第3話:共鳴する魂<キョウメイ・スル・タマシイ>
リナの援護により、カイトは体勢を立て直した。冷静さを欠いた自身の行動を反省し、カイトは初めて周囲の状況を冷静に把握しようと努める。ヴァージンの群れは依然として強大で、味方のエグゾフレームは苦戦を強いられていた。
「カイト、指示を出すわ。私がヴァージンの注意を引く。その隙にあなたは、コアを狙って」
リナがクロノスの通信回線に割り込んできた。彼女の言葉は簡潔で的確だ。カイトは無言で頷くと、リナの操る白銀のエグゾフレームが、ヴァージンの集団に向かって突っ込んでいくのを静かに見守った。
リナの機体は、その身軽な動きでヴァージンの攻撃を巧みにかわしながら、一体ずつ確実に仕留めていく。その戦いぶりは、まるで舞踏のようだった。カイトは、かつて彼女と訓練で何度も模擬戦を繰り返した日々を思い出していた。あの頃から、彼女の操縦は正確で無駄がなかった。
リナがヴァージンの注意を十分に引きつけたのを確認したカイトは、再びクロノスを加速させる。だが、焦りからか、わずかに機体が不安定になる。その瞬間、カイトの脳裏に、2年前のヴァージン襲撃の光景がフラッシュバックした。両親と妹の、恐怖に歪んだ顔が蘇る。
「くそっ!」
カイトは歯を食いしばる。彼の復讐心は、再び怒りへと変わろうとしていた。その時、クロノスのコックピットに、優しい声が響いた。
『カイト、大丈夫。あなたは一人じゃない』
声の主は、リナだった。彼女はヴァージンと交戦しながら、カイトに語りかけていた。
『あなたの怒りは、私も知ってる。でも、その怒りは、あなたを壊すだけだわ。大切なのは、守りたいという気持ち。私たちが、一緒に戦っているんだってこと、忘れないで』
リナの言葉は、まるで魔法のようにカイトの心を落ち着かせていく。怒りに支配されていた彼の心が、徐々に、しかし確実に氷解していくのを感じた。
「……ああ、そうだな。ありがとう、リナ」
カイトは、静かに返した。復讐のためだけではなく、大切な仲間を守るために戦う。その決意が、クロノスに新たな力を与える。機体のシステムが、これまでとは違うパターンで輝き始めた。
「これが……クロノスの本当の力か」
カイトは、機体と自分の心が共鳴し合う感覚を初めて覚えた。それは、単なる復讐心ではない、もっと強く、もっと温かい、確かな絆の力だった。
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