第13話 楓の最期

身体は動かない。

目も開かない。

私はどうなったの?

死ぬの?



もう死んでもいい…。

冬馬さんと結ばれないのなら…。

私は死を待つだけだ。




「春!春!春!!」


冬馬さんの声だった。

何故か私のことを春と呼んでいた。



どうやら私は春になったらしい。



冬馬さんは毎日会いに来てくれた。

たくさん話しかけてくれた。

色んな話を聴かせてくれた。


別れた彼女のマユカさんの話は

聴くのが辛かったな。

でも毎日声が聴けて嬉しかったよ。




春になった私は近いうちに死ぬらしい。

なんとなくそんな気がする。



そんな時、春が病室に来た。

春は私になって暮らしているようだ。

それでいいよ。

春も作間も私の大事な人だから。

幸せになって。



何故かこんなに穏やかな気持ち。

死ぬ前だから、神様のような心に

なったのかもしれない。



私も本当は幸せになりたかった。

冬馬さんと一緒に…。

でも無理だったね…。


でも…。


もし生まれ変わることができたら…。


冬馬さんの…。


冬馬さんの側に………。





私は完全に途切れた。









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