第2話 わたしに恋を教えてくれてありがとう


君がいつになくニヤニヤしてるから、

冗談混じりにどうしたの?って聞いたら


「いや、実はカンナと付き合うことになってさ」


なんて嬉しそうに笑って。


どうしてか、胸にトゲが刺さったみたいな

感覚になったんだ。


そこからの記憶はなくて気づいたら

自分の部屋にいた。


どうして、わたし

こんなにショックを受けてるんだろう。


翔平は今までもこれからも大切な親友で。

カンナだって大事な幼馴染で。


ずっと応援してた2人が恋人同士になって

嬉しいはずなのに、こんなにも胸が苦しいのは

なんでだろう。


スマホの画面に雫が落ちる。


その画面にはカンナからのメッセージ。

『告白、大成功!!

失敗したらどうしようってドキドキしてたけど

付き合えて夢みたい!!

美千佳、応援してくれてありがとう!』


涙が溢れて止まらない。

翔平の笑顔が、優しい言葉が、トゲとなって

心を突き刺す。


「そっか、わたし翔平のこと好きだったんだ」


自覚すると切ない想いが胸を締め付けて

笑い合い手を繋ぐわたしと翔平がよぎる。


ずっと、君の隣にいたかった。


でも、それはもう叶わない願い。

初恋は叶わないっていうけど、

あれは迷信じゃなかったんだ。


ハハハって笑おうとするけど

うまく笑えなくて、それでまた悲しくなって

涙が溢れる。


これは確かに恋だったって涙が証明してくれた。


もう、カンナと翔平と一緒に過ごせない。

君達といるとこの想いが溢れて、

傷つけてしまいそうだから。


もう一緒にはいられないけど

わたしはいつだって2人の恋を応援してるよ。


そんな想いとは裏腹に涙は止まらず

嗚咽が部屋に響き渡る。


好きだった。

大好きだった。


その想いがわたしを苦しめて。


わたしはギュッと膝を抱きしめる。


失恋ってこんなにも苦しいんだな。

皆すごい。こんな痛みに耐えて

何事もないような顔をして笑ってるなんて。


だけど、時間が経てばこの想いも消えてくれるよね?

2人の幸せそうな姿も消えてくれるよね?


だから、今だけは泣かせて。


あぁ、きっとこれは翔平からの贈り物なんだ。

恋を知らないわたしへ、失恋と恋という名の

贈り物をくれたんだね。


わたしに恋を教えてくれてありがとう。

失恋を教えてくれてありがとう。


この経験がわたしを成長させてくれるはずだ。

だって、そうじゃなきゃ神様は試練なんて

与えないはずでしょ?


いつか、この気持ちが消えたとき、また会おう。

そして、3人で笑い合おう。


だから、少しの間だけ……バイバイ。









(終わり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る