第4話 休暇
ここ最近でいろいろなことがあり大変だった。まさか"ベルセルク"が女だったとは思ってなかった。仕事仲間として長い事やってきたのに気づかなかったのは盲点だった。思い返してみればちょっとね……あのぉ……ものすごく言いづらい部分が分からなかったのかもしれない。ただ、これ以上なにか起こると脳の処理が追いつかないと考えて休暇を取ることにした。
「やばい……めちゃくちゃ眠い……」
前回の任務から帰ってこれたのは朝の4時だった。急いで寝たが3時間しか寝れず睡眠不足に陥っている。
「こんな時はこれだな……」
僕はバッグからエナジードリンクを取り出し一気飲みをした。
「ぷはぁ~効く〜」
全身にカフェインが巡って目はギンギンになっていた。
「これで今日の授業はどうにかなるな」
「おはようヨルくん」
「やぁアサさん」
「なんか眠そうだね」
「いやぁ〜ちょっとね……」
「仕事に熱心なのはいいけどちゃんと寝ないと駄目だよ」
「分かったよ」
「それとこんなものには頼らないこと」
そう言って僕がさっきまで飲んでいたエナジードリンクを持ち上げた。
「善処するよ」
「もう……じゃあホームルームがあるからまたね」
「うん」
あの日以来、僕たちは話す機会が増えていくようになった。目が合ったら手を振ったり、挨拶をしたりするぐらいだけだ。でも、気になる子と話すといつも心臓の音が増すのだ。
「バレてないよな……?」
そうして、授業を終えて昼休みになった時には毎回一緒に食べるようになった。そして今日僕は"レンラクサキコウカンシヨウ"と言う魔法を使うのだ。あくまで噂だがこれを使うと人と連絡先を交換できると言われてる。これを使うには勇気がいるのだと。
「ほんとなのかなぁ……」
「なにが?」
「ううんなんでもない」
「そう? それで昨日はどんなことしてたの?」
「ただのお薬工場を閉場させただけ」
「お薬……」
「深くは考えるなよ」
「それはそうと勉強の方は大丈夫?」
「中間考査はまだだろ」
「いや……もう2週間前だけど」
「!?」
最近は仕事三昧のせいか勉強をする暇がなかった。そしてテストが近くなっていることをすっかり忘れていたのだ。
「あ……」
「その感じだと忘れてたみたいだね」
「やばいどうしよう」
「教えようか……勉強」
「ほんとに!?」
「いいよ」
「ありがとう恩に着るよ」
「それじゃあ連絡先交換しよう」
「へ?」
なんということでしょう僕よりも彼女のほうが先に"レンラクサキコウカンシヨウ"を使ってきました。これを断る理由がありません。
「もっ……もちろん」
「じゃあこれ」
そう言って僕と彼女はついに連絡先を交換することができました。この時は表情には出せなかったが内心はめちゃくちゃ喜んでます。
「じゃあ、また今度勉強できる日を教えるね」
「なるべく早くやらないとテストに間に合わないよ」
「分かってるよ」
そうして僕たちは昼休みを終えて授業に戻った。
「……やったね……」
僕は静かにそう呟くのだった。学校が終わり家に帰ったら政府から赤い封筒が一通届いていた。赤い封筒が届く意味はよくないことについて知らせるだ。
「絶対に昨日のことだよな……」
僕は部屋に戻って封筒を開けてみるとガジェットが入っていた。
「もしかして……」
恐る恐る起動してみると政府の人と2人での面談が開かれていた。
「やぁゴースト」
「どうも……」
「さてと、君はどうして面談を開かれたと思う?」
「昨日の任務で標的を逃したから?」
「その通りだよ」
「無慈悲なゴーストとして知られている君が敵を逃がすなんて……あってはならないことなんだよ」
「でも、あそこで標的を排除してたらベルセルクの命はありませんでしたよ」
「別にいいだろ。彼女の代わりなんていくらでもいるんだよ」
「……」
「まぁそれは置いといて……今回の君の行動には目に余るものだったよ。よって1回我々のところまで来てもらおうか?」
「……分かりました」
「良い子だ。それでは場所を指定するからそこに」
「分かりました……」
そうして面談は終わった。絶対になにかやられることは分かっていた。でも政府に逆らえば俺は生きることを許されないだろう。
「行くしかないか……」
そうして俺は政府に言われた目的地まで行った。場所は街外れのゴミ捨て場だった。
「ここか……」
小さなコンテナが置いてあり中に入って行くといきなり目の前が暗くなっていた。目が覚めた時には自室にいて何事もなかったようだ。
「あれ……? 僕はなにを……?」
思い出せないなにかやられたのは分かっているが肝心なそのなにかが分からなかった。
「まぁいいか」
その時政府からのメッセージが残っていた。
「休暇じゃないのかよ」
そう言いながら再生ボタンを押すと前回の任務で失敗をしていてペナルティが出たため休暇はこの任務の後になるそうだ。
「前回の任務……?」
俺には前回の任務をやった覚えがないが深くは考えないようにした。今回の任務はちょっとしたギャングのボスを排除すればいいようだ。以前から問題視されていて監視していたが、どうやら昨日の夜に警官の武器庫を襲い銃火器を奪ったのだ。
「休暇はお預けか……」
「多分、君は休暇はお預けかよと思っているだろう。だが今回は企業の協力もあるから早めに終わりそうだ。もうそろそろ企業が君専用の装備を届けてくれるはずだ。幸運を」
そう言って伝言は終わった。今回の企業が協力するケースはだいたい武器の宣伝や試作品を使うなどがある。たまに大事故が発生して死にかける時があるがどうにかなるだろう。
「今回の装備は俺専用か……」
専用装備ってことは癖のあるものしか見たことがなかった。そして今回も癖のある装備が届いた。
「どれどれ……」
デカいケースを開けると中にはスナイパーライフルとそれにケーブルで繋がった重いリュックにフード付きコートが入っていた。
「なんだこれ?」
手紙が入っていたので読んでみるとどうやらこのスナイパーライフルは小型に改造されたレールガンのようだ、肝心な弾薬はこの重いリュックで、その正体は小型大容量の電源だった。弾速はおよそマッハ7で飛び、約2300mまで飛ぶロマン砲だ。そしてこのおもちゃは威力や速度を変えることができるものだった。ただ撃ったあとは銃身が焼けるため毎回交換が必要なのだ。そのため今回はお試しとして6本の銃身を貰った。
「それでこっちのコートは?」
コートの方は俺の能力を最大限に活かすための服だった。フード付きコートは全身のところどころに幾何学的な模様と背中には"グリムリーパー"を表す死神が描かれていた。そして能力を長時間使用しても疲れにくく、全身を空間を歪ませて見えなくすることができる。他には耐爆、耐熱、耐水、耐刃、耐電、防弾、急速乾燥、冷房、暖房と機能がモリモリ入っていた。正直に言おう、まだ5月なのにコートなんて着れるわけないだろ。冷房機能がなかったら速攻で捨てていたところだった。
「それじゃあ着てみるとしますかな」
そうして俺は、休暇を手に入れるために仕事に取り掛かるのだった。
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