砂の水槽
二ノ前はじめ@ninomaehajime
砂の水槽
その公園には砂場があった。
安全性を
小さな公園を囲う
水槽を連想したためか、主に魚を題材にした。上向きの尖った頭部を描き、流線形を
翌日だった。
全ての魚がそうだった。少し尾を描き
多少は驚いたはずだ。ただ子供だったから、受け入れるのは早かったと思う。靴の裏で踏みつけると、魚は急旋回して離れた。慌てふためいた動きが面白くて、何度も繰り返した。その遊びに飽きると、また木の枝で新たに仲間を増やしてやろうと思った。あまり複雑な絵は描けなかったから、題材は限られた。
蛇、オタマジャクシ、
砂場の水槽を見下ろしていると、魚や蛇が同じ軌道を描いていた。主に円運動で、複雑ながら法則性が感じられた。その動きを目でなぞる。何度も繰り返される。文字の
彼らの動きは、こう訴えていた。
『あしをかいて』
意味を理解したとき、
砂の上を、一匹の魚が跳ねた。
それから公園には行かず、小学校高学年になる頃には市の再開発で潰れていた。
時々思い返す。もし足のある動物の絵を砂の上を描いていたら、あの砂場から出たのだろうか。
その生き物は外に出て、一体何をしたのだろう。
砂の水槽 二ノ前はじめ@ninomaehajime @ninomaehajime
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