3.

 引っ込み思案の私をいつも結衣が引っ張っていった。


 結衣が居なければ友人はおろか、バスケ部だって行っていなかっただろう。


 どんな時にも結衣は私のそばで世話を焼き、外の広い世界に連れ出してくれた。


 わたしの世界は結衣で創られて、結衣によって完結していた。


 それでも最初の頃は自分の感情が邪なものではなくて友情や親友を大切にする感情であると思っていた。


 しかし小学校高学年の頃に徐々に自分が結衣に向けている感情がどこか周りとは違っていることに違和感を持ち始めた。


 言葉では言い表せないドロドロとして、汚してしまいたい、無茶苦茶したいという幼稚で発展途上の感情が胸に渦巻いていた。


 当然にこのような感情を誰かに、特に結衣に相談できることではないと判断してさらに自分の中で醸成していった。


 そしてそのやり場のない鬱蒼うっそうとした貪欲なやり場のない感情をどうにかして発散しようともがき苦しんでいた時に、無意識に手が自身の体を撫でるように動かしていき、お風呂場や学校での結衣が何故か蜃気楼のように頭の中で再現されて熱くなった吐息が自然と口からでた。


 吐息のリズムは徐々に加速していき、ある一点の所で深い多幸感と閃光のような心地よさが全身を駆け巡り、それまでの感情は平然とゆったりと平穏が訪れた。


 私はそれが初めはどうしてなのかわからなかった。


 だけど徐々に自分の体の事や感情の事を客観視していくことで自分の人とは違う結衣への想いにたどり着いた。


 その時点で結末を悟った。


 この感情が必ず幸福な結末を迎えることはないと。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る