東京 お散歩記
隅田 天美
第1話 そこは正邪も生きとし死者もいる場所 ~伝通院 その1~
今日(正確には昨日。 2025.9.6)に俳優で歌手の橋幸夫氏が他界された。
その情報を週末に通っているスポーツジムの着替え室でスマートフォンで知ったとき、驚いたのは他界した本人よりも通夜本葬が執り行われる『場所』に驚いた。
今から約四半世紀前。
まだ二十代にもなっていなかった私は当時在籍していた短大のリクリエーションで東京に行き、その時、読んだ『作家の墓を訪ねよう』(週末企画 岩井宏)に沿って解散後に散々道に迷いながら、初めて後楽園駅から
「すっげぇ……」
当時、古びた山門を抜けた先に桜の花びらが嵐のように舞っていた。
夢や空想ではない。
その迫力は圧巻だった。
嵐の向こう側に本堂があった。
が、当時はスルー(本当に若い頃はマナーってものがなかったなぁ。今でもそうだけど)
ここで小石川伝通院の簡単な説明をしよう。
大河ドラマでは常連の千姫や清河八郎などの墓があり、歴史ファンなども来る。
また、最近だと豪雨(台風張りの中の強行軍)の中でみた、しっとりとした伝通院も味わいがあった。
さて、私の目的は柴田錬三郎の墓に手を合わせることだった。
が、初めての時は場所がてんで分からなかった。
--諦めようか?
そう思っていた時、境内を竹箒で地に落ちた桜を掃いていたお婆さんに出会った。
挨拶をしてお婆さんにここに来た目的を話した。
すると、お婆さんはにやりっと笑った。
「あんた、柴田さんの本名が斎藤だとは知らなかったかい?」
「……あ」
そうだ、何かのエッセーを読んだとき『自分は婿養子になったので名字が斎藤になったが、それだと戦争を連想させる【サイレン】という仇名になるのが嫌だから柴田のままにしている』というのを思い出した。
お婆さんは、私をシバレン先生の墓前まで連れて行ってくれた。
観音堂の裏手で『死角だった』と内心、苦笑。
というか、後年、『レイトン教授』シリーズ(任天堂DSの名作)で味わう、「あー、確かにそうだ」的な困惑。
とりあえず、墓前にラッキーストライクとワンカップ大関を置いた。
色々な願いや思いを正直に、たぶん、正直だったと思う、吐き出した。
思えば、これが、今に至るシバレン先生たちとの付き合いになるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます