第4話 リアル顔とバズ

 翌朝。


 重い頭を持ち上げながらおもむろにスマホを手に取る。


 昨夜、ペチペチPって人が色んな表情をしてほしいって言うから泣き顔・怒り顔・無表情とかやってたから、妙に顔面が痛い。


 これって顔の筋肉痛だ。


 頬が張ってるのがわかる。


 きっと今の私の顔って酷くブサイクなんだろうな。


 寝起きから自虐ムーブをかますなんて最高の朝。


 素敵なモーニングになりそう。ありがとう。


 そんなヘコんだ気分でいながら目の焦点があってくると、SNSアプリの通知ドットに目が行った。


「……ウソ」


 不意に溢れた言葉。


 アプリをタップし通知を確認すると、その殆どがフォロー通知であった。


 パッと見ただけでも百件以上来てる。


 でもそれだけじゃない。


 リプとかイイねも凄い数。


 事態を把握できずタイムラインを開くと、画面いっぱいに私の顔が貼られていた。


 そこに並ぶ文字――


 課金ガチャ爆死。


 テスト返却時、赤点だった時。


 推しのライブ落選したとき。


 まるで【写真で一言】みたいな感じで、どこまでスクロールしても私の顔が貼られている。


 胸の奥がズキンと痛むのに指は止まらなかった。


 一生流れて来る私の泣き顔。


 バカにされている感じの画像もあった。


 誰かに笑われて、でも確かに“見られている”


 その感覚が、痛みと共に胸を満たしていく。


「は、ははっ」


 中には乾いた笑いが出るくらいの画像もある。


 改めて見ると私の泣き顔って酷いな。


 いっぱいに口を開いて、目をギューッと閉じて、胸の前で両手をグーにして。


 確かに汎用性高そう。


 これがバズるってやつなのね。


 特徴的な画像が並ぶなか、例のペチペチPを見つける。


 彼? のアカウントをタップし投稿を確認すると、ここも私で溢れていた。


 なんという高揚感。


 インターネットの私は無限増殖している。


 気になったのは【フリー環境音】って動画。


 試しに再生してやろう。


 ……これって私のPCから出るファンの音かな?


 あとは換気扇の音。


 地味でも私の部屋がしっかり再現されていた。


 たまに聞こえるお母さんの声。


 なんかリアルすぎて逆に気になる。作業用には向かないねこれ。


 でも反響すごい。


 さすが切り抜き職人。


 殆どの投稿がバズっていた。


「全部……私。ひぐゅ……うっ……くっだらね~。くっだらねーけど……面白い……。泣けるくらいおもしろい……」


 端から見ればネタにされているだけ。


 見方によってネットいじめって言われるかも。


 でも悲しくなかった嬉しかった。


 だってみんなが見てくれてるんだもん。


 それだけでこの気持ちが昇華される。


 素材でも私が見られるなら。


 毎日素材提供してやるッ……!!





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限界VTuberさんは全てをさらけ出し、切り抜き・MAD素材自由化宣言をする。 ろっし @rossi64

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