第24話 悪魔のささやき

 太陽が照りつける屋上に上がると、そこには後ろ姿の一人の女子高生が手すりから一階の外を眺めていた。

 僕はすぐに誰だか分かった。隈埜小秋である。相変わらず校則違反のミニスカートで登場だ。

 彼女は屋上の階段を上がる音を聞いていたようで、僕が顔を表すと、こちら側に振り返った。

「待ってたよ」

 彼女はあのアイドルのライブのように、満面の笑みで僕を見た。

「こないだの付けていたことはゴメン。……何か話があるということで聞いたんだけど」

 僕は喋ると分かったが、かなり緊張していた。足がガクガクと震えている。怒られるのではないかと不安だった。

 彼女は僕に近づいていく。僕は歯を食いしばって唾を飲み込んだ。

「そんなに緊張しないで、あたしはあなたの味方だよ」

 そう彼女が両手で僕の肩を抱きしめる。これは前の――僕が完全にマインドを彼女に持って行かれたあの出来事と同じではないのか。

 完全に身体を密着している。彼女の柔らかい胸が確認できる。僕の緊張は興奮に変わっていく。

「やっと二人っきりになれたね」

 彼女は僕を見ながら笑う。どういうことだ、一体何をしたいんだ。

「何で、他の人の生徒はいないんだろう」

 僕は周りを見渡した。こんなに晴天なのに関わらず、屋上には誰にもいない。いつもなら悪ガキの生徒は絶対にいるはずだ。

「ふふふ、あたしが追い出しちゃった」

 そんな甘い声で笑いながら僕を見る、隈埜小秋。

 彼女は僕の顎に手を掛けて、口づけをしようとする。あの時と同じだ。

 僕はどうしたらいいのか分からなかった。このまままた彼女に振り回されるのもかまわないと感じた時に、ふと次郎の顔が浮かんだ。

 ――いや、ダメだ。もう迷惑を掛けることは行けない!

 僕は彼女を両手で力強く離した。

「ダメだ。悪いけど、俺はもう隈埜さんとはそういう関係になりたくはない」

 それだけを告げて、僕は屋上から駆け足で下りていった。

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