Ep.04【01】「カツサンドは美味しいゾ!」
ぱりっ・・・もぐもぐもぐ・・・カサコソ・・・・ぱりっ・・・・もぐもぐ・・・
「ねぇ!この案件のファイルってもうアーカイブしちゃった!?」
「どの件だよ!!『この』だけじゃ解んねーよ!!!」
ぱきっ!・・・・もぐもぐ・・・・ごくん・・・
「! これおいしーっ!!」
「こないだの自動車ドロの件!あれってNTPDから言われたじゃん!対応が荒すぎるって!!」
「あー!!!お嬢が犯人ぶん殴ったヤツか!!」
「正当防衛よ!あの件も今回報告しろって言われてんの!!」
「それなら、アーカイブしちまった!!ファイルNo.053だ!!!」
「もぉ!!!!!」
「ねぇ、すーちゃん。これすごく美味しいー!なに入ってんの?」
「あっ、これはですね、中にチョコチップとオレンジピールを入れてまして
隠し味にちょっとだけブランデーも足してるんですよ♥」
「へー・・・だから濃厚なんだねー・・・何枚でもイケちゃう」
「まだまだありますから、どうぞ♥」
「んじゃ、遠慮なくー♪」
「「 だぁあああああああ!!!!うるせぇえええええええええ!!!! 」」
リオとハヤテがキレた。
セスティアはクッキーを咥えたまま、ステラはティーポットを両手で持ったまま固まってしまった。
「こっちは定例会議の資料作って忙しいってのに、なに呑気にクッキー食べてんの!
ティアもなんか手伝いなさい!!!」
リオが八つ当たり気味に机を叩きながら言う。
「あ・・・あの・・・・ごめんなさい・・・リオ姉様、神様・・・・」
ステラは怒られてシュンとした顔になってしまった。
「ほらー・・・!そんな怒るから、すーちゃんイジケちゃったじゃんかー」
セスティアは咥えていたクッキーを早々に食すと
次のクッキーに手を伸ばしつつ、リオに抗議する。
「「 おまえがいうな!!! 」」
またもやリオとハヤテにセスティアが怒られた。
NTPD(警察)との合同会議にリオとハヤテが出席する為
2人は急いで資料を作っていたのだった。
ステラは手製のクッキーを出して、余裕を持ってもらおうとしていたのだが
いち早くクッキーを発見したセスティアは空気も読まず
紅茶を飲みつつ、クッキーをパリポリ食べていた。
「大体だな!いぬ子が出りゃいいんだよ!!何でオレが行かなきゃいかんのだ!」
ハヤテは文句を言いながらも、ホロ・ディスプレイに映る資料の精査をしている。
「この子に出来るわけないって何度も言ってるでしょ!
どうせ行っても、数秒で夢の中よ!このコ!!!!」
「でへへ ♪」
「「 ほめてねぇよ!!!!!! 」」
とにかく忙しく準備を続ける2人だが、セスティアは特に何もやる事が無く、クッキーを貪っていた
・・・・・というのが真相。
ちなみにステラは資料の編集や調整を事前に行い、リオとハヤテに渡した上で気遣い
クッキーを焼いていたので、完全にサボっているのはセスティアだけ。
「ねぇ!ティア!!!暇ならファイルの整理手伝ってよ!!!」
リオがキーボードを忙しく叩きながら言う。
「いぬ子にやらせたら、もっと時間喰っちまうだろ!!
スー!!!すまんがNo.053ファイルの『自動車ハッカー』ってヤツ探して、お嬢に渡してやってくれ!!」
「はい!わかりました!!!」
ステラも加わって、更に事務所がバタつく。
「ほ~~~ん・・・・みんな大変だねぇ~~~(もぐもぐ)」
とまたもクッキーを頬張るセスティア。
「「 クッキー食ってんじゃねぇよ!!!!!!!!!
このばか犬っ!!!!!!! 」」
なんだかんだとバタついて、ようやく準備が終わったのが、会議開催15分前。
リオとハヤテがファントムに乗り込み、セスティアとステラがガレージでそれを見送る。
「じゃあ、あとヨロシクね!!!ティア!スーに甘えすぎないのよ!!!!」
「いぬ子!何か連絡あったら「後日!」ってだけ言っとけ!!!わかったな!!
スー!このアホ犬まかせた!!!」
「二人共ひどいー!!!!!」
「リオ姉様、神様、どうかお気をつけて!」
「んじゃ行ってきまーす!」
言うが早いか、ファントムのモーター音とタイヤのスリップ音がガレージに鳴り響き
あっという間に小さくなっていった。
「あ~・・・行っちゃった。あーんなバタバタするなら、もっと前に用意すりゃいいのに」
とセスティア。
それを聞いていたステラは「あはは・・・・」と困り笑顔だ。
「さーてと、特になーんにもやる事ないし・・・すーちゃん、どっか遊びに行く?」
「え?いえ、まだお掃除とか洗濯とかもありますし、
何か連絡が入ったら対応も必要になりますので遊びには・・・・」
「え~~~~~・・・すーちゃん、マジメだなぁ」
「あはは・・・・・・・・・」
とにかく、暇が出来れば「食う寝る遊ぶ」のセスティアと
家事を完璧に熟し、事務仕事にも余念のないステラとは雲泥の差だ。
「う~~~ん・・・・出かけれないなら寝とくかなぁ・・・・どうしよ」
「でしたら、銃などのメンテナンスとかいかがですか?
わたしで良ければ、お手伝いしますが・・・・?」
「え~~~~~~~・・・・・何かめんどーぃ・・・・あっ・・・!」
「?」
セスティアは何かを思い出す。
ステラの方に向き直し、顔は真剣な表情だ。
「ねぇ・・・・・・・・・すーちゃん・・・・・・・」
セスティアが真顔で詰め寄り、低い声で言う。
「は・・・・はい」
セスティアのいきなりの変化で戸惑いながらも次の言葉を待つ。
「すーちゃん・・・・今日のお昼のメニューって何?」
「え?」とステラ
「だーからー!今日のランチメニュー!!
姐ぇさん居ないから、思いっきり食べれるじゃん!!!!!」
ステラは全身から力が抜ける思いだった。
でも、まぁこういうポジティブな部分がティア姉様の良いところだから・・・と気を持ち直し
「こほん、今日はティア姉様がお好きなカツサンドにしようかと」
『 カ ツ サ ン ド !!!!!!! 』
その瞬間、事務所の空気がなぜか神々しく輝いた。
それは荘厳なBGMが流れる大教会の祭壇のよう。
セスティアの目には一気に輝きが増し、ギラギラとしていた。
その反応にステラが少し引いている。
「すーちゃん!!今だよ!!!!!」
「え??」
「だーかーらー!今食べよう!!!カツサンド!!!」
「え??え?ティア姉様、まだ10:00ですが・・・?」
「ちがうよ・・・・・すーちゃん」
セスティアは右手の人差し指を立てて「チッチッチッチ」という仕草をする。
ステラは完全に意味が解らない・・・といった表情。
「ごはんはね・・・・食べたくなった時が「食べ頃」なんだよ・・・・
ステラくん・・・」
ドヤ顔で語るセスティア。
完全に困惑中のステラ。
「ですが、2時間ほど前に朝ご飯お食べになりましたよね?
たしか・・・・三回ほどおかわりされてたかと・・・・・・・・・・・?」
確かに目玉焼き×2・ウインナー×5・サラダに白米を3杯山盛りで食べたはず。
「でーもー!!!食べたいのぉお!!カツサンドぉ!
すーちゃん!!作ってーっ!!おねーちゃんお腹すいたーーーー!!!」
ステラの肩をガクガク揺らしながら、セスティアは懇願する。
「あっ!ひゃっ!ふぁ!わ! わっ・・・わかりました!
では、今からお作りしますから!!!」
「やったー!!!!!!!!!!!!!!」
奇しくもリオの懸念が的中した瞬間だった。
それから30分後・・・・
テーブルには山盛りのカツサンドとジョッキサイズのコーラが
セスティアの前に置かれていた。
「えー・・・すーちゃんホントに食べないのぉ?いっしょに食べようよー」
セスティアがステラに向かって言う
ステラは困った顔をして
「あ、いえ、お気になさらず。
わたし、メールとかのチェックしてますね」
とドン引きの様子。
「すーちゃん、少食だなぁ・・・・」
等と言いつつ、巨大カツサンドを頬張る。
「ぅんんんんんまぁあああああああああああああぃいいいい!!♪ ♥」
頬をパンパンに膨らませ、幸せそうな顔のセスティア。
ステラはその姿を見て、胸の奥に温かな気持ちを覚えた。
その時、ディスプレイに「緊急」の文字が踊る。
ステラがポップアップを開き、内容を確認する。
セスティアは未だカツサンドと格闘中だ。
「ティア姉様、緊急のお仕事がはいりました!」
ステラの言葉を聞いたセスティアが咀嚼していたカツサンドをゴクリと飲み込んだ。
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