5.

 商店街に入り、人通りが多様化した。


 スーツ姿の男性や店前で声を出している店員。


 私達と同じように寄り集まりながら帰っている学生たち。


 赤ら顔で愉快そうな大人達一行など。


 そして顔を寄せ合って囁き合う男女。


 思春期真っただ中の女子一団は例外なくその光景を見ては声を抑えた絶叫を上げる。


「いいなぁ~共学の子達は」

「そだよね。羨ましいわ。

 このままアバンチュールも迎えずに、バージンのまま年を重ねていくのね、私達」


「青春だなぁ~」


 チームメイト達は口々に言い合いながら、頬を染め熱のある視線でその男女を見つめる。


 ぎゅっと手が強く握られたような気がして結衣を見ると、結衣も呆けるようにその光景を見ていた。


 その横顔は街頭やお店の光に照らされて少し艶やかに染まり、好奇心とは違う熱量がジワリと伝わる。


 掌に伝わる握力も強まり、若干熱い。


 その横顔をみて、急速に汗が退き湿り気がどこか肌寒さを増長させた。


 繋いでいる手も急激に湿り気が気になり始め、さらりと乾いていく自身の掌にペタリと重なる感触が居心地が悪かった。


「憧れるね、ああいうの」


 結衣はどこか控えめな声でこちらに囁く


「そ、うだね」


 ね!っと同意を求めるようにこちらにほほ笑む結衣の表情に索漠とした思いになりながらも、精一杯の笑みを浮かべた。

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君だけを見つめて 只石 美咲 @Misaki-Tadaishi

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