14話 またね
ギルドについた四人。
相変わらず、冒険者が沢山行き来して賑やかだ。
「はぁ〜あ、やっと戻ってこられたって感じするぜぇ」
モザンは、しみじみと実家のような安心感を得ていた。
「だって、私たち今までゆう…モゴモゴ…」
口を滑らそうとしたラックを、慌てて三人は塞ぐ。
一応、この一件は極力内密にと言うのが依頼条件だ。
ましてや、ギルド内で大声出して良い訳がない。
「…わきが甘いぞ、ラック」
「す、すいません…。」
しゅん…となるラックの面倒を見るモザン。きっと、この依頼を受ける前と後で、二人の関係は変わったのかもしれない。
「お、モザンじゃねぇか!珍しくパーティー組んで…しかも、例の人間とダークエルフまで一緒とは…。
一体、何やってきたんだよぉ?」
酒臭い冒険者が、モザンに絡んでくる。あからさまに鬱陶しそうにするモザン。
「あ?あれだ、あれ。勇者を倒して来たんだよ、おれ達で。」
「……ばっはっはっはっはっ‼︎
そうかそうか、そりゃ大変な活躍だったなぁ、モザン四天王さま〜?
ぐははははっ」
周りの飲んだくれも、豪快に笑う。そのうち、酒場の喧騒にかき消えていった。
肩をすくめるモザン。
何か納得いかないラック。
「ま、いくら強そうなダークエルフがいても、世間様的にはこんなもんだろ?
真実を知らなけりゃな。」
「ありがとな、モザン。俺たちに気を遣ってくれて。」
「っば、バカ!違ぇよ!」
「あぁ、なるほどっす!なーんだ先輩、やっぱ優しいじゃないっすかぁ」
「くっ、コイツら勝手言いやがって」
四人は、ギルドに併設されている酒場でご馳走にありつく(お金はギルド長持ち)。
肉、サラダ、肉、酒、肉…
周りからは、ガヤガヤ、カチャカチャ酒場特有の賑やかなBGM。
テーブル一杯に、食欲が咲き乱れる。
賑やかで、ささやかな晩餐……。
「じゃ、おれ達はもどるぜ。」
モザンとラックは別れようと席を立つ。
「もう少し一緒にいてもいんじゃ?」
引き留めようとするイルを、ブラッドは制止する。
彼らもプロの冒険者なんだ。
きちんと、自身の居場所があるんだ。
「またね」
顔を見合わせた四人は、それぞれ自分達の道に戻る。
だが、決して悲しいだけの別れではない。また再会する時は、もっと強くなると、モザンとラックは心に決めていた。
満腹になったブラッドとイルは、宿を探す。すると、ギルド長のヘーベルが出迎えてくれる。
「やってくれたなお前たちっ‼︎感謝してもし足りないぜ‼︎」
勢いよくハグしてくるギルド長に、面食らう二人。
「ったく、一時はどうなる事かと…。本来なら、こんな案件おれが出る幕じゃないんだがな。
…ま、最悪おれの首一つで済むなら良いかと、お前達に賭けたんだ。」
何だか知らないが、壮絶な何かがあったみたいで、ギルド長を励ます二人。
「…とにかく!どうもありがとう‼︎」
深々と下げられた頭を見て、改めてやり遂げてよかったと思わされる。
「大げさだな、ギルド長。依頼を受けて、こなしただけだ。特別な事はないだろ?」
勇者相手に、五体満足で帰って来ただけでも奇跡なのに…。
…だが、これ以上は野暮ってものか。
「じゃあ、せめて良い宿ぐらいは奢らせてくれ!ギルドの名が廃れちまう。」
ヘーベルが指差した方には、この辺りでは一番にでかい宿が!
「じゃあ、一番良い部屋で!」
…いそいで財布の中身を確認するヘーベル。
「あ、いや…やっぱり、二番じゃ…だめ?」
豪華絢爛なスイートルームに泊まる二人。
街を一望できる窓に、絵画が数点、さらに季節のフルーツもテーブルには置いてある。
「確かに、こんな景色村じゃ見られないな!少しは、旅に出た甲斐があったかな?」
「…うん。」
…だが、堪能する間もなく寝息を立てる二人。豪華で広いベッドの端っこに仲良く、くるまっていた。
夜が、静かに街を包んでいく…。
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