十一話「闇夜を駆ける女と男と光」

 スザクくん達と別れ家に帰り、定例会議に参加する。

『ふむ、今日は集結が早いな。では定例会議を始める。まずは各々聞いたと思うが、ラハンが勇者により敗走を余儀なくされた。これにより魔王領の結界は一つ空いた。また、ラハン自身は四天王の座を降りると宣言したがまだまだ余力を残し、次期四天王候補が居ないこととラハンを降した勇者の情報の共有の為、今後も変わらず定例会議には参加してもらう。』

『ダンナともあろうお方が敗走なんて、焼きが回ったか?』

『かもしれぬ。だが、我を倒したあの勇者は今後も力をつけるだろう。いずれ、皆の脅威になりうる。』

『ツヨイケイカイガヒツヨウ、コンゴノジョウホウキョウユウハヒジョウニジュウヨウ。』

「たしかに、ラハンさんが手加減したとはいえ負けるなんて、相当だもん。」

『ももよ、買い被りすぎだ。我は全力で挑み敗北した。相手はいずれお前にとっても脅威になりうるぞ?』

 ラハンさんの言葉は私なりに結構衝撃だった。勇者にそこまでの力をつけるのがいるだなんてかなり予想外だ。

『なんにせよ、ランスもフレアワームもももも、各人勇者には警戒せよ。特にももは所在が唯一割れている。いつ襲い掛かるか分からぬためしかと警戒するのだ。』

「はーい。」

『さて、それではラハン以外は報告をせよ。』

『ほいよ。ラハンのダンナの敗走によって王国は一週間ほどお祭り騒ぎしてたぜ。かなり油断していたが、俺はその間に次期魔王軍四天王候補だった吸血鬼の所へ行ってきた。が、スザクがその吸血鬼を隷従させていたからその訪問は失敗に終わった。』

『スザクか……あやつ、魔物使いとしての才があるようだな?』

『かも知れないな。流石にあいつ自身がかなり危険人物になっていたから修行を施したんだが、その間に俺自身がかなりあいつの事を気に入っていた。魔族に対して気に入られる才能は間違いなく持ち合わせてるぜ。』

『ほう。あやつはあやつである意味警戒が必要ではあるな。……さて、フレアワームよ、何か連絡することはあるか?』

『イイエ。トウクツダンガシンニュウシタモノノ、シカケニヨリゼンメツ。ブカガデムクマデモナカッタ。』

『そうか。やはり盗掘団と言った団体ならフレアワームの住処は見つけるようだな。勇者が見つけるのも恐らく時間の問題だろう。』

『ブカタチモソナエテジンケイノソウダンシテイル。コンゴモケイカイツヅケル。』

『うむ、励むが良い。……さて、次はももだが。』

「私の方はランスさんが話してくれたし、特に無いかな?強いて言うならスザクくんが探してる勇者はあと五人以下。その中にラハンさんを倒した勇者もいるみたい。」

『むぅ……それはスザク殿も中々に険しい戦いに身を投じているな……。』

『うむ、スザクもそうだが、他にも様々な人間がいるはずだ。今後も様々な見聞を広め報告せよ。……ではこれにて定例会議を終了とする。ラハンを倒した勇者についての仔細は聞きたければ聞くが良い。』

 こうして定例会議は終わった。ランスさんとフレアワームさんはラハンさんから勇者の話を聞き始めたけれど、私は興味がわかなかったので通信を切る。一気に静寂で家の中がほんのり寂しく感じた。さくらちゃんは今日は早めに眠ってしまったので尚更静寂感に耐え難い。とはいえ……。

「今は寝てる場合じゃないもんなぁ……。」

 ずっと外で何かの気配を感じていた。対処出来るかどうかはさておき、ずっと何なのかよく分からない気配を感じ続けるのは普通に恐怖を感じる。流石にそんな中寝られるほど精神は強くないので、正面口ではなく裏口から外に出る。左右を確認し、壁を蹴ってよじ登り、屋根に上がる。見渡すと、何人かの人影が見えた。

「誰だろ……?」

 つい小声で口に出してしまいながらもその人影に近付く。すると、その人影のさらに先にスザクくんたちがいた。

「ちっ、街の出口はあと少しだってのに!」

「無駄だ!我らセレスティア大聖教はお前達の悪事を既に見定めている!どこへ逃げようとも決して逃がさない!大人しく断罪されなさい!」

 どうやらセレスティア大聖教の人達がスザクくんたちを取り囲んでいるようだった。……あれ?そもそもなんでスザクくんは外に出てるの?あと、私が感じていた視線の正体はなに?

「お前達を断罪したあとは魔王軍四天王ももの討伐も行う!ここに時間を使う気はないのよ!」

 あ、バカ正直に教えてくれた。なるほど、私を監視してたんだ。……つまり、その監視してた人は私を見失って慌ててない?私は咄嗟にある考えが思い浮かんだため、小型照明灯と桃色の瓶を念の為用意していたバッグから取り出す。スザクくんたちから少し離れた場所まで移動し、照明灯に桃色の瓶を当てながら明かりを灯す。すると、桃色の光が私のすぐ近くの壁を桃色にした。そして直ぐに人影がこちらに近付き始めた。

「なんか思惑通りに動いてる……あの人達大丈夫なのかな……?」

 私は明かりを一度消し、街の外に出る。しばらくすると、セレスティア大聖教の人達が私を取り囲む。

「魔王軍四天王もも、今ここで神の名のもとに、あなたを討伐します!」

「神様がそれを頼んだの?だとしたらきっと世界が平和すぎて神様も暇なんだろうね。」

「うるさい!ここ数日でたくさんの事が分かったわ!勇者殺しのスザクはあなたと結託している!特に我々が断罪せんと対峙していた吸血鬼と共謀!あれを許す訳にはいかないし、仮に結託してなくてもあなたを討伐する義務がある!」

 なんてはた迷惑な義務だろう。私が迷惑だからやめて欲しい。……なんて考えていたらスザクくんたちも来た。あとセレスティア大聖教の人も増えた。

「わりっ、逃げてる最中に巻き込んだっぽい。」

「いいよ。」

「しかし妾に勝てぬ小兵共が、何故に勝てると思い込んだのやら。」

「にげて………たから……?」

「我々が街の人を巻き込まない配慮をしているのに、向こうは遠慮なし。……果たしてどちらが悪人なのでしょうね。」

 みんなやる気満々だ。折角だからみんなの実力も見定めてみよう。

「覚悟ー!!」

 そんな叫びとともに飛び出すセレスティア大聖教の人達。私はその動線から少しだけ外れてナイフを構え、二人ほど横っ腹を切り裂いた。

「うぐっ……!」

「あっ……?」

 一人だけ当たり所が悪かったのかそのまま腸が引きずり出されてしまった。ビックリした私は思わずそのまま引っ張ってしまったので、引きずり出された腸はそのままべしゃっと地面に叩きつけられた。

「くっ、やはり一筋縄ではいか……?」

 呑気に喋ってる人をスザクくんは切り伏せた。今更だけどスザクくんの持っている武器は刀だ。大昔に現れた異世界人によってもたらされた武器で、その作りの独特さ、金属としての強固さが売りとなっている。でもいくら強固と言っても魔族相手だとそれ以上に頑丈なのも多く、刃が細い刀はすぐ折れるので基本的に相性が悪く、嗜好品として所持する人の方が多い。でもスザクくんはそもそも人間相手が想定されているので選択としては正しいのかもしれない。

「すごいな、さくらからも弱点を聞いた訳だが、やっぱその弱点が露出する前に相手を倒せるんじゃやっぱお前に勝てるやつなんていないだろ。」

「どうかな……。でも驚いちゃった。スザクくんすっかり殺人に躊躇いがないもん。すっごく成長したね。」

「これでも罪悪感とかは一丁前に持ち合わせてはいるんだけどな……。そんな葛藤をしてる暇がありゃしねぇ。」

 そうボヤきながらまた新たに迫る人達を殺し回る。スザクくんはかなり冷静にしっかりと踏み込んで相手を斬っていた。ちゃんと相手を倒すための間合いを見誤らないようにしてて偉いなって思った。周囲を見るとララさん達も様々な能力を活かして無力化していた。

「ふぅ……私の力をここまで受けるなんて。ちょっと爛れてるんじゃないですか?」

「しずかに……してて……。」

「ちゅくっ……んくっ…………合理的に血を吸えるならたまになら来るのも吝かではないぞ?」

「……キュラ、やりすぎるとお前が必要以上に怪しまれるからやりすぎないようにしてくれ。」

 そう言いながら最後の一人を殺す。人数で言えば二十人くらいだった。私は無力化された人達の様子を見る。ララさんが無力化した人達はなにやら蕩けた表情をしていた。サキュバスの力で性的な快感を与えたのだろう。

「教徒とは清廉であるべきものだと思ってたんですが……。」

 ララさんの能力から鑑みるに、恐らく性経験が多ければ多いほどあの様になってしまうのだろう。とするなら、とんだ爛れた集団だ。

「ごしゅ……じんさまに……ひどいこ………としちゃ………めなの。」

 メリーちゃんはどうやら植物を自在に操る力があるようだ。街外れ、しかも植物がまぁまぁ生い茂ってる場所だったからか、メリーちゃんを囲むように木々が捻れていた。そして、何人かがその捻れる途中の木に縛られるような形になっていた。

「ふぅ。やはり聖なる者の血はあまり美味いとは言えぬな。もっと俗世に染まれ。その凝り固まった思考も血液も、もっと上質になるだろう。」

 キュラさんは普通に爪や牙で切り裂いていた。一部の人はそのまま血を吸われ、別の一部の人は普通に体が悲惨な事になっていた。飛散してる人もいた。私よりもやってる事が凄い。

「まぁ何はともあれこれで全部か。もも、こういうのって拷問するのがセオリーなのか?」

「うーん……私、拷問なんて見てるだけで痛くなっちゃうことした事無いんだよね。今までする理由も無かったし。なにか聞くの?」

「まぁそりゃ、キュラを付け狙ってた理由とか、今のうちにちゃんと理解すべきだろ。」

「主様……!」

「キュラは今までも自らを害す者のみを殺してきたと言っています。それを信じるなら、襲われる理由なんて本来無いはずです。」

 どうやらララさんの方が随分理性的だった。メリーちゃんは元々そういう気は無いだろうし、誰がどのくらい賢く動くのか何となくわかる。スザクくんは元々余裕が無いとしても、キュラさんは特に何も考えて無さそうだった。

「というわけで、起きなさい。」

 ララさんの言葉に反応した教徒は言われるがままに立ち上がる。

「あなた達はなぜキュラ……だと伝わりませんね。吸血鬼を狙う?分かるように説明なさい。」

 教徒は催眠?のようなものを受けているようで、体は円を描くようにフラフラしていた。

「吸血鬼……は……悪………。もとより…………滅ぼすべき……者………。特に………その吸血鬼………は……真祖の……吸血姫…………。人に………災厄を…………もたら………す……………。」

 面白い話がでてきた。キュラさんは真祖の吸血姫なんだ。

「……しんそ?吸血姫……って吸血鬼と何が違うんだ?」

 異世界人のスザクくんは勿論何も知らないので率直に疑問を投げかける。キュラさんは少しだけ腕組みして唸り、返答を行う。

「……上手く言語化出来ぬ故、齟齬がある可能性を先に詫びよう。まず真祖というのは、純血の吸血鬼の事である。吸血鬼も眷属、或いは生殖行為の行える相手を見つけて繁殖を行うのだが、有り体に言う吸血鬼で無い相手と子を成した場合、そこには吸血鬼以外の血が混じる。そういったものが無い吸血鬼のみの血で生まれる吸血鬼が真祖である。」

「へぇ。この現代にそんな純血の吸血鬼って生まれるものなんだね。」

「妾が生まれたのは数百年は前であるからな。そもそも現代では無い。そして、人間の尺度では吸血鬼を理解出来まい。」

 なるほど。一理ある。

「それで、吸血姫ってのは?ひめ、なんて呼ばれてるからには大雑把に理由はわかるけどな。」

「ふむ、主様は聡いから、恐らくその予想は当たっていよう。」

「キュラの住んでた建物は控えめな表現をしてもだいぶ立派な城だった。もぬけの殻になった城に住み着いたって可能性を排除すれば、そもそもそんな城に住むほど格式?の高い吸血鬼で、それに転じて吸血姫と呼ばれてたとかだろ。」

「ふむ、さすがは主様。大雑把と表現した部分はその通りである。純血、更に格式の高い一族での。吸血鬼内の一党を統べる姫だったのだ。昔は眷属も沢山いたのだが今はいない、ただの没落貴族ではあるがな。」

「まぁ色々あったんだろうな。」

 スザクくんは真祖や吸血姫の名前の意味だけ知って、あとは深く追求しなかった。他者の過去を不必要に掘り下げないのは好感が持てる。

「……して、この者たちはどうするのだ?今はララの催眠によりこうして生殺与奪の権利を握っている訳だが、生かせば厄介になろう。殺すか?」

「まぁ殺した方が手っ取り早いだろうな。メリーが拘束した奴らはもう殺したんだし。」

 実はしれっと催眠を受けていない教徒たちは殺しておいた。話の邪魔をされると不愉快だからね。

「でもセレスティア大聖教はかなり大きいし、女神セレスティアの怒りとやらを買ったらスザクくんは大変じゃない?たしか、強くなったのも女神の加護でしょ?」

「うーん……確かにそうなんだがな……セレスティアは多分女神じゃないぞ?」

 ………え?スザクくん結構爆弾発言してない?

「でもご主人様、女神セレスティアはこの世界を守護し、加護を与えた勇者をこの地に招き入れ、魔王を倒さんとする者ですよ?」

「いや、やっぱ違ぇな。あれは神じゃねぇや。」

「でも、スザクくんも加護を貰ったんでしょ?」

「……ちょっと待てな?俺があいつから聞いた話を必死に思い出して、俺の感じた違和感を言語化するから。」


 十数分待った。スザクくんは思い出した事を散り散りに紙に書いた物を見つめ、別の紙に何か書いていた。多分ぐちゃぐちゃだったのを整えてるんだろう。

「……よしっ!思い出した要素をまとめ、そこから俺が違和感を持ったところを列挙するぞ!」

「わー。」

 実は女神セレスティアとかどうでもいいので適当な返事をする。

「まず、あいつは自らを女神と名乗ってない。」

 いきなり核心をついた。

「ついでに、そいつが自称したのは死後の人間とかを別の世界に導く者……みたいなことだ。つまり、死んだ後の奴らを別の世界に誘導するだけだな。この世界を見守っているとも確か言っていたが、ララが言っていたみたいな守護は多分していない。」

「それって、女神セレスティアとしての根底を否定してません?」

「そもそも俺はセレスティアは女神じゃない根拠を言ってんだぜ?根底なんて否定されて当たり前だろ。」

 確かにその通りだ。私はつい感心してしまった。

「そもそも本当に守護してんなら魔王なんて出てこねぇだろうし。魔王込みで見守ってる……の方がしっくりくる。セレスティアは世界のために戦えみたいなことは言っていたが、人間のためにとは言ってなかったからな。」

「おも……しろい………ね……。」

「あと、女神の加護についても言葉を思い出しながら考えてみたら、『この世界で生きるための力を授ける』って言ってたんだ。確かに加護と捉えられるが、もっとシンプルに、この世界で生きられる程度の力でバランスを取る……の方が自然だ。」

「む?そうなると女神セレスティアは異世界より来たる人間に、この世界で生きられる程度の力を与えて、あとは関与していない可能性が無いかえ?」

「っていうか、関与してない。勇者がポンポン死ぬ世界だぜ?もっと力を与えるとかするだろ。つまり、セレスティアからすればそれも一つの栄枯盛衰程度にしか考えてない。」

「えーこせーすい?」

「……物事は栄えあれば滅びありみたいな感じだ。」

「なるほど。」

「つまり、セレスティアは女神としてこの世界を守護なんてしてないし、異世界人にはこの世界で生きるための力を渡してるだけで、別に勇者だとか、魔王を倒せだとか、そんなものは考えてない。多分異世界人側がその力の凄さにセレスティアを神と信じて疑わず、この世界の人間はいきなりそれなりに強い力を持った奴が現れるから勇者と思い込んで持て囃してるだけだ。人間だけが勝手に一人相撲を取ってるだけだな。」

「えぇ……人間ってバカじゃん……。」

「えぇ、愚かです。しかし、それも愛しいのです。」

 不意に、後ろから声が聞こえた。振り向くと、なんか妙に眩しいお姉さんがいた。なんか見た目がララさんとは違う方向でいやらしい。

「……セレスティア……だったな。」

「えぇ。赤羽鷹志さん。この世界はどうですか?」

「あぁ、すごい楽しい。確かにちょっとした油断が死を招くかもしれないが、前の世界よりずっと生きている。」

「楽しんでもらえているなら何より。そして、この世界の人間の愚かな行為をあなたはしかと見抜きました。恐らく、この世界で最も賢い人間でしょう。」

「いや、大昔からこのシステムがあるとしたら気付けないのも仕方ないだろ。気付く可能性がある異世界人が軒並みアホだっただけで。」

「えぇ。しかし、だからこそ愛しい。私を信奉する者も、愚かではありますが、信じる心を持つことは素晴らしい。私は皆を愛しています。」

「あの、それはいいんだけど、なんで現れたの?」

 私はそもそもの疑問を投げかける。眩しいから直視できない。

「私について考察をし、また力の剥奪を危惧していたのでこればかりは直接伝えた方がいいとなったので。」

 意外と友好的だなーこの人。

「安心しなさい。私はありとあらゆる存在の生き方を否定しません。復讐に手を染める、それを咎める理由も必要も私には無いのです。そして、私を崇める教団についても同様、信じるのは自由です。それ以上の事もそれ以下のこともない。何をなそうが自由なのです。私は愚かな考えに至る者も誤った行動を取るものも全て肯定します。皆を愛しているから。」

「……そっか。ビクつく必要がない裏取りが出来て助かるよ。」

「そして、もも。」

「えっ、私?」

「あなたの行い、そして罪。私はそれも肯定します。輪廻から外れたさくらの魂、それは世界は容認してはいけないし、私も本当は認めてはいけない異物です。しかし、あなたは愛の為に世界すら敵に回す覚悟を持っている。素晴らしいことです。愛の為に貫く心を私は肯定します。あなたも、今後も好き勝手にして、生き続けなさい。」

「……ふふっ。さくらちゃんが今の話聞いたらひっくり返っちゃうかも。」

 だけど、セレスティアに言われた事で何か憑き物が取れた気分だった。私は間違ったことをしているという事で、どこか後ろめたさのようなものを無意識に持ち続けてたのかもしれない。今こうしてハッキリと間違っててもそれを貫いていいと言われたことで、その後ろめたい気持ちは正しくて、だけどそれを気にしなくて良いと言われたような気がした。罪は罪として受け入れて、その上で堂々としていればいいんだ。

「……私の存在を誰かに明かしても構いませんよ。それでこの世界がより素晴らしいものになるなら。」

「言わねーよ。あんたに会ったなんて言ったらメンタルケアさせられそうだ。」

「私はもうボケはじめちゃって可愛そうとか言われそう。」

「………ん?ももって何歳なんだ?」

 セレスティアは笑いながら上空へ等速直線運動で飛んで行った。見えなくなると、あの眩しさも収まった。

「……変な体験をしたな。」

「そうだね。」

「それで、この教徒達は如何いたします?」

「あ、それなら私に任せて。」

 セレスティアが消えて闇が深くなった夜中。私はみんなを連れて家に戻る。折角だから面倒そうな敵は丸ごと消してしまおう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る