第13話:未来の残滓<ミライ・ノ・ザンシ>

時の番人のマスター・ユニット、それは未来のクロノスを模した漆黒の機体だった。その姿は、カイトのクロノスと瓜二つだが、禍々しく洗練されたデザインで、カイトたちの心を激しく揺さぶる。


『未来の君たちだ。抵抗は無意味』


マスター・ユニットから聞こえてきた声は、カイトの声と酷似していた。カイトは、自分の未来が、こんなにも冷たく、感情のない存在になってしまうのかと、言葉を失う。


「違う……! 俺の未来は、こんなんじゃない!」


カイトが叫ぶと、リナがそれに続く。


「あれは、未来のクロノスじゃないわ! 未来のクロノスの**データ**よ! カイト、気をしっかり持って!」


リナの言葉に、カイトは冷静さを取り戻す。そうだ、あの機体は、クロノスとカイトの未来の姿をデータとして読み取り、それを具現化したものだ。


「リナ、シンクロ・クロノ・ドライブを起動する!」


カイトは、再びリナの機体とシンクロし、二つのエネルギーを一つに融合させた。マスター・ユニットの動きは、カイトとリナの未来のデータに基づいている。しかし、シンクロ・クロノ・ドライブで結びついた二人の心は、未来のデータには存在しない、予測不能な力だった。


「未来は、データなんかじゃない! 俺たちが、この手で創るものなんだ!」


カイトは叫び、シンクロ・クロノ・ドライブの力で、マスター・ユニットに突っ込んでいく。マスター・ユニットは、カイトの行動を完璧に予測し、攻撃を仕掛けてくる。しかし、その攻撃は、予測された動きとは異なる、カイトとリナの即興的な連携によって、すべてかわされていった。


マスター・ユニットは、カイトとリナの予測不能な動きに、わずかに混乱を見せる。その隙を逃さず、カイトは光の剣を構え、マスター・ユニットのコアへと斬りかかった。


光の剣がコアを貫くと、マスター・ユニットは悲痛な叫びを上げ、その姿がゆっくりと、しかし確実に崩壊していく。その崩壊の瞬間、マスター・ユニットのコアから、無数の映像がカイトの脳裏に流れ込んできた。


それは、ヴァージンとの戦いが長期化し、希望を失い、冷たい機械と化していく未来のカイトの姿だった。彼は、歴史を変えることに執着し、時の番人となり、自らの未来を否定する存在になってしまったのだ。


「カイト……」


リナが心配そうに彼の名を呼んだ。カイトは、無言で映像を脳裏に焼き付けた。彼は、自分たちの戦いが、未来の自分たちをも救うためのものだと悟った。


マスター・ユニットの崩壊と共に、時の番人のドローンたちは機能を停止した。


---


戦いが終わり、静寂が戻った。カイトは、未来の自分が辿るはずだった絶望の道を知った。だが、彼の心には、希望の光が宿っていた。


「俺は、あんな風にはならない……リナ、俺たちの未来は、俺たちが創る」


リナは、優しく頷いた。


しかし、彼らはまだ知らなかった。時の番人の真のボス、そしてヴァージンを遥かに超える存在が、彼らを待ち受けていることを。

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