Ep.01【04】「毛根の命運」





二日前・・・


目の前で炎が踊る。

視界に映るのは住み慣れた我が家が紅蓮の炎に焼かれる風景。

オートエマージェンシーが利かない・・・

連中め、ネット回線を総て切断したのか・・・用意周到な事だ。

突然の襲撃でなす術も無かった。

数十発の弾を受け、未だ意識があるのは奇跡なのか試練なのか。

かろうじて動く右手だけで脱出出来るだろうか・・・?

炎は辺り一面を舐め尽くしているというのに・・・・・

その時、なにか動く物があった・・・・・・・・

それは小さくて・・・・・・・フワフワで・・・・・・・・・・・・



セスティアは基本どんな人とも仲良くなれる自信があった。

実際、NTDFに入隊してから多くの人と接したが、全員と仲良く出来ている。

だがしかし・・・・・この人は出会ってまもなく「無理だ」と悟った。

生理的に受け入れれないというのが一番シックリくる。

目の前の男は豪奢な机を前に、同じように本人に不釣り合いな豪奢な椅子に

どっかりと座り、こちらを舐めるような視線を送っていた。

「そうかぁー・・・君が今回こちらに派遣された交換要員なのか。ふむふむ・・・」

コイツ、わたしの身体しか見てないんじゃない?どんだけ失礼なんだか・・・・

セスティアは心の中で男を軽蔑する。

それにしても・・・・この似合わないチョビ髭は何なの?ギャグで笑わそうとか?

あと、その髪・・・・・絶対カツラか植毛でしょ。変だよソレ。

机の上の名札には「警部補 カズオ・ハセガワ」と書いてあった。

「グフフ、その褐色の肌・・・何処かで焼いてきたのかねぇ?良いねぇ、良いねぇ」

「あー・・・いえ、これ生まれつきなんで」

セスティアは無表情で淡々と答える。

「それにその非常に豊かな胸・・・何カップかな?H?I?J ・・・まさかのK!?」

目の前のセクハラ全開の男にパンチの一発もお見舞いしたいところだが

グッと堪える。

「で、どういう任務に就けばよろしいでしょうかー」

ほぼ棒読み。

「あー・・・君には護衛任務に行ってもらおう。何、簡単な任務だよ、非常にね。

で、どうだね?任務終了したら私と食事でも・・・・」

「結構です」

かなり食い気味に答える。

「そうか・・・君さえ良ければ、NTPDに君をスカウトしたい位だよ グフフ・・・」

「結構です」

またしても食い気味。

「では、オフィスに本日の任務に同行するドロイドオフィサー022と031が

待機しておりますので詳細はそちらで」

ハセガワの秘書ドロイドだろう女性が、丁寧に案内してくれる。

「えっと、んでは、失礼します」

セスティアは挨拶もそこそこにハセガワのオフィスを後にする。

セスティアが退出した後、ハセガワは椅子に座り直した。


「あの娘をNTPD(ウチ)に引っ張れんのか?NTDF(連中)には勿体ない!」

「隊員の組織間移動には本人の同意と各組織間での連絡及び協議が必要となります。

現時点で正当な理由も無い移動は不可能です」

「ふん!!この役立たずめが!」

「申し訳ありません」

ハセガワはセスティアの豊満な身体を思い出しながら、勿体ない!を連呼していた。

「で?今回の護衛任務は誰が担当しているんだ?なるべく優秀なヤツを就けて

早々にここに戻らせろ!帰った頃には腹も減ってディナーにも行きたくなるだろ」

「今回の護衛任務は外注になっており、既に任務請負業者は決定しております」

「は!!どうせ、バウンティーのゴミ共だろが!で?今回は何処のゴミクズが

担当するんだ?」

ハセガワは完全に見下した顔で秘書に尋ねる。


「本件担当業者名 「シスター・リオ バウンティー・ハンター事務所」です」


秘書ドロイドは淡々と答える。

ハセガワはその名前を聞いた瞬間、椅子からずり落ち、またもや地獄に叩き落されたような気分になった。

頭の植毛がハラリと数本床に抜け落ちていった。


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