【第4話】性別カモフラージュとしてのガナり声
所謂ロックンロールとかパンクロックという音楽に目覚めて、自分もロックスターになりたい!という願望をはっきりと持つようになったのは中3の頃だった。
当時黎明期だったYouTubeやニコニコ動画、数多の音楽雑誌であらゆるロックスターの姿を目にしては、音楽そのものに留まらず、"彼らの存在"にも強烈に憧れていた。
雑誌や映像の中の彼らが手に持つギターに始まり、弾き方や歌い方、身に纏うファッション、あらゆるカルチャーをルーツとしたスタイルそれら全て、頭の先から足の先まで真似したいと思った。
しかしそう思う時は決まって、"憧れの対象"はもれなく"男性のミュージシャン"に限定されていた。
様々なメディアを通して女性のミュージシャンたちを目にしても、"彼女たちをロールモデルにする"という選択肢はハナから存在せず。
この人可愛いな、美人だな、みたいな感想ならば万人がそう思うのと同じようにごく普通に抱く。けれども真似をしたいとは微塵も思わない、ひどいことを言えば、自分がイメージする「かっこいい」の定義には、彼女たちは全く当てはまらなかった(今でこそそんなことは思わないが)。
なぜなら「自分は女なんだから女の人を真似する」という発想が1ミリもなかったから。自分が女として生まれたことを、事実として認識はしても、やっぱり受け入れることはできなかった。
十代半ば、第二次性徴を迎えて自分が生物学的に女性だと思い知らされるたびに何度も心が折れた。声変わりなどするはずがない、誰が聞いても「女」の声を発する自分をひたすら嫌悪した。その頃人生で初めて組んだバンドではボーカルを担うことになったが、地声を一切封印し"ガナる"という方法で、どうにか性別をカモフラージュしようと考えた(歌声を聴く限りは男性、という状態を目指すようになった)。
実を言えばガナリ声は喉に相当な負担がかかる。上手いやり方を習得することができず、今まで何度も喉を壊した。正直やりたくてやってたわけじゃなく、最初は致し方なく始めたことだった。極限まで自分の中から「女性らしさ」を排除して、性別をぼかすために。
もし男性として生まれていたら、私はガナる歌い方なんて、まあ選択しなかっただろうなと心底思う。
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