どうしても嫌悪される悪役貴族に転生した

@royuoki

転生に気づいたけど嫌われてるみたいなんでダンジョン行きます!帰ってきません!

第1話 恐ろしいじゃなくて恨めしいっぽいんだがなんでだ

 この身体の名前はアガート・フォッシル、フォッシル侯爵家の次男である。

 ゲームでは貴族を笠に着て殺人、傷害、窃盗、詐欺、恐喝など、奴隷や平民に好き勝手やり放題のザ・悪役といった人物であった。

 そんなアガート君も転生した時点では6歳、記憶によればメイドや下男への暴力くらいである。(まあそれも酷いとは思うが)


「失礼します、昼食でございます」

 ガンッ! と叩きつけられるように提供される食事。パンとスープのみの質素なものである。メイドはすぐに出て行ってしまった。


 なんかおかしくね? 悪役貴族ってもっとこう、恐れられるとかではないのか? アガート君のゲーム情報を思い出す。


 ゲーム開始は学園、12歳から

 アガート・フォッシル、フォッシル侯爵家の次男

 奴隷や平民に好き勝手やり放題との噂

 学園内で事件が起きたときには現場に登場し、戦闘になる

 特にフォッシル家絡みの悪事は全てアガートが仕組んだと思われていた

 学園を休んだと思ったら魔族側に寝返っての再戦


 やったことを考えると圧倒的に悪役なんだがなー。

 何が困るってアガート君は無口なのよねー。

 どうして人を傷つけるんだ! ......みたいな感じなのよねー、最後も皮肉げに笑って退場しちゃうし。

 考察の中には誰も信じてくれないから喋らなくなったのでは? という説もあったな。

 状況証拠や噂だと怪しいが、本人が喋らないから自白が取れてないんだよね。

 アガート君自身の記憶を思い出そう。記憶なくなるタイプの転生じゃなくて良かった。


 2歳頃は母に抱かれているな。濃い紫がかった長髪の妖艶美人だな、だいぶ若い、20くらいじゃないか? 貴族だとそんなもんなんかな。

 目が怪しく光ってー、こ、この顔は! 養豚場の豚を見る目をしている! 我が母ながらなんと冷徹な瞳を!

 それから気づいた頃には乳母になっていた。母は現在いない。3歳の頃に父に聞いたが、あの女の話はするなぁ! ってことでどうなったかはわからず。でも葬式してないっぽいよな、出ていったのか?

 4歳、母もいないし誰も親しくはされていない。癇癪だったんだろうな、気を引きたくて叩いてるわ。そしたら父に呼び出されてからのグー! ドアガチャ→ボコォの即死コンボで何も聞かれず。

 そっからはメイドや使用人の態度が無関心から攻撃的に変わってるな。アガート君全然喋んなくなっちゃって。


 ...これアガート君虐げられてるやつやん! ドアマットヒーローアガートやん!

 でも誰も説明してないから理由がわからん。あれか? 鑑定か何かして無能だったんか? ...そうだステータス!


 ――――――――――――――――

 名前:アガート・フォッシル

 レベル : 1

 クラス : G

 適性 : 闇魔法

 ――――――――――――――――

 スキル:

 【闇魔法(弱)】

 ――――――――――――――――


 おー、ほんとに出たわ。レベルはステータス系、クラスはステータスやスキルからのどのくらい強いかの指標で、Gはまぁ、ザコだな。適性は魔法や剣術など、伸びやすいもの、スキルは魔力によって発動できる何か。おっ、闇魔法使えるじゃん。(弱)ってことはダークボールなら使えるな。詠唱はー、覚えてるな。本で覚えたんだ頑張ったなアガート君。


 さて、これで何故虐げられるほど見捨てられたんだか。

 闇魔法は珍しいがいないこともないってところ、ガチャで言うところのレアくらいだな。闇魔法を覚えやすく、光魔法を覚えにくい、だったはず。

 うーん、適性の数か? 最大だと10くらいか? だからって増えないわけじゃないしな。寧ろカスタマイズできるから少ないほうがいいと思うが。嫌われてる理由としてはっきりこれだと言える原因がわからんな。

 可能性としては

 ・適性が闇魔法1つだけで少ない

 ・ステータスを詳しく見ることができ、将来性が低そう

 ・闇魔法自体が宗教的にNG

 どれもありそう。鑑定のスキル覚えて周りと比べてみるしかないかな。

 そう、スキルは覚えてやすさが変わるだけで覚えられない訳ではないのだ。アガート君も頑張れば光魔法だって覚えられる! まあ、正攻法だとめちゃくちゃ時間かかるけど。


 とにかく! 剣と魔法のファンタジー世界だ! どうせ命は軽いんだろうし! 強くなって生き残って、現代日本の生活を目指しましょう! なんか嫌われてるのはどうしたらいいかわからんから保留! ぼっちバンザイ!


 はあ、まずはスキルの確認でもしてみるか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る