第5話 知らない
夜の10時に俺は標的のギャングのアジトを見渡せる場所までやって来た。ギャングは表面はただのIT企業なのだがその裏は犯罪者どもが集まっているゴミ集団だった。俺はそのビルの向かい側の建物の屋上で狙撃の準備をしていた。
「それで……なんで今回もお前がいるんだ?」
「……」
何故か今回も"ベルセルク"が付いてきております奴が言うには俺と同じ理由で連れてこられたらしいのだ。
「まぁいいや。ベルセルクはビルの中で奴らとドンパチしといて」
「うん……」
「なんで元気ないんだよ」
「いや……昨日のこと覚えてる?」
「昨日がどうした?」
「やっぱりなんでもない……」
そのまま"ベルセルク"はビルの中に入って行くと早速ドンパチし始めた。
「それではボスを探して撃つとしますか」
俺は小型大容量電源を下ろしスナイパーライフルをほふくで構えた。威力の調整に入り出力が上げていきエネルギーが溜まるまで待つことにした。
「早く出てこないかなぁ〜」
そんなこと言ってると窓際の方にギャングのボスらしき人物がいたので試し撃ちをすることにした。
「風向き、風速……全て問題なし」
俺はスコープから覗いて標的に向けて一発放った。銃口から出たあとはソニックブームが起こり風圧がものすごかった。そしてボスの股間に命中した。謎の液体がだだ漏れてもがき苦しんでるのがよく分かった。
「こいつは強力だな」
銃身は焼けごけて少し溶けていた。
「交換しなきゃだな」
俺はすぐさまに熱で溶けた銃身を交換し再充電を始めた。俺の周りは能力によって相手から見えてないためこのまま射撃を続行した。
「今度は……脚かな?」
次にボスの脚を狙って撃った。血は飛び散らず焼けて塞がっていた。
「じゃあ腕に撃つとしますか」
銃身を交換し今度は腕に向けて撃った。そしてギャングのボスはだだの肉ダルマとなっていた。
「なんか言ってるけど頭でも撃つか」
また交換し最期に頭を撃って標的を排除した。
「ベルセルク。こっちは終わった」
「了解。あとで合流しよう」
「流石に能力の使い過ぎは頭痛が痛くなるな」
俺はこの場を後にしようとしたらまだ生き残りが後ろに行た。
「なんだ? 仇討ちか?」
「親父さんを殺した貴様を許すわけにはいかん!」
そう言って奴は背中に背負っていたデカいハンマーを取り出した。奴の身長の3倍ある巨大なハンマーだった。
「身体能力の向上か……?」
相手がどんな能力が分からないためどのように攻撃をするのか待ってみた。
「来ないならこっちからだ!」
そう言ってハンマーを振り下ろしてきた。俺はスナイパーライフルとバッグを背負い避けることに成功した。
「充電はまだか……」
レールガンの充填が終わるまで俺は回避に専念することにした。能力を使いたかったが少し遊んであげることにした。
「避けるんじゃねぇぇぇ!」
敵は重いハンマー乱暴に振り回してた。だが奴は単調的な攻撃ばっかですぐに見切ることができた。レールガンの充填ももうすぐ終わる。
「あと少し……」
「てめぇ……俺の能力が身体能力を上げるだけのものだと思ってるだろ?」
「そうだが? 違うのか?」
「違うね! 俺の能力は触れたものの重さを変えれることさ!」
「へぇ〜」
なんか地味な能力の持ち主だったようだ。その時ちょうどレールガンの充填が終わった。
「君と話す時間はもうないみたいだ」
「その武器は使わせないぞ!」
そう言って一気に近づいてきた。どうやら自分の体重を軽くして速くなったようだ。そして勢いと同時にハンマーを投げてきた。
「……!」
ハンマーが直撃してしまい内臓が少し潰れてしまった。だがレールガンはまだ生きていた。
「これで貴様も終わりだ!」
「なぁいつまで屋上にいるんだよ」
よりにもよってタイミングが悪いときに"ベルセルク"が来てしまった。
「今来るなよ……」
「えっ!? なにこれ!?」
「ちっ……こいつの仲間か!?」
「ベルセルク。そいつの相手しといて」
「えっ……分かった……」
"ベルセルク"は腰に付いているコンバットナイフを両手に持ち、敵の腱を斬りつけた。
「まずい……!」
「動くんじゃねぇぞ……」
俺は充填し終わったレールガンで狙いを定めて敵の頭を撃ち抜いた。頭が消え首の断面から血が噴いていた。
「任務は終わりと」
「危ないよ! あと少しで当たるところだったよ!」
「だからなに?」
「えっ……」
「別に君がどうこうなろうが知らん」
「……」
「それじゃあ俺は休暇なんで」
俺はそう言って"ベルセルク"を置いていき一人で帰った。
「なんか変な感じがする……」
俺は帰ってからも考え込んでいた。"ベルセルク"に言ってしまったあの言葉……。なにかが引っかかっていた。まるで自分が言ったのではなく他の誰かが言った感じがする。自分ではない他の誰か……。
「まぁいいや」
俺は今回の装備のレビューを書いた。まずレールガンのことだ。普通に強力だし威力に文句はないが毎回銃身の交換と充電をしなければいけないのが難点とあの馬鹿みたいに重い大容量電源を近くにないといけないのも駄目なポイントだ。次にコートだが……普通に要らない。コートだと動きづらいし行動が制限されるからアウトだ。あと素材を盛りすぎて重いのも駄目だ。
「まぁこんなもんだろ」
俺はレビューを政府経由で送ってもらった。
「……大丈夫かな……」
俺は任務が終わってからも"ベルセルク"のことが気がかりだった。
「電話する……? いやあんなこと言って電話なんてしてみろよ絶対に殺される……」
悩みに悩んだ末、俺は寝ることにした。明日も早いのでまた今度連絡をするのだった。
「日が経てば話しやすいかも……」
中間テストまで残り1週間と6日……そろそろ有給でも取ろうと考える日だった。そして朝が来た。
「眠い……」
やはり朝は苦手だ。夜に仕事しているからなのか分からないけど。僕は憂鬱なままで学校に登校した。
「今日も死にそうな顔だな」
「まだ死んでない……」
「ゴキブリみてぇな生命力だな」
「黙っとれ……」
「おはよう。ヨルくん」
「やぁ……アサさん……」
「俺は退散すると……」
クラスの奴めタイミングを見計らって僕と彼女を二人っきりにしやがった。
「あの野郎……」
「今日も眠そうだね」
「朝は苦手なんで……」
「えっ……」
「アサさんのことではないよ」
「ほっ……良かった……」
「なんか言った……? こっちは眠すぎて耳まで眠りかけてる」
「いや大変だね……」
そんなくだらない話を朝にやると少しだけ元気が出てきた。朝は苦手だけど"アサ"は苦手というよりも好きな方だ。
「とか思ってるだろ」
「なわけあるか」
「えぇ……」
「私も妄想にしては酷いものかと……」
「俺の心は打ち砕かれた」
「……でも本当だったら嬉しいのに……」
「なぁ、さっきからなにを喋ってるんだ?」
「ホッ……ホームルームだからまたね!」
「?」
「お前は気づいてないのか」
「ホームルームだから座れよ」
「辛辣……」
悲しくなっているクラスメイトを無視して僕は席に座ることにした。
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