第2話 いらっしゃいませ

午前11時喫茶店が開店して一人のお客さんがやって来た。


「いらっしゃいませー。」


「いようっ!お二人さん。いつもの頼むよ!」


「ヤスさんいつものコーヒーセットですね?かしこまりました。少々お待ちください。」


ヤスさんはこの商店街の会長さんで名前は倉田安茂くらたやすしげだ。

奥さんと娘さんがおり、娘さんは町長をしており奥さんは商店街の婦人会の長だ。


「いやー母ちゃん達がいるから俺の癒しの場所はここしかないんだよなぁ」


「奥さん怖いですもんね。」


「ほんとだよもう...。」


「だめですよぉ?奥さんの悪口は〜?また怒られちゃいますよ?ゆうちゃんも!」


「悪口じゃないって、ただあの人には頭が上がらないと言うか固まってしまうと言うか。この商店街の男はみんなそんな感じなんだよ!」


「そうだぜぇ?モカちゃん。あんまボウズを叱らないでやってくれや。旦那である俺ですら怖いんだからよw」


男性が少ないこの世の中のせいか、基本男は女性に弱い。


「わかりました。聞かなかったことにします。フフッ」


モカ姉が冗談を言いながらコーヒーセットを作り終えていたのでヤスさんに提供した。


「お待たせしました。コーヒーセットです。本日のセットはハムエッグになります。」


「おぉ!うまそうだな!...気を付けろよ?ボウズ。モカちゃんと結婚していつ怖くなるかわからないからな!」


「!!??ヤ、ヤスさん///何言っているんですか!ゆうちゃんに変なこと言わないでください///・・・奥さんに報告します!」


「や、やめてくれよ....。」


顔を赤くしたモカ姉が真顔になりヤスさんを脅していた。

モカ姉をからかうと奥さんに報告されてしまうという事を知ったので気を付けようと思った。


ヤスさんが帰って12時になる頃に智輝が手伝いに来てくれた。


「そろそろ昼になる頃だから手伝いに来たぜ。こっから地獄だからな。」


「あぁ。助かるよほんと。」


「ありがとうね。智輝君。」


「あぁ、それとヤスさんにさっき会って、ヒロが手伝いに来るってさ。」


「あ、すごく助かる。」


ヒロと言うのはヤスさんの娘さんの子供で俺と智輝と萌絵と同い年の幼なじみである倉田広和くらたひろやすのことだ。


12時ちょうどの地獄の時間にヒロが来てくれた。


「どうも〜。」


「ヒロ君、よろしくね。」


「おっすヒロ!頑張ろうな!」


「ヒロ、ありがとな。」


「モカさんよろしく。智輝とゆうもよろしくね。」


・・・・・・・。


12時を過ぎた現在、店はかなりのお客さんで溢れていた。


「智輝く〜ん♡注文おねが〜い♡」


「おう!待っててくれ!」


「ヒロ君♡お会計お願いね♡あとこれお駄賃♡」


「ありがとうございます。お会計は...。」


この商店街周辺にある会社のOLさん達が昼休みになり一斉にこの喫茶店にやって来たのだ。

ナポリタン等の軽食を扱っている為か、皆昼に食べに来てくれるのだ。

モカ姉の作る料理は美味いからとても人気なのだ。


オーダーとレジを智輝とヒロがやってくれて、食材の準備と盛り付けを俺がやり、モカ姉が全力で調理することになっている。


「すまない、ゆう!料理運ぶついでにオーダーを頼む!」


「わかった。」


たまに現場からヘルプを頼まれて俺もキッチンから出ることがある。


「お待たせしました。アイスコーヒーとナポリタンです。」


「えっ!?やった!ゆう君が運んでくれた♡♡♡今日はラッキーよ!♡」


「お待たせしました。ご注文はいかがなさいますか?」


「ゆ、ゆう君...♡んっ、ん。サラダセットをお願いします♡」


「かしこまりました。少々お待ちください。」ニコッ


「♡♡♡」ジュン///


急いでキッチンに戻り俺でも作れるものを作ってモカ姉の負担を軽減する。


男性のお客さんは今の所無く皆軽食で済ましてくれるので助かるがやはり忙しい。


・・・・・・。


時刻は13時30分になった頃


「ありがとうございました〜。」


お客のラッシュが無くなり男性のお客さんや親子でのお客さんだけになっていた。


「お待たせしました。コーヒーとサンドイッチになります。それとオムライスです。」


「わっ!ママ!!イケメンだ!イケメンがいるよ!!」


「すみません娘がはしたなくて....♡」


「いえいえ、お嬢さんも可愛いですね♪ごゆっくりどうぞ。」


「♡」


「♡♡♡」ジュン///...ピチャ


1番動き回っていた智輝とヒロに休んで貰いながら俺はオーダーを聞いて、モカ姉は少し休みながら調理とレジをやってくれていた。


「お待たせしました。アイスコーヒーです。」


「ありがとう。...今日も大変だったみたいだねゆう君。」


「ええ、今日もたくさんお客さんが来てくれまして、今は智輝とヒロが休憩してますよ。」


「そうか。まぁここの料理とコーヒーはとても美味いし、君達がいるから仕方ないな!はっはっは」


「確かにモカ姉の作る料理は美味しいですもんね♪ではごゆっくりどうぞ。」


ピークが過ぎた頃に来てくれる男性のお客さんと会話しつつ俺も軽く休憩をしていた。


そして14時になる頃にお客さんがいなくなり店を閉じることにした。


「お疲れ様でした♪ ナポリタンを作ったから皆で食べましょ♪」


「お疲れ様でした!」


「お疲れ〜。」


「モカ姉もお疲れ様。」


「「「「いただきます!」」」」


疲れと空腹のスパイスがかかったモカ姉のナポリタンは最高だ。


「皆、次はいつ入れる?」


「えっと、来週かな。」


「だな。今週は大学に顔出さなきゃいかんしな」


「モグモグ」


「わかった。そう広告しておくわね♪」


何故か俺達が接客すると売上が良いらしくモカ姉は毎回広告を出しているみたいだ。

今日の営業だけでもかなりの黒字だったらしい。


15時を過ぎた頃、いっくんが帰って来た。


「にいちゃ、ねぇちゃただいま!」


「お帰りなさいいっくん♪」


「お帰りいっくん。」


いっくんが帰って来て早々モカ姉と俺に突っ込んできた。


「よお!泉。」


「...おっす」


智輝とヒロがいっくんに近付く。


「あぅ...にいちゃ...」ササッ


いっくんは俺の後ろに隠れてしまった。


「こらー!いっちゃんをいじめるなー!」


「そうだ!そうだ!」


「うるさいぞバカ姉妹!」


智輝と騒いでいる二人の女の子がいる。

二人は智輝の妹で双子の奈美なみ美奈みなちゃんだ。

小学3年生でいっくんに対して姉の様に接している。


「兄様、いっくんをいじめたのですか?・・・どうなのですか?」


「ぼ、僕はただ挨拶しただけだ!いじめていない!そんな目で見てくるな!」


ヒロが怯えながら相手をしている女の子はヒロの妹で奈美と美奈の同級生で名前は日葵ひまりちゃんだ。

ヒロは怒りで光の消えた目で見てくる日葵ちゃんに対して恐怖を抱いている。


「奈美ちゃんと美奈ちゃんと日葵ちゃん学校お疲れ様、手を洗ってうがいも忘れないでね。」


「ゆうにい!ただいま!」


「ゆうにい!ただいま!」


「ゆう兄様、ただいまです。」


「「「「手を洗ってきまーす!」」」」


小学生組が仲良く手を洗いに行く姿を見ながらコーヒーを一口飲んだ。





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