第21章 最後の悪あがき
【王暦424年・王都/裁きの間】
王の命を受け、調査が始まって数日。
証言や記録が次々と集まり、ヴァルデン男爵家とセドリックの陰謀はほぼ明らかになりつつあった。
「これで決定的だな」
グレイが机に積まれた書簡束を見下ろす。
「はい……もうすぐ終わる」
私は安堵の息を吐いた。
◇
しかしその夜、王都の宿舎に不審な影が忍び込んだ。
物音に気付いた私は目を覚まし、手近の燭台を掴む。
そこにいたのは、見覚えのある男だった。
ヴァルデンの間者──以前村で捕らえたはずの男だ。
「なぜ……ここに」
男はにやりと笑い、刃物を抜いた。
「命令だ。お前を消せば、証拠も消える」
私は後ずさる。
その瞬間、背後の扉が開き、銀の刃が閃いた。
「──リシェル!」
グレイの剣が男の刃を弾き飛ばし、壁に叩きつける。
間者は抵抗する間もなく取り押さえられた。
「無事か」
「……はい、なんとか」
震える声で答えると、グレイは険しい顔で言った。
「奴ら、まだ諦めていない。裁きが下る前に、お前を口封じするつもりだ」
◇
翌朝、私は王に直訴した。
「このままでは、再び犠牲が出ます。どうか裁きを早めてください!」
王は黙考し、やがて頷いた。
「よかろう。明日、公開裁判を行い、すべての証拠を提示する場を設ける」
広間がざわめき、セドリックの顔が蒼白になる。
(これで終わらせる。あの日の続きを──今度こそ、私の手で)
◇
夜、宿舎のベランダで星を見上げる私に、グレイが近付いた。
「怖いか」
「少し。でも……ずっとこの時を待っていました」
彼は短く頷き、私の隣に立った。
「明日が終われば、お前は自由になる」
「はい。そして……この村も、もう二度と誰にも奪わせません」
星空の下、私は心の底から強く誓った。
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