4.

 部活終わり。


 いつものように心地よい疲労感が全身を覆う。


 体操服からいつもの制服に着替えて、じんわりと制服が熱さを籠もらせる。


 まだ、太陽は夕方の日常を燦燦と照らし、額にジワリと汗が下る。


「アッツイネ」

「そだね」

「動いた後にまだ暑いと萎えるどころの話じゃない」


 口々に言いながら部活仲間でそろそろと歩いて帰る。


 夏の余韻がコンクリートの車道などからムシムシと温い風が流れ去る。


 到底密集して歩いていると人の体から発せられる熱が暑苦しい。


 特に運動した後の体は膨大なエネルギーが発散されたあとだから尚更。


 だから素肌で絡めるように手を繋いで歩くという行為は苦痛を催すことだと普通なら思う。


 だけど、違う。



 掌に合わさる冷たい熱と茨の弦のように絡まる指が私の感覚を消失させていた。


 腋や額、胸元などが体温の上昇と鼓動の加速を察知して速やかに汗を放出させる。


 手も例外ではなく、結衣の掌と一体化するように細やかな湿り気を感じた。


 私が部活を続けている理由の1つ。


 それは結衣と手を繋いで帰れるから。


 それまでも結衣と学校帰りなど一緒に帰れるときはこのように手を繋いで帰っていた。


 どちらが手を繋ごうと言ったのか忘れてしまったけど、どちらでもいいこと。


 しかしそれが中学校入学のタイミングで部活、それもバスケ部という帰りも遅くなってしまう部活であったため、私は勢い込んで結衣と同じ部活に入部届を提出した。


 体験入部や説明会に顔を出していなかった私が部活始動日に顔を出した時は顧問の先生や先輩方は対応に困っていたけど、部員が増えることに喜ばれたためすんなりと馴染むことができた。


 初めは不安もあったけど、不安を乗り越えた結果今こうして幸福の温もりを傍受できているのなら当時の自分を大いに褒めたい。


 ときより歩いていると肩が触れ合い、柔らかい感触とともにシトラスの香りがこちらに流れてくる。


 そのたびにこちらの肩を押すように結衣が肩をぶつけてきて、ハニカムように笑みを浮かべる。


 いたずらが成功したことをほくそ笑む姿は可愛らしく、こちらの表情がつい緩んでしまう。


 皆がいる中で二人だけの世界で会話をしていることに、私は言い知れぬ幸福感が全身を包んだ。

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