第2話
翔太は凍りついたまま、息を呑んだ。
影はゆっくりとこちらに近づいてくる。形ははっきりしないが、確かに人のようだった。
「誰だ…?」翔太は震える声で問いかけるが、返事はない。
ただ、冷たい風だけが家の中を吹き抜ける。
影はやがて、ぼんやりと女性の姿を現した。
長い黒髪、白い服を纏い、目は虚ろでどこか悲しげだった。
「お願い…助けて…」その声はかすかに聞こえた。
翔太は日記のことを思い出し、この女性があの書き手だと悟る。
「どうしてここにいるんだ?」翔太が尋ねると、影はふっと消えかけたが、再び現れた。
「ここから逃げられないの…閉じ込められてる。影が…私を縛っているの。」
翔太は決心した。
「君を助ける方法を探そう。」
そう言うと、彼は日記をもう一度読み直し、家の古い地下室に向かった。
地下室には、壁に奇妙な文字と模様が刻まれていた。
日記には、その模様が“封印の印”だと記されていた。
「これを壊せば、影の呪縛は解けるかもしれない…」
翔太は手近にあった金槌で、壁の模様を叩いた。
すると突然、家全体が揺れ、闇が渦巻くように広がった。
「やめろ!」影の女性の声が叫んだ。
闇の中で何かが翔太に絡みつく。
「君も一緒に閉じ込められる…」冷たい囁き。
だが、翔太は必死に抵抗し、最後の力を振り絞って模様を完全に壊した。
その瞬間、重苦しい空気が一変し、闇は晴れ渡った。
女性の影は微笑み、ゆっくりと光に溶けていった。
「ありがとう…自由になれた…」
翔太は震える手で玄関のドアを開けると、外には静かな夜空が広がっていた。
雨も止み、星がひとつ、またひとつと瞬いている。
だが、彼の胸にはまだ、どこか冷たい余韻が残っていた。
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