第9話:過去の亡霊<カコ・ノ・ボウレイ>

アストラル・ラボの地下深く、カイトとリナの前に立ちはだかったのは、タイム・ファクターに囚われたクロノ・ゼロたち、過去のパイロットたちの怨念が形となった巨大なエグゾフレームだった。その機体は、カイトのクロノスとリナの機体を融合させたような姿で、二人の心を揺さぶる。

「排除……排除……私たちの未来を奪った、君たちを排除する」

機体から聞こえてくる声は、クロノ・ゼロの声に似ていたが、そこには悲しみと絶望が混じっていた。

「未来を奪った? 違う! あなたたちが暴走させたんだ!」

カイトが叫ぶ。しかし、過去の亡霊は聞く耳を持たない。巨大なエグゾフレームは、カイトとリナの動きを完璧に予測し、猛烈な攻撃を仕掛けてきた。

「くっ……このままじゃ、勝ち目がない!」

リナが焦りを滲ませる。過去の亡霊は、カイトとリナのすべての戦闘データを読み取り、それを上回る動きを見せていた。まさに、最強の敵だった。

その時、カイトは、クロノ・ゼロが残したペンダントを強く握りしめた。すると、ペンダントから温かい光が放たれ、クロノスのコックピット全体を包み込んだ。

『カイト……未来は、過去の繰り返しじゃない。君たちの力で、未来を創るんだ』

それは、クロノ・ゼロの最後のメッセージだった。カイトは、過去の亡霊の攻撃をすべて受け止める。その衝撃で、機体の装甲が剥がれ落ち、内部の回路がむき出しになる。

「何をしているの、カイト!」

リナが叫ぶ。しかし、カイトの瞳には、迷いはなかった。

「未来を創る……そうか! 俺たちは、ただ過去の亡霊を倒すんじゃない! 過去を、救うんだ!」

カイトは、クロノ・ドライブのエネルギーをすべて、防御に回した。そして、リナに呼びかける。

「リナ! 俺の機体のシステムに、お前のエグゾフレームを接続してくれ!」

「何を言ってるの!?」

リナが戸惑うが、カイトの真剣な眼差しに、彼女は頷いた。リナの機体がクロノスに接近し、二つの機体が物理的にドッキングする。

「シンクロ・クロノ・ドライブ、起動!」

二つの機体のエネルギーが、一つの光となって輝き始める。それは、時を加速させる「クロノ・ドライブ」でも、時を巻き戻す「クロノ・リバース」でもない、新たな力だった。

「これは……! 私たちの心が一つに……!?」

リナが驚愕する。シンクロ・クロノ・ドライブは、カイトとリナの心を一つにし、過去の亡霊を「上書き」する力を持っていたのだ。

二人のエグゾフレームは、過去の亡霊の攻撃をすべて受け流しながら、その懐に飛び込んだ。

「あなたたちの絶望を、未来の希望で上書きする!」

カイトが叫ぶ。その声は、過去の亡霊の心に直接響き渡った。亡霊たちの苦しみと悲しみが、カイトとリナの心に流れ込んでくる。そして、二人は、過去の亡霊たちが未来を変えようとした理由、そしてタイム・ファクターに囚われた真実を知ることになる。

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