解体
移ろい変わる季節をこの目でとらえることができなくなってから、何回太陽は私を照らそうとしてくれたんだろう。
外の景色は一面の灰色。つぼみすらも成っていない都忘れは灰色の幕を固定する銀色のパイプに押しつぶされている。
キーンコーン カーンコーン
口ずさむこのチャイムが、隣からも聞こえなくなってしまったのはいつからか。
代わりに私を揺らすのはガリガリという耳をつんざくいやらしく単調な音。
愛おしい騒々しさはもう、どこにもいない。
きっと、もう戻っても来ない。
今生の別れすらも、ずっとしていない私だけど、私がみんなの記憶の受け皿であることは知っている。
だから私は、記憶だけは消え去らないように祈ろう。
隣からギャリギャリと嫌な音が聞こえて、西側だけでなく北側も風が私を撫でて流れ去っていく。
ガツリと私の頭に鈍くて赤黒い鉄色のとげとげが突き刺さる。
穴の開いた西窓が、ついに割れる。
間違えて入り込んでしまった虫たちが私から逃げていく。
逃げるのは簡単だったろう。
私の頭には大穴が空いてしまったのだから。
私に遊びに来てくれるもの好きは結局一人だけだったな。
それでもどうか、みんなが幸せでありますようにとは、切に思う。
やだな。みんなの熱気を思い出しちゃうじゃないか。
忘れたことは無いけれどさ。
灰の舞い散るこの場所で、もう一度赤錆色したの鉄の塊が私の頭に突き刺さる。
それじゃ、みんな。
さようなら。
教室語り 三門兵装 @WGS所属 @sanmon-3
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