3人と話し合いをする
さすがにあの三人の意見をそのまま鵜呑みにすることも断ることもできない。それにもし、鵜呑みにすれば僕はただでさえ、後戻りできない状況にあるのにもっと深い沼にハマってしまう。それにこれはもう人間としてかなりマズイ。
四人の女性を孕ませてしまうなんてことは……あってはならない。
只でさえ、普通に犯罪に近いことをしているんだし。
だけど、ここであの三人の言っていたことを無視すればどんな手段を取って来るのかも分からない。全てはオレの責任だが、オレだけに被害が来るなら別にいい。でも、今のオレは東江さんと結婚して夫という立場だ。東江さんい影響が出るのだけは避けなけばいけない。
なので、正直あの三人の願いを叶えるかは選択したくないというのが本当のところ。まだお金を要求してくれた方が全然解決できる可能があったのに…。
でも、どっちにしてもこれは話し合いの場を設けないことには何も始まらない。
それから数日後に個室があるお店に集合することになった。
それぞれ別に会う予定だったけど、同じ日に皆で話してもいいという感じだったので同じ日に集まることにした。
そしてちょうど今日がその日で目の前には白上さん、右斜めに常闇さん、隣に風真さんが座っている状態。
「まずは好きなものを注文してください。ここでのお代は全て自分が持つので」
そう言うと朝比奈さんが少し申し訳なさそうな顔をした。
「え、いいですよ。私が払うよ!」
それに対して泉美が張り合うように右手を高く挙げて宣言した。
「ぼくだって払うよ!」
最期に三葉先輩が余裕そうな笑みを浮かべながら口にする。
「恋美が払ってあげるよ」
ここで三人に払わせるわけにはいかない。こんな風に集まることになった理由も元をたどればオレの軽率な行動の所為だ。あれがなければこの三人がこんなことになることも、東江さんが子供を孕むこともなかったわけだし。
「いや、今回はオレに払わせてくれ。そうじゃないとオレの気が収まらない」
結局、少し揉めたもののここはオレが払うことでどうにか話はまとまった。そしてそれぞれ飲み物を注文して本題へと入って行く。
「それで朝比奈さん、泉美さん、三葉くんの話は理解しています。でも、これを叶えるわけにはいきません。さすがにこれ以上、罪を重ねるわけにもいきません」
これだけはちゃんと言っておかないといけない。さすがに全員を妊娠させて欲しいという願いをすぐに了承できる人間なんていないし、オレも東江さんと結婚している身だ。そうなった以上は他の人と体を合わせるような行為があってはならない。
「私じゃ魅力が足りないってこと?」
「そ、そういうわけじゃないですよ。やっと東江さんと結婚したんです。これ以上、大きな火種を増やすわけにはいかないと個人的に思っているんです。特に東江さんは妊娠してしまっている。その彼女に大きなストレスを掛けるようなことがないようにしたい」
東江さんに対しては「友人と食事に行ってくる」という話でずっと通している。来週にも一緒に暮らすことになっている状況を考えるとこの問題もちゃんとひと段落つかせたいところ。
「ぼくも慈子ちゃんにストレスを掛けるようなことはしたくないよ。だから、愛くんがぼくのことを妊娠させてくれたら全て丸く収まるんだよ」
「そうだよ。恋美も妊娠させてくれないといやだな」
「私も慈子ちゃんにストレスを掛けたくないのは分かってるよ。でも、私だって四十万くんにお願いできる権利はあるはずだよ」
朝比奈さんたちがオレに文句を言う権利は絶対にある。あんなことをしてしまったのはオレなんだから。しっかりと責任を果たさないといけないのは分かっているが、その方法がどうにも受け入れがたい。
もし三人の望みを叶えてしまったら……と考えるだけでもやばい。
「オレも一人の女性の夫となりました。それなのに他の女性を孕ませるようなことをしていいはずがありません。もし、東江さんと同じで妊娠してしまったというならもう諦めるしかありませんが、まだ三人は孕んでいません。オレ以外の男性となら好きにして構わない。オレはだめです」
オレの言葉に三人が納得するはずもなく、最初に動いたのは朝比奈さんだった。
「私が孕まされたいって言ってるんだから大丈夫!」
それに賛同するように泉美さんが話を始める。
「ぼくだって愛くんとの子供だったら大事に育ててるし、欲しいよ。愛くん以外の男の精子で孕まされるなんて絶対にいやだよ」」
最期に三葉先輩が意見を言う。
「恋美も四十万くんの子供が欲しいよ。その時の名前だってもう決めているだからさ」
この三人の勢いは本当にすごい。一人ずつでもかなり圧がすごいのに、三人同時に言われれるとこっちが圧に負けて首を縦に振ってしまいそうになるけど、ここで縦に振った時点で人生が詰むんだ。
「断ったら朝比奈さんを含めて、他の二人はなにかしようと思っていますか?」
この問いかけをしないといけない。僕は三人が良い人であることを知っている。でも、今回の三人は少しいつもの彼女たちと違うように感じる。
だからここでしっかりと尋ねておきたい。
「そんな気はないと言えばウソになるかな。私も慈子ちゃんを苦しめたくないの。だから、ここで四十万くんは首を縦に振って肯定してくれればいいの。そうすれば全て丸く収まるんだから」
「だけど、オレもさすがに肯定するわけにも「分かっています。でも、ここでぼくのお願いを断るのはやめてください」」
オレの言葉に被せるように泉美さんが否定してきた。
「そうだめ。そんなことをしたら慈子ちゃんが余計に負担を抱えることになっちゃうと思うよ」
「それはどういうことですか、三葉先輩」
「詳しいことは言わないけど、お互いにさ。恋美も慈子ちゃんのことを傷付けることは望んでいないの。だから、四十万くんの答えは『はい』と言えばいいと思うよ」
これは脅されているということか。
何とか穏便に済ませたいが……。
どちらに転んだとしても詰むだけだ。
今の段階で俺が取るべき選択肢はこれしかない。
「分かりました。三人の要求を飲みます」
この答えが今の自分にとって最善だと考えた。これを言うだけで本格的なことをいかなければいいだけ。なるべく『こと』が起こる日を後ろにどんどん先伸ばしていく。
そしてその間に良い方法を考えるしかないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます