』

 

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恋は始まり・・・ 於とも @tom-5

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