唐揚げ哀歌

馬渕まり

唐揚げ哀歌

 高校生最後の練習を終え、部活の帰路に着く。三年間使い倒した道具が、今日は少しだけ重い。昨日は後輩たちと飯に行ったので、少し早めに上がる。


 空には入道雲。遠くのグラウンドからは、野球部の声が風にのって聞こえる。
 

 時刻は五時過ぎ。暑さの峠は越えているが、八月の日差しはまだまだ眩しく、じりじりと肌を焦がす。少し腹が減った。


「よう、今帰りか?」
 

 振り向くと、小中からの腐れ縁、但馬がいた。自分と同じように部活道具を抱えている。
「ああ。雷華でラーメン食うか迷ってたとこ」
「雷華か、いいな。俺も行くわ」
 

 頼みもしないのに勝手についてくる。学校前の並木道は、蝉がうるさいくらいに鳴いていた。


「夏、終わったな。明日から受験勉強か」
 

 大盛りのラーメンセットをすすりながら、但馬がぽつりともらす。
入れすぎたニンニクのせいか額に汗が滲んで見える。

「ああ、そうだな」
 

 気のない返事に、但馬が顔をあげた。


「どうした? 失恋でもしたか?」


「いや、気になる奴はいるけど、気づきもしない」

 但馬が白い歯を見せてにかっと笑う。日焼けした肌とのコントラストだ。


「お前の気持ちに気づかないとは、相手は男を見る目がねぇな」


「まぁ、そうだな。……あと、私は女だけどな」


 首振り扇風機の風が二人の間をさっと吹き抜けていく。

 「悪い、悪い。これは詫びだ」

 相手を見る目のない男が、私の皿に唐揚げを、ぽんと置いた。

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