時計台に住む天女様

長月瓦礫

時計台に住む天女様


そう、アレは私が天女をやっていたときのことです。

じゃあ、今は違うのかって? 


天女は現場の士気が上がればいいなって思ってやったことなので。

実際、私の姿を見たと結構噂になっていたらしいですからね。

まあ、こういった怪談話は別にあってもいいんじゃないですか? 

探せばどこもあると思いますよ、きっと。


私は計画段階から時計台を観察していたんですね。

もちろん、時計台予定地からです。空の上から見てたんですよ。

天女らしく、観察してたんです。


構想から大体、3年はかかりましたかねえ。

ここから工事が始まって3年は経ち、無事に時計台が完成しました。

まあ、私がいるのは予想外だったんでしょうけど……。


今も多くの人に使われていて、嬉しいもんですね。

それなりに目立つので、よく待ち合わせなんかをしている人が多いですね。

いやあ、遅刻の言い訳をする人間ってなんであんなにおもしろいんでしょうね。

どうにかして言いくるめようとして余計に怒らせてんですから。全然飽きませんよ。


さて、この時計台って他にも裏話があるんです。

なんせ私は天女だったので、人間のやることなすこと全部見ていたんです。


というか、時計台ができる前から私はいたんですよ。

知らなかったでしょ? しかし、見ていたんです。


ここって不良のたまり場になっていて、いろんな方から苦情が来てたんですね。

そりゃあもう、毎晩爆音で音楽流すわ毎日喧嘩が起きるわで、治安が悪いことこの上なかったんです。


時計台を含めた再開発事業って元々、彼らを追い出すための計画の一つだったんですよ。知ってました? おかげで、非常に静かになったんです。


不良の姿も見なくなって、人々は安心して過ごしています。


その追い出された彼らはどこに行ったのか。気になりませんか?

別の場所に行ったのか、あるいは更生して真面目にやっているのか。


いずれにせよ、徐々に姿を消していったんです。

いくら連絡しても繋がらず、行方が分からない。

彼らを探すために、アナタはここに来たんでしょう。




おや、もうこんな時間ですか。

時計台の時報ですが、なかなかいい音でしょう。


これね、ここにたむろしていた不良たちの声です。

私は話を聞かせているんですけど、みんな途中で寝やがるんですね。

長話に耐えられないんでしょうね。


それで、起きたところを時計台が食べるんですよ。

何が起きたか分からない、そんな声が時報になってるんですね。


私がいるっていう噂を聞いて、のこのこやってくるあたり、マジでガキだなっていつも思うんです。本当に人間って変わんねえなって、嫌になっちゃいますね。


大体、そんな感じです。

めずらしく私の話を聞いてくれたのに申し訳ないです。


けど、アナタのトモダチはここにいますから。

すぐに会えると思いますよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

時計台に住む天女様 長月瓦礫 @debrisbottle00

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ