第46話:藤沢 詩織

 あの日、両親との交渉が終わって、私はすぐにパパに電話をかけた。

 「パパ! お父さんもお母さんも、ちゃんと認めてくれました。これからもパパと会えるし、電話だってできます!」


 受話口の向こうで、パパが少し笑った気配がした。

 「そうか。よかったな、詩織ちゃん」


 胸が熱くなった。ずっと怖かった。もうパパに会えなくなっちゃうんじゃないかって。

 だからこうして報告できることが嬉しくてたまらなかった。


 その時だった。

 「なあ、詩織ちゃん。今度……お父さんとお母さんと、パパと詩織ちゃんの四人で出かけようか。ダブルデートって事で」


 「えっ……!」

 驚きで一瞬声が裏返った。

 パパは続ける。


 「きっと、お父さんとお母さんは今回の詩織ちゃんの要求は “仕方なく”認めた部分もあると思うんだ。だからこそ、今度はみんなで顔を合わせて、わだかまりが残らないようにする必要があると思う。特にお父さん―亮さん―の立場をちゃんと尊重するべきだ」


 私は言葉を失った。

 ——パパって、本当にそういうことまで考えてくれてるんだ。


 「……パパ……」

 胸がじんわりと温かくなる。

 私のわがままを認めてもらっただけじゃない。お父さんの気持ちまで考えてくれてる。


 数日後、パパは自分からお母さんに電話をかけ、さらにお父さんにも話を通してくれた。

 「これまで亮さんに内緒で、三人だけで誕生会をしてしまっていた。その件のお詫びを兼ねて、一度私から皆さんをご招待したい」

 そういう意味も込めて、舞浜ディスティニーランドで遊ぶ計画を立ててくれたのだ。


 お母さんも、お父さんも、喜んで賛成してくれたとパパから連絡があった。

 私は受話口を握りしめながら、声を抑えきれなかった。

 「やったぁ!」


 ——夢みたい。

 だって、パパと、お父さんと、お母さんと、私。

 四人で一緒にディスティニーランドなんて。

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