第32話 悟った答え

 僕はいつものように身支度を済ませながら学校へ向かう。何も変わらない毎日である。

 僕は夢のことを考えていた。

 あのフランス人の少女、僕は勝手な解釈だが、アレが本当のジェシーだったのではないのだろうか。つまり、あのメンヘラのような少女が人形に乗り移り、人形が真奈美に乗り移ったのだ。

 ということは、真奈美はずっとあの人形を持っているということなのか?

 事実は分からない。しかし、真奈美の中にはあの人形が常にいたはずだ。確か、ジェシーは遊び相手を探していたはずだ。綾香が自殺するまでは誰かターゲットを探していたのかもしれない。

 いや、その時には綾香と遊んでいたのかもしれない。何故なら本物のジェシーと綾香は性格がどことなく似ている。内気で、非現実な妄想に浸る部分だ。

 しかし、綾香が死んでしまい、その魂が再び真奈美に宿り、その真奈美が恨む先――隈埜小秋に目を向けられた。

 呪いはきっと伝わってしまったのだろう。しかし、小学生の隈埜はそれを上手いことすり抜けてしまい、諸刃の剣と化してしまって、真奈美に呪いが降りかかってしまったというのが正解か。

 実際彼女は病院で植物状態になっている。

 ということは、ジェシーが次に狙いを定めたのは隈埜小秋だろう。彼女はジェシーとは性格が違うが、異性と関わって自分の魅力を高めたいという欲がある。その手助けをし、いつしか路頭に迷う隈埜の弱っている心を、コントロールしたかったのかもしれない。

 しかし、彼女は完全に身体を奪えなかった。そうだ、昨日金村の父親から呪いを解かれたのだ。

 隈埜は鹿島君と真剣に話をして、今後は改正するはずであるし、欲深い性格も変わってしまうのだろう。

 そこで僕に話が来たのだろう。

 僕は――その答えに迷っている。しかし、元はというと内気だった僕を変えてくれたのは次郎だ。彼には感謝している。

 それに僕の人生がやっと華を開く時に、隈埜という魅力的な女性に心を奪われてしまったのだ。

 あの雨の日の、キス間近の抱擁と交わした時に、人生を狂わせてしまった。

 しかし、その後に次郎たちの協力の元、僕は今こうやって学校に通学している。

 僕は教室を開ける。ある人物を探した。その人物は席に座り楽しくお喋りをしている。

 ――ただ、一つだけ引っ掛かってしまうところはある。それは、僕はこれから隈埜を避けて通学しなければいけないということだ。

 鹿島君と付き合っているのは事実だろうし、僕の願望は叶えることはない。

 そう、その答えは一つでしかないことを僕は朝から考えていたのだ。

 僕は隈埜小秋の近くまで来ると、彼女は会話を止めて、一瞬僕を見て驚いた。

 僕はポケットから果物ナイフを取り出すと、彼女の胸に向けて刺した。

 全てがスローモーションのようになっていた。熊埜の苦しむ顔、誰かの悲鳴、佑ちゃんと言う友達の声――それを遮ってまで、僕はこの至福の時間をきっと笑顔で行動しているはずだ。

 何度も……。何度も……。刺して全てを消去させてやる。

 そう、何度も……。


 一方、病院では植物状態だった國繁真奈美が、急に息を引き取り、看護師たちが、医師を呼んでいる。

 ジェシーは新たな友達を見つけたのだ。

 そう、それは、長永祐一。

 ――僕だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたへのプレゼント 猫飼つよし @tora0328TORA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画