Episode-12~放課後の音色観測~


文化祭が終わって、SiNSilentのライブもやって、中間と期末テストがあったりと忙しくも充実した日々。新曲にBLACK off WHITEが加わったり、順調なバンド活動だ。


「君たちCD作らないの?」


あるライブの時、秦さんに言われていた。


「CDか、気にしたこと無かったな」


「動画ではちょこちょこプチライブとかはやってたりけどね〜」


「今度のMARIN RUNLYとの対バンに向けて、チャレンジしてみてもいいんじゃない?最近君たちの人気も凄いし、BlueStaR L!neЯのグッズが今1番売れてるからさ!」


CDか…考えたことはあるけど動画とかと違ってお金かかるんだよね。MARIN RUNLYとの対バンライブが控えてる中、試みるのはいいけどもう少しグッズ売り上げるか、動画再生数を稼ぐかだな。


「ということで、CD作成計画立ててみようかと思うんだけどどうかな?」


部室で練習する前に話題にしてみた。


「おー!CDか!確かにあまり考えたことなかったね!」


優がスティックを指で回しながら言う。


「いいんじゃないか?」


「オリジナル曲数も大分増えたもんな」


楽譜を見ている慧と弦の張り替えをしている奏響。反応的にどうやら皆乗り気みたいだ。


「CD制作作戦①。まずは物販の種類を増やしてみ売上を上げる。」


Tシャツとリストバンドを通常カラーも良いけど。


「それだけじゃなくてメンバーカラーのも考えてみた!」


奏響と慧と相談し合ってサンプルをいくつか。


「煌夏の赤、奏響の青、慧の緑、優の黄色とメンバカラーにしてみた。」


「おー!メインカラーをメンバーカラーにして襟や袖の縁を黒にしたんだ!僕たちの楽器色みたいでいいね!」


「BlueStaR L!neЯのロゴの部分は、黒と周りはゴールドにしてみた。」


「いいんじゃない!普段でも使えそうだし!」


オシャレ担当の優のお墨付きが貰えるなら大丈夫そうかな。


「他にはタオル。芽衣にデザインをお願いして作ってくれた。」


「おー!かっこいいね!樋野さんが作ってくれたストリートライブの時のチラシ良かったもんね!」


青い炎のようなデザインにBlueStaR L!neЯのロゴが入ったタオル。リストバンドも赤、青、緑、黄の4色。


「これで良さそうなら発注頼むね。」


「穂川、頼む。」


ライブハウスのバイト時に格安でクオリティがいいグッズを作ってくれると教えてくれたのだ。発注から2週間後にそれは届いた。


「秦さん、これらのグッズ置いてもいいですか?」


次のSiNSilentバイトの日、グッズのダンボールを運ぼうとしたら。


「穂川さんは持たなくていいよ!俺たちが運ぶから!」と奏響にTシャツが入ったダンボールを奪われて


「任せろ」と慧がタオルのダンボール


「きぃちゃんは何もしなくていいよ!」優がリストバンドや小物が入ったダンボールを運んでくれた。


私は何もしなくていいのかと少し慌てたけど


「きぃちゃん!早くー!」


優が私を呼び、慧と奏響も待っていて。私は急いで追いかけた。


「秦さん。グッズ売り場に新商品置いていいですか?」


「お、この前穂川さんが言ってたやつだね!もちろん置いてくれ!」


「ありがとうございます!」


慧と奏響がダンボールの中身を並べ初めて、私も並べていく。


「きぃちゃん、これ1人で運ぼうとしてたんですよ〜」


「1人で?あはは、穂川さんらしいね!てかTシャツのデザインとタオルも、リストバンドもめっちゃイカしてるね!」


私はグッズをBlueStaR L!neЯコーナーに並べて、グッズコーナーの写真を撮りSNSにて宣伝した。SNSのフォロワー3万人、動画サイトのフォロワー2万5000人でもっと増やしたいな。


「秦さん、ちょっと相談してもいいですか?」


「もちろん、なんでも言ってくれ!」


「SiNSilentに出演する時、来週ステージで歌ってるところや演奏しているところを配信をしたり動画に流してもいいですか?」


「お、それを動画収益化にするんだね!もちろん歓迎だ!ライブハウスの宣伝にもなるしね!」


「ありがとうございます。」


あとは……部室で会議。


「CD制作作戦②。MV動画を増やそうと思っている。」


「「「MV?」」」


「そう、もう結構曲も増えたし。この前のTRAIN MOON´sとShady ShiCのように撮ってもいいのかなって思って。」


「確かに、その2曲以降やってなかったね!ShinE L!ghtとTR!BE L!NK DR!VEあたりやってもいいかもね〜」


「もう寒くなるし、来年の夏にWataR ArM BANGとBeyonD the BluEもやりたいよな。」


BeyonD the BluEは出来れば、空が綺麗な時に撮りたいな。


「いいね、学校のプール借りたりしてね!」


BlueStaR L!neЯは、もっと先へ行きたいからね。


「あとは、来週のライブ前にライブ配信もやろう。」


「随分、いろいろやるんだな!」


「CD作るには、それなりにかかるからね。やるからには中途半端はやりたくない。」


「きぃちゃんらしいね〜!でも、そんな感じくらいで行かないとダメだろうし、いいね!」


その4曲はMVやるのにかかるかもしれないから、先に校長先生に許可を貰って教室の方か後でSunSet Glow WayのMVを取らせてもらうことにした。


「屋上でShinE L!ghtやってもいいかもよ?あの曲は屋上でできたんでしょ?」


「お、いいな!それ!」


「いいんじゃないか。」


優の案で、ShinE L!ghtも撮ることにした。この時期の夕焼けが綺麗なんだ。スマホの写真が何枚か光る。大分前に、私たちはどんなバンドにしたいか話した。


「プロになりたいよな。せっかくここまでやっているなら!」


「海外とかも興味ある。」


「そうだね、前みたいに合宿も楽しかったし。こうしてBlueStaR L!neЯが活動出来る幸せがずっと続くといいな〜」


と包み隠さず話した。私もここで止まりたくない。この先のチャンスは1つも逃したくない。あそこに輝く、一番星を掴むのはBlueStaR L!neЯ。



ある日の放課後。ちょうど夕焼けが綺麗に差し込んだ教室。私はアコースティックギターを弾く。イントロが始まって、サビがあって、これを私が、私たちが作ったんだと見ると感動する。


「ある夕陽が差し込むと、眩しい輝きに

影が生まれる。不安や葛藤が、ひそひそと凪いでいる。


その時間はきっと、大事な時間。

目をつぶって、深呼吸をすると温かで、

涼やかに響き合う。


そして、開けるとまだ太陽は輝き続けている。


きらきらと、輝く空

オレンジ色の空、甘くて酸っぱい味が

僕の心は、安らかに眠りにつく。」


取り終わったから、ビデオカメラを切って取れているか確認していると、少し涙ぐんでいるような声が聞こえるなとちらっとみると、どうやら優みたいだ。


「SunSet Glow Wayいい曲だよねー。なんか僕泣きそうになるんだ。」


「たしかに、心にじんわりくる曲だよな!」


「穂川らしい曲ではないよな。」


「そうかな?きぃちゃん優しいじゃん!」


「慧より2倍はな!」


「は?何言ってんだ、アホ田。」


またプチ争いが始まった。


こうやって活動できるのも、みんなのおかげだから……ありがとう。


「きぃちゃん、なんか言った?」


「ううん。まだ夕陽綺麗だし、このままShinE L!ght撮っちゃわない?」


私たちは屋上へ駆け出して、しんみりとした曲調とは真逆に楽器を掻き鳴らした。


太陽、私のココロをいつまでも燃やしてよね。



そして、2曲同時投稿した。翌日、教室に入るとなにやらいつもより騒がしい。


「おはよう、煌夏!!」


「!?おはよう、美紅。いつもより元気だね。」


「見たよ、MV!かっこよかったし、凄いんだけど、見てよこの再生数の凄さ!」


昨日の今日で1万再生と書かれていた。いいねも多い。それでか何だか教室中がいつもより騒がしい気がしたのは。


「まだ再生数伸びそうだね。」


「煌夏ちゃん、なんでそんなに冷静なの?春田くんとか井間くんは囲まれてるよ!」


芽衣らしくなく慌てている。たしかにいつにも増して囲まれているかもしれない。


「ま、みんなが喜んでくれている。そんな反応が見れて私は満足。」


みんなが笑っているなら、この曲のどれかで

誰かの心に光がさせたらいいな。


放課後の部室。なかなかみんな来ない。生徒にまだ捕まっているのかもしれないな。


私は夕焼けをバックにアコギを奏でていた。


「明日の光、どんなに暗い夜が

この先に沈んでも。


月の光が寝ているあなたを癒して

目を覚ます頃には、朝日が昇る。


例え雨が降っても、緑が潤うように

心にも潤いを与えてくれる。


今はまだお休みが、必要なのかもしれない

だから、慌てなくて大丈夫。


ずっと、あの太陽が見守っている。」


「それ、SunSet Glow Wayでしょ。」


「優、いつの間に…うん、Bメロの部分。」


「好きなんだ、僕。」


「昨日も言ってたね。」


「きぃちゃんの作る曲どれも好きだけど、僕の中でベスト1位なんだー!


僕ね、なかなか上手くいかない時期あってさ。この曲聞いて、なんか救われた気がするんだ。」


優……そうか、優もなんだかんだ大変なんだな。そうだよね、人はそう簡単には、行かないよね。


「また合宿しよう。夜の海でさBLACK off WHITE撮りたいんだ。」


「あ、いいね!海で撮るなら、楽器気をつけないとだけど、明るい時はBeyonD the BluEを撮ろう!」


「お、なんか楽しそうな話してるな!」


「お前たちだけで、話進めるな。」


部室はまた賑やかに、今日も楽器が学校中に響き渡る。色々確認したらグッズ収益と動画収益大分売上がいい。


「次のライブ次第で、CD作れそう」


「ほんとか!?よし!この調子で頑張ろうぜ!」


「うん。あ、今日早めに部活終わってもいい?」


「バイトか?」


「うん。今日有名なバンドが多いから早めに行こうと思ってさ。」


「ほんとだ!ネットで調べたらRonder Hereもいるし、FranPlaZma《フランプラズマ》とかもいる!」


SiNSilentの中でも、人気のインディーズバンドの2つだ。私たちも早くそっち側に行きたいな。なんてヘッドのペグを触っていたら。


「大丈夫だよ、穂川さん!」


奏響が笑顔でいい。


「俺らなら、絶対行ける。」


慧が自信ありげに言う。


「なんで、わかんのよ。」


「そりゃね!もう半年も一緒に部活してるし、合宿もしたし、同じクラスでもあるんだから、お互いのこと多少はわかるよ!」


「穂川さん、意外とわかりやすいしな!」


「穂川は表情には出ないが、行動に出るタイプだよな。」


なんかこういうの少し照れくさいな…


「次のライブ、絶対成功させよう。」


また練習を重ねて、バイトに行く時間になった。普段の時はあまり何も感じないけど、こう凄い人が揃うライブは少し力が入ってしまうな。ドリンク交換やホールの掃除をして行く。


「おい、お前がBlueStaR L!neЯのギター&ボーカルの穂川 煌夏?」


急に名前を呼ばれて驚いた。


「!?」


今日出演予定のRonder Hereのギター&ボーカルの瓏 万里さんだ。


「そんな怯えた顔するな。別に取って食おうとしている訳じゃねぇから。」


「怯えてるつもりはないです。ちょっと緊張しているだけです。」


「もしかして前にアンコール取っちまった事を気にしてんのか?俺らがアンコール取れなかったのは俺らの実力不足で、その力量をお前たちの方が凌駕していた。ただそれだけの事だ。」


瓏さん…なんて器の広い人なのだろうか。


「……はい、BlueStaR L!neЯのギター&ボーカルの穂川 煌夏といいます。よろしくお願いします。」


「おう、よろしく!アンコールもそうだが、トリを務めるなんて新米バンドグループにしちゃマジすげーことだから、どんな奴なのか話してみたかったんだ!」


「あの瓏さんの力強い歌声と音の圧力を感じるサウンドが大好きです。」


「お!嬉しいね!俺もBlueStaR L!neЯのバチッとしたサウンドと煌夏さんの声量と凛とした歌声がマッチして勢いがある。それに芯もあるし、お前たちの熱を感じられて、マジレベル高いバンドだなと思うぞ!」


「!?とても光栄です!!」


瓏さんからそんなに褒めてもらえると思ってくて、過去一声が出たかもしれない。


「最近のMVも見たぜ、いい感じじゃねーか!すげーな、悔しいが俺たちからアンコール奪ったの納得行くくらいだ。しかしこんなわけーとは思わなかった!」


純粋に嬉しかった、憧れの1人である瓏さんの言葉に救われた気がした。私のやって来たことは間違ってなかったと言ってくれている気がして。


「早くこっち側へ来い!そしたら、祝いに俺らと対バンやろうぜ!!」


「…は、はい。是非、お願いします。」


大きなギターを何度も弾いてきた手と握手を交わした。今日はバイトであるけど、そっち側を目指すバンドとして、沢山吸収して帰る!


「穂川さん、受付変わってあげる!」


「え、秦さん?」


「凄いじゃん、Ronder Hereの瓏さんにあそこまで言わせるなんて!あ、さっきFranPlaZmaの降川さんも少し話しかけたそうだったよ?」


FranPlaZmaの降川さんって、え?


「受付を変わるから、たくさん勉強しといで!」


秦さんのそういうところ、ほんと大好き!!

私は食い気味にステージを見て、メモを沢山した。


「あの、BlueStaR L!neЯの穂川さんですか?」


ステージに夢中になっていたら、後ろから控えめの声で話しかけられたから振り返るとFranPlaZmaだ。


「あ、FranPlaZmaの降川さんですよね。私BlueStaR L!neЯの穂川 煌夏です。あの初めまして。」


FranPlaZmaの降川さんはキーボード&ボーカルなんだ。静寂の中に音の神秘を感じるような少し複雑なサウンドが癖になるバンドだ。


「うん、初めまして。僕、降川 清之と言います。BlueStaR L!neЯ最近話題になっているよね。この前の動画見たんだ、とても良くて人気の理由も納得した。これからも頑張ってね!」


今日は嬉しいことばかりで、次のライブは成功の予感がする。降川さんの方がいろんな意味で上なのに、この謙虚の姿勢……私も見習わなければ。


「はい、ありがとうございます。」


「穂川さん、随分と大人びて見えるね。何歳なんだい?」


「高一なので、16歳です。」


「高一かー!いいなー青春だな!」


「万里くん、さっきまでライブしてたのに元気だね」


「清さん、俺はまだまだ暴れ足りないぜ〜!」


「勘弁してくれ」


降川さんそうは言うものの、慧に似ていてる気がするな。静かに燃えているタイプというか。瓏さんは奏響タイプかも、情熱的でパワフルというか。


「もし良ければ、来週BlueStaR L!neЯのライブあるので見に来てください。来月にはMARIN RUNLYとの対バンもやります。」


「MARIN RUNLYかー!あそこもアマチュアの中で今かなり勢いあるからな!」


「BlueStaR L!neЯといい勝負じゃないかな?ちょうどどっちも予定空いているから両日ともぜひ行かせてもらうよ。」


「俺も!Ronder Hereの皆と見に行く!」


こうして熱いバイトライフは終わり、もう季節的には涼しいけど、熱い音楽はまだ冷めない。私は次の日は暇さえあればずっとギターを練習した。夜も寝る時間まで、そして今日も昼休み時間はギターを持って屋上だ。


ーーージャカジャカジャカジャカ


私が屋上行く姿を見ると必ず奏響、慧、優が観客しに来るのは何故なんだろうか?しかも誰にも言わずに来るのに。


「なんで観に来るの?昼休みなのに友達と話してたりしなくていいの?」


私は観られてもいいけど、その人のそれぞれの時間があるし。


「うん!観てるの楽しいんだ、僕!」


「なんか気になるんだよな。」


「あはは!なんとなくなんだけどな!」


次の日も次の日も、私が行く度に後ろから屋上のドアが開いて、私の目の前に来る3人。


「きぃちゃん、いつに増して気合い入ってるね?」


「確かにここ最近ずっとギター触ってるかもな。」


「穂川さん!なんかいい事あったの?」


「まーね。」


今だけはこの気持ちを独占したくて、もう少し秘密にしてていいかな。


……To be continued

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る