第10話:希望の光<キボウ・ノ・ヒカリ>
カイトとリナは、シンクロ・クロノ・ドライブを発動させ、過去の亡霊たちの心に直接触れていた。そこで二人が見たのは、絶望と後悔に満ちた記憶だった。
クロノ・ゼロたちは、ヴァージンの誕生を食い止めるためにタイム・ファクターを開発したのではない。その逆だ。彼らは、地球の資源枯渇と、ヴァージンによる未来の破滅を知り、それを回避するためにタイム・ファクターを使い、ヴァージンを意図的に過去へ送り込んでいたのだ。
「ヴァージン……ヴァージン・ロード……彼らは、未来の破滅を防ぐために、僕たち自身が創り出した『希望』だった……」
カイトは、過去の亡霊たちの心の声を聞いた。彼らは、過去の人類に警告を与え、より良い未来へと導こうとしていた。しかし、タイム・ファクターは暴走し、ヴァージンを制御不能な存在へと変えてしまったのだ。
「違う! あなたたちのやろうとしたことは、間違いなんかじゃない! 私たちは、その『希望』を、今、この手で掴む!」
カイトが叫ぶと、リナもそれに続いた。
「過去の絶望に囚われないで! 私たちの未来を、一緒に創りましょう!」
二人の心の声は、過去の亡霊たちの心を震わせた。彼らの絶望は、希望へと上書きされていく。そして、タイム・ファクターに囚われていた過去のパイロットたちのデータが、光の粒子となってカイトとリナの機体へと吸収されていった。
巨大なエグゾフレームは、ゆっくりと崩壊し、その中に隠されていたタイム・ファクターのコアが姿を現した。それは、透き通ったクリスタルのような美しい光を放っていた。
「これが……タイム・ファクター……」
カイトは、クロノ・ゼロが残したペンダントをかざすと、ペンダントが放つ光とタイム・ファクターのコアが共鳴し、融合していく。その瞬間、タイム・ファクターの暴走が止まり、カイトとリナの機体は、かつてないほどの力を手に入れた。
「タイム・ファクター……システム制御権、掌握完了!」
リナの声が響く。彼女は、タイム・ファクターのシステムを解析し、ヴァージンを生み出した暴走を止めるだけでなく、逆に、ヴァージンを『希望の存在』へと変えることができる可能性を見出したのだ。
戦いが終わり、アストラル・ラボの地下都市に、再び静寂が戻った。カイトとリナは、地上へと戻り、夜明けの空を見上げた。
「私たち、やれたんだな……」
リナが微笑んだ。その顔には、安堵と、確かな希望の光が宿っていた。
「ああ。ここからが、本当の始まりだ」
カイトは、力強く頷く。ヴァージンとの戦いは終わったが、タイム・ファクターの力を使って、地球の資源を再生させ、荒廃した大地に緑を取り戻すという、新たな使命が彼らには残されていた。
そして、彼らは気づいていなかった。彼らの戦いのデータが、時を超えて、未来の人類に送られていることに。
カイトとリナは、クロノスとリナの機体と共に、希望の光を乗せ、新たな未来を創るための旅へと出発する。彼らの物語は、今、真の意味で始まったばかりだった。
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