これからの行動を考えよう
東江さんと結婚してから一週間が経った。でも、結婚したからと言って特段なにか変わる事はない。もちろん、オレと東江さんの結婚を知っているのは自分たちだけ。さすがに周りの人に結婚しましたなんて言えるわけもない。
そんなことをしたら東江さんにも影響を出かねないし、自分も確実にマズイ状況になる。
まだ東江さんとも同棲はしていないが、東江さんのお腹の中には子供がいることも考えるといずれはどこかで一緒に住むことになるだろう。こうなってしまった以上はオレのすべきことは全力で東江さんのことを幸せにすることだ。それだけにオレは人生を捧げればそれでいい。
今のオレは大学のラウンジの椅子に座りながらこれからのことを考えている。
「あれ
声が聞こえて顔を上げるとそこには…心配そうにオレのことを見ている、伊織くんがいた。
「あ、伊織くん」
「な、なにかあったんですか?」
「…どうして?」
「顔色が良くないですし。いつもの
自分では気づいていなかったけど、周りの人は変化に気付いちゃうものなのか。それに最近は前より大人しくなったというか、冷静な人間になった方だと思う。なるべく感情を顔には出さないように心掛けるようになっているし。
「オレは大丈夫だよ。ただちょっと考え事をしていただけで」
すると伊織くんはオレの隣に座った。
「四十万先輩がそういうならいいですけど、あんまり無理をしちゃダメですよ。僕だって適度に息抜きしながらやってますし。あんまり無理をすると体調を崩すことに繋がっちゃいますからね」
「そうだね、伊織くんにあんまり心配を掛けないためにも無理はしない」
そんな時、唐突に伊織くんは変な質問をしてきた。
「四十万先輩って…女性とお付き合いとかしたことあるんですか?」
「え、なんでそんな質問を?」
このタイミングで女性系の質問をされると心がドキッとしてしまう。だって今のオレは女性系の問題を色々と抱え込んでいるわけだし。
「た、ただ…気になっただけです…」
そう言って、伊織くんは顔を下に向けてしまったので表情は読み取れない。
「一応ありますよ」
そう答えると伊織くんは急に顔をあげて、オレに迫って来る。
「え…じゃあ、今お付き合いしている人っているんですか!?」
「い、いるというか…いないというか…なんというか」
さすがにここで東江さんと結婚したなんていうわけにもいかない。ここは適当に誤魔化すような感じが一番いいかな。それとも一応、結婚したというだけ伝えた方がいいのか。
でも今はあんまりオレと東江さんが接点を持っているというところも出来る限りは隠したい。東江さんが言う分にはいいけど、オレが言うことではないか。
「いるんですか!?」
「い、いや…ちょっと…」
「どっちなんですか!?」
「…いないです」
すると伊織くんはやっと引き下がってくれて、なぜか胸をなでおろしている様子だった。もしかしてオレみたいな奴に先を越されたくないとかそういう奴かな。
でも確かに…自分も少し前まで彼女を作ろうとか焦っていた時期もあったな。今はもうそんなことで焦っていたのが本当に懐かしい。
今の自分は…結婚してしまった。
それも全て自分の責任で東江さんや他の三人を巻き込んでしまった。
「…いないんだ…」
「オレみたいな魅力的ではない人間が結婚とかはまだ早いですよ」
しちゃったんだよな。
でも、問題はこれで終わりじゃない。逆にこれからが本番と言ってもいい。東江さんを一生支えていかなくちゃいけないし、他の三人に対しても償いをしなくちゃならない。
それから少し話していると伊織くんは同級生らしき子たちに呼ばれてどこかに行った。一人取り残されたオレはため息を吐いて、未来に対して不安を抱えていると携帯にメッセージが届いた。
メッセージは三葉先輩からだった。
『ねぇ…今度会ってよ。ちょっと話したいことがあるの』
おい、これはただ…何もない。東江さんのことがあったから誰かに呼び出されると嫌なことが思い浮かんじゃう。いやこれもオレの責任だからと思っているとまたメッセージが入った。
今度は泉美さんからだった
『急で悪いけど、ぼくと今週どこかで会ってくれないかな』
これはどういうこと。まさか何かあったわけじゃないよね。これ以上、大きなことになるのだけは避けたいところなんだけど、ただでさえ、さっきの三葉先輩のメールで頭がやられそうなのに…。
そして予想はしていたけど、また他の人からメッセージが送られてきた。誰が送って来たのかは見なくても分かって。でも、もしかしたら違うかもしれないという一億分の確率に掛けてメッセージを開いた。
もちろん朝比奈さんからだった。
『お疲れ様。予定あれば今度会えない?』
もういやだな…。
そしてその場でオレはそれぞれ別日に会った。でも、言われたことは同じだったのだ。
『妊娠させて欲しい』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます