空白

 外の景色は移ろい変わらず、ただ耳をつんざく虫の声が響く。

 建付けの悪い私の西窓の隙間からトンボや蜂が入り込んで、ゆらゆら、ゆらゆら。


 キーンコーン カーンコーン


 少しだけ、口ずさんでみる。

 みんなにも、誰にも聞こえない私の声で。

 そんなことをしても細長い棒を持った大きな人も、ガラガラと椅子を引く音は聞こえやしない。


 明日かな、明日にはもう一度あの熱気が帰ってくるかな。

 みんなの残した汗臭さは、もう風にさらわれちゃったや。


 寂しいな。


 傾いた太陽がじりじりと私をいぶる。

 あと何回、太陽が私を射止めたらみんなは来るんだろう。

 私は唯、誰かの気配を待っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る