第4話:希望の光<キボウ・ノ・ヒカリ>
ユウキの言葉は、絶望に囚われたエネルギー生命体の心を深く揺さぶった。彼らは、ユウキの心の奥底にある、カイトとリナが残した希望の光を感じ取っていた。しかし、何千年も背負ってきた絶望は、そう簡単に消えるものではなかった。
『……偽りの希望だ……。我々の歴史は、滅びる運命にある……』
エネルギー生命体は、悲痛な叫びを上げると、再びユウキに攻撃を仕掛けてきた。その攻撃は、これまでの不規則な幾何学模様ではなく、過去に滅びた星々の悲劇の光景を映し出す、精神的な攻撃だった。
「ユウキ! 彼らの攻撃は、物理的なものじゃない! 彼らが背負ってきた、すべての絶望の記憶よ!」
ヒカリが焦った声で叫ぶ。ユウキは、ネオ・クロノスのコックピットの中で、エネルギー生命体が背負う、途方もない絶望の重みに押しつぶされそうになっていた。
「くっ……こんな絶望……一人じゃ、どうにもならない……!」
ユウキが歯を食いしばる。その時、彼の脳裏に、ヒカリの声が響いた。
「一人じゃない! ユウキ、私を信じて!」
ヒカリは、アストロ・ハブから、ネオ・クロノスのシステムに、直接自分のデータを送り込んできた。それは、ヒカリがユウキと共に、ネオ・クロノスを開発してきたすべての記憶と、彼を信じる心が込められた、温かい光だった。
「ヒカリ……!」
ユウキは、ヒカリの心と繋がったことで、ネオ・クロノスの力が、これまでにないほどに高まっていくのを感じた。それは、かつてカイトとリナが経験した、「シンクロ・クロノ・ドライブ」に似た感覚だった。
「ネオ・クロノス、システム・シンクロ・ドライブ、起動!」
ユウキの叫びと共に、ネオ・クロノスから放たれる光は、無数の色を放つ、希望の光へと変わっていった。その光は、エネルギー生命体が映し出す絶望の光景を、一つひとつ打ち消していく。
そして、ユウキは、シンクロ・ドライブの力で、エネルギー生命体の心の奥底にある、彼らの「滅びの歴史」に触れた。彼らは、自分たちの歴史が、悲しみの螺旋を繰り返すだけのものだと信じ込んでいたのだ。
「違う! その悲しみの連鎖は、君たちが終わらせることができるんだ! 君たちの歴史は、まだ終わってない! 俺たちと一緒に、新たな歴史を創ろう!」
ユウキの心の声は、エネルギー生命体の心に深く響き渡った。絶望に囚われていた彼らの瞳に、わずかだが希望の光が灯り始めた。
エネルギー生命体は、ユウキとヒカリの心の声に触れ、自分たちが悲しみの連鎖を断ち切る最後の存在なのだと悟った。彼らの巨大な姿は、ゆっくりと、しかし確実に、光の粒子となって消えていった。
「ありがとう……ネオ・クロノス……。君たちの歴史を、どうか、永遠に……」
彼らの最後の言葉は、感謝と、そして未来への希望に満ちていた。
ユウキとヒカリは、エネルギー生命体が消えた場所に、一つの美しいクリスタルが残されているのを見つけた。それは、彼らの絶望が、希望の結晶へと変わった、新たな時代の象徴だった。
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